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【No.014】

教育テレビで

2004.10.31のニュースで配信した『NHK教育で「演劇の授業」放映』の続報が、5月5日の19時からNHK教育テレビで放送になりましたね。

 参考
 2004.10.31■NHK教育で「演劇の授業」放映

この番組は、杉並区のある小学校が「総合学習の時間」に「演劇」をやってみたというもので、劇作家協会の協力を得て、本格的な演劇を小学六年生に学ばせるというもの。演劇で何を学ぶのかというと、コミュニケーションの手段としての「表現」でした。

番組では、前回放送の渡辺えり子さんや鴻上さん、谷川俊太郎さんの授業をダイジェストで紹介したあと、3月の公演に向けて始まった青井陽治さんの連続授業を追っていた。すばらしかった。

そこで紹介された「演劇」は、セリフを覚えて指示通りに再現する、というのとは全く別の「演劇」。普通の劇団が稽古場でやっていることなわけだけど、子供たちにとっても先生にとっても、全く得体の知れない世界なわけで・・・。みんなの不安ととまどいが見て取れて、楽しい。

普通の劇団では、公演前は公演で用いる台本をもとに、セリフを入れていきながら動きを決めていく稽古をします。ですが、公演前でなければ、演劇の基本的な稽古を行うわけです。それはまさに「表現」の稽古なわけで、この小学校で行われた授業とほとんど同じものです。ですが、そもそも表現の苦手な人は「演劇に向かない」と切り捨てられたりするわけですけど、「授業」となるとそこをすくっていく作業となるわけです。また、「表現が苦手」というのと「表現の才能がない」のは別問題ですので、稽古しているうちに「才能が開花」することはままあることだったりします。子供たちもまた、驚くべき進化を遂げていきました。と同時に、先生たちにとっても驚異的な発見となっていきました。

最後の授業は、学校全体での発表会。他の学年が既存の「演劇」、すなわち「台本を消化する演劇」を行い、「上手だなあ」という感想を得ているのに対し、この6年生の発表は「表現」そのものを発表するものであり、見ている親や先生たちにとまどいを与えていました。しかしながら、自分のコトバで与えられたテーマに即して話す、ということが「できる」ということの素晴らしさを理解している人にとっては、いかにすごいことをやっているかがしっかり届いていました。

近年、大人が抱える問題の多くが「ディスコミュニケーション」によると理解している人にとっては、この試みのすごさが理解できると思います。それが学校の授業で行えるということのすごさ。確かに教える人がプロでなければ不可能、という問題はありますが、その重要性だけでも理解できれば幸いだと思いました。

それはそうと、今はもう、与えられたセリフを上手に話すことが演劇ではない、ということを見事に証明していた。そして、先生たちも、もっと今の演劇を学んで欲しいとも思ったよ。

週刊FSTAGE編集部
神保正則
2005.5.7


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