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【No.022】

日本全国一万劇団計画

6.演劇界の「新しい現実」

単独の公演で「利益が出る」(「黒字になる」という意味ではない)ものが可能となったということ以外にも、近年起きているさまざまな現象がある。先日、ニュースで話題とした「指定管理者制度の導入」もそうだし、「小泉文化行政の大きな影響」もそうだ。文化大好きの小泉さんがいなくなったとき、現在の文化優遇政策は続くのだろうか・・・。また、「俳優養成所の隆盛」というものもある。既存の専門学校が俳優養成コースを作り、年間150人ぐらいを募集し、100万〜150万ぐらいのお金を集めている。けっこう人気だという・・・。

これらの現象が演劇界を支える小劇場演劇に与える影響は小さくない。これ以外にも、「新国立劇場とNNTドラマスタジオの創設」や「インターネットの普及で起きたあれこれ」も挙げられるだろう。期待はずれも含めて。

総括すれば、2000年以降、演劇を取り巻く環境は激変している、ということ。にもかかわらず、小劇場のトップランナーは90年代に登場した「ナイロンや大人計画や新感線」であり、野田秀樹や蜷川幸雄や三谷幸喜が活躍しまくっているのである。それが悪いということではない。しかし、環境の変化が、新しい芽を伸ばす方向には役立っていないとしか思えない。新しい環境は、個々の劇団の頑張りではどうにもならないほと、成長につながらない「障害」となっているような・・・。「注目劇団」は次々と登場しているが、期待されたほどには伸びてこないのはなぜなのだろうか。(「伸びる」=「お客が入る」)がプレッシャーとなり、方向性を見誤ってしまう、ということなのだろうか。確かに、いくつかの事例がそれを証明しているように見えるのだが。

時代とタイトな演劇を行い、世の中を意識した芝居作りをしている劇団にとって、今の演劇環境は快適なものではない。時代の風潮に合わせ、エンタメ志向でわかりやすく、誰もが楽しめる芝居作りで動員を目指す劇団にとっては、頑張りがいのある環境だ。しかし、そういった劇団の中からは、演劇界を揺るがすようなインパクトのある劇団は登場しがたいだろう。絶対に無理、というわけではない。難しいのだ。エンタメ志向の劇団の場合、熱い情熱を持ってインパクトのある芝居を作ろうとしても、観客や役者の求める「現実」の前では抵抗しがたい。それほど、「お客さんが楽しいと言ってる」という事実の前では、誰も勝てないのである。それと戦っている人もいるけど、それはほんとうに厳しいものなんだよねえ・・・。

ということを踏まえて、二つの「我々にできること」を考えていきたい。

二つとは、長期的なものと短期的なものである。長期的には「日本全国一万劇団計画」であり、短期的には「評価と宣伝の一体化」である。

「日本全国一万劇団計画」(やっと登場したよ、この連載のタイトルが)とは、現在、国内には3000ぐらいある劇団を1万ぐらいまで増やそう、というもの。次回から、詳細を述べる。それで何が起きるのか、そのために何が必要なのか、などなど。計画の具体的な詳細を述べるものではなく、その方法などを考えるのがこの連載の目的でもある。

短期的な「評価と宣伝の一体化」とは、いくつかの指標となっていた演劇祭がなくなったことを踏まえ、新しい評価基準の創設を目指すものだが、それが単なる「賞」で終わるのでは意味がないと考えている。目的は「インパクトのある劇団の成長」を目指すものであり、「宣伝」を含めた「制作活動」に関わるものでなければならないと考える。といっても、これは表立って公開するものではないようにも思うのでこちらでは述べない。多分に戦略的な題材である。専門的でもある。このサイトのコンセプトから逸脱している。

ということで、ようやく「日本全国一万劇団計画」の始まりである。

週刊StagePower編集部
神保正則
2006.6.3


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