週刊StagePowerTopPage
日刊StagePower

乾坤一滴
NYの日本人俳優
西山水木の使い方

野平総研!!
テレビ文芸時評

レコメンの殿堂
お気楽鑑賞記
目撃者
TheStageTribune
特集:さいたまGT
特集:小劇場史
週刊SP企画室

NEWSバックナンバー
過去の連載・記事
取材のお願い
Onlineインタビュー
このサイトは?
KUDAN Project稽古場取材
2005年8月公演
「百人芝居◎真夜中の弥次さん喜多さん」
@愛知県勤労会館(名古屋市)

そんなわけで、久々の稽古場取材報告です。8月に約170人が出演して公演する「百人芝居◎真夜中の弥次さん喜多さん」です。

宮藤官九郎監督の映画でも知られた「真夜中の弥次さん喜多さん」はしりあがり寿の漫画が原作。KUDAN Projectでは2002年に二人芝居として東京・名古屋で上演し好評を得た。翌年には中国3都市(北京・ハルピン・重慶)でも上演。少年王者舘の天野天街が脚本・演出で、てんぷくプロの小熊ヒデジとtsumazuki no ishiの寺十吾が出演した傑作舞台だ。

その作品を今度は100人出演で行うという! ホームページを見ると、西田シャトナーも関わりだしているし170人超えてるし、なんかもう大変なことになっている。ということで、愛知在住で、@ニフティ・シアターフォーラムでの古くからの知人の兼松さんにインタビューをお願いした。(じんぼ)


劇団Beansの第17回公演の稽古も佳境に入ったある日のこと、jimboという差出人のメールがやって来た。何かと思いつつ開いてみたら、そこには『取材に行って来なさい』との内容が。今まで仕事柄取材されることはあってもすることはなかった。こんな機会はそうそうないので、一度やって見ようかと思い、受けることにした。



アポを取って、時間より少し早くこの日の稽古場である汐路中学校に赴いた。後から聞いた話だが、この中学校うちの嫁さんも転校生として数ヶ月登校していた。今日の取材先がたまたまここだったことが、何か不思議な縁を感じるのだった。格闘場入り口までやって来て、しばらくお待ちくださいとのことだった。

『兼松さんお見えですか?』の声。2階の窓から金髪の男の人の顔が覗き出していた。見上げる俺。まるでロミオとジュリエット状態。


実は金髪の人をみると妙に緊張してしまう自分がいるのだった。その緊張状態そのままに、インタビューは始まった。

取材日時 2005年7月16日(土)18時〜19時
取材場所 名古屋市瑞穂区汐路中学校格闘場
取材相手 くだんプロジェクト 小熊さん





兼松「どうして『100人』なんでしょうか?」

小熊「元々二人芝居でやっていたんですが・・・ご覧になりましたか?」

兼松「残念ながら見ていないんですが」

小熊「二人芝居の初演が2002年にあったんですけども、東京と名古屋でやったんですが、その初演を東京と名古屋でやった後に、違った形で弥次喜多がやれたらなという話を、天野天街と話を、飲み屋でちょっとしたんです。で、原作のしりあがりさんも弥次喜多をやる時に宿をいろいろ増えていくものは面白いものだから、舞台は、舞台化は是非どうぞやってくださいって言われたんで、また違った形での舞台版弥次喜多が出来るって言う話しはしてたんですが。二人って言う単位でその時は作ったものですから、今度はもっと大掛かりな野外とか、そういったことが出来たら面白いねって言う話になって、それこそ100人くらい出したいよねって話しになって、でまあそんな酒の席での話みたいなものが、切れずに残ってそのまま実現してしまったということで。」

兼松「それは打ち上げの席とかですか?」

小熊「打ち上げではなかったですね。名古屋公演やって東京公演やって、で、全部終わって名古屋に帰って来てから。」

兼松「今回場所が勤労会館ですが、小屋としては結構大きいですよね。」

小熊「ええ。」

兼松「100人が先にあって、今の小屋なのか、小屋があって今の100人なったんですか?」

小熊「100人って言うのが先にあってからですね。それで小屋を探しはじめて。ほんとはもっと大きい小屋でやりたかったんですけど、当然小屋が大きくなればキャパが大きくなりますから、そんなにお客さんは入れられないんで・・・で、勤労会館に。ほんとは御園座でやりたかったんですけど、高いのであきらめました(笑)」

兼松「けっこうするもんですか?」

小熊「100万、200万しますね。うちにはそんなお金はないんで。」

兼松「確かに公共の方が安いですよね。」

兼松「今日の稽古は何人かは分かりませんが、それでも結構多いと思うんですが、稽古場に一同が会したとき、一人一人名前と顔を覚えるの大変だと思うんですが?」

小熊「稽古をやる時は名前を貼るように(布ガムに名前が貼ってあるのを見せながら)。まあ、だんだん名前は覚えていきますけど、やっぱり100人単位の名前と顔をいっぺんに覚えるのはなかなか難しいものがあります。」

兼松「実際は何人くらいが」

小熊「172人です。」

兼松「役者さんだけで?」

小熊「ええ」

兼松「ホームページで小道具班とかいろんな役割を募集してましたが、そちらのほうは?」

小熊「反応はありましたね。映像とか、事務局やってみたいとか、反応はありました。それなりの規模になると、衣装でも一人1着でも170着いるわけで、小道具一人一個持ったとしても170個。僕の手が足らないんですね。もちろん参加していただいている方には衣装の手伝いとか、小道具の手伝いとか、それなりのスタッフワークをしてもらっているんですけど、やっぱり出演しながらだと限界があるんですよ。スタッフだけで参加してくれる人・・・・実際事務局っていうところがあって、制作面とか運営とかやって、僕は今助かるんですが、こちらは出来た当時からこえをかけて、出演者程多くはないですが、ボランティアスタッフとしてやってたんですよ。その時に集まって来たメンバーが働いてるんですね。」

兼松「そちらの方でだいたい何人くらい?」

小熊「ボランティアスタッフは10人くらい。」

兼松「それプラスそうじゃないスタッフ。」

小熊「そうじゃないスタッフは10人くらい。映像でもボランティアスタッフ5、6人入ってるし、舞台セットでも3、4人。知らないうちに、本当は100人で始めたのが172人になって、スタッフもどんどん増えていって、知らないところで勝手に企画が増殖していってる(笑)全員集めると今250人くらいいますよ。」

兼松「チラシに出演者募集のおしらせが。オーディションを行ったんですか?」

小熊「オーディションっていうか、面接です。全員の方とオーディションというのはあまり考えてなかったです。面接してお話を伺って、という形です。」

兼松「どのくらい集まったんですか?」

小熊「応募者は200弱ですね。190数人。だからほとんど採用です。断る理由がなかったんですよ。演出の天野天街も、別に経験とかは関係ないって言う姿勢で、人が多ければ多い程いいと。だから、ほぼみなさん採用でした。さっきの190ってのはあれですよ、全体でですから、今回一般公募で参加したのが110人なんですよ。だから実際に面接をやったのは120人か130人。」


兼松「映像表現についてうかがいます。芝居中にどのように映像を使っているんですか?」

小熊「芝居と映像はものすごく絡んでいる。スクリーンは使わず、舞台にそのまま映像を出す。元々天野天街は映像作家でもありますから、あの、特撮映画でメルボルンかなんかでグランプリ取って来たりして、、、そういうところがあるものですから、映像に対する思い入れは強いと思うんですよね。実際に映像と生の演劇を一緒にやる時に、それが有機的に結合していないと、やる意味がないと思ってるんですよ。だから、映像があって演劇があって映像があって演劇があって、というやり方はしないです。こういう映像の使い方をしているところは、たぶんあんまりないじゃないかなっていうくらいに、普通の音響とか照明みたいにそういったスタッフワークと同じレベルで。」

兼松「映像が絡んでくると尺も決まってくるみたいな?」

小熊「尺が決まるということはないんですけども、やっぱり役者はそれに会わせた動きはいるんですけども、きっかけが厳しいですね。きっかけはかなりシビアです。少年王者館はご覧になったことは?」

兼松「何年か前に七ツ(七ツ寺共同スタジオ)で北村想さんと天野天街さんが一緒にやったのは見たことあります。最後のさびしい猫。冒頭でプロジェクタでノイズを出したシーンは印象的でした。」

小熊「同ポジってよく呼んでるんですけど、舞台セット全部たてて、その舞台で実際に役者が動いている様子を映像で撮るんです。それを本番中に投影するんです。そうすると、舞台セットはそのままですから、人がいないところに人が動いているようにもみえるし、同じ人間がいるようにも見えるという手法を使います。きっと最初見ると驚きますよ。映像スタッフの浜島と言うのがいるんですけど、いろんなことを考えて。かなり映像と演劇が解け合ってると言うか。」

兼松「天野さんの『必殺するめ固め』撮影の予定は?」

小熊「まだ撮ってないです。脚本の段階です。来年撮影予定です。」

兼松「映画の弥次喜多はご覧に?」

小熊「見ました。」

兼松「感想は?」

小熊「感じ原作ですから同じようなシーンが出てくるんですね。僕は喜多八の役をやってるんですけど、妙な気分になりますね。(もちろん)面白かったですよ。」

兼松「妙な気分を具体的に言うと」

小熊「自分がやってることを映像の中で別の人間がやってるわけですから、その辺がなんか妙な感じと言うか、なんというのかな、幽体離脱とでもいえばいいのかな。」

兼松「割と近いイメージがスクリーンの中にあったと?」

小熊「えっとね、喜多八の作り自体はずいぶん違いますね。だから、キャラクタの出来あがりとか、作品の出来上がり自体はだいぶ感触が違いますね。ただ同じようなシーンがあるので、なので、シーンが似たようなところ意外ではそんなに、そんな気分にもならなかったですけども。腕がつながってるシーンとかは舞台でもやってますから、妙な気になりますね。」

兼松「くだんプロジェクトさんの今後の予定は」

小熊「来年東南アジアツアーに二人芝居で出かけます。それでその後に新作の二人芝居をやります。弥次喜多が2本目で、これで3本目になるんですけども。3本は二人芝居で作ってみたいなと思ってたんで。」

兼松「二人芝居自体にこだわりが?」

小熊「(くだんプロジェクトは)元々僕が二人芝居をやりたくて作ったユニットなんです。なので、一本だけって言うつもりだったんですけど、いいメンバーに巡り会ったもんですから、別の作品もやってみたいと思うようになりまして、で、弥次喜多をやったんですよ。で、これで、もう一本やれるなぁって。で、もう一本やってみようと。」

兼松「最近気になる劇団や公演は?」

小熊「たくさん会ってあげられないです。」

兼松「気になるニュースや事件は?」

小熊「何がある?(と回りに聞く)」

周り「テロとか、ハイジャックとか」等の声

小熊「気になる事件は百人芝居!」





そんなわけで緊張のままにインタビューは終了。緊張しまくりの自分を察してか、丁寧に誠実に答えていただいて、ありがたいやら恐縮するやらで、答える側に助けられてしまった。それに金髪の人は怖くないなと思えた(笑)

その後稽古を拝見させてもらった。この日は天野さんが台本執筆でおやすみということで、主役級の役者さんたちが稽古を進めていった。制作の女の子が『今日は人数少ないんですけど・・・』と恐縮して話していたが、数えると70人弱。これだけで充分多いと思うのは自分だけだろうか・・・。


KUDAN Projectホームページ

百人芝居特設ページ

総合舞台情報サイトBACK STAGE
『百人芝居』記者会見情報掲載

KUDAN Project
PAFA[DraKooN FESTIVAL]参加公演
百人芝居◎真夜中の弥次さん喜多さん
@愛知県勤労会館(名古屋市)
2005年8月10日〜13日

撮影・文/
劇団Beans兼松孝行(愛知在住)


取材募集