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ぴあとイープラスの電子チケット

見えてきた、ぴあとイープラスの電子チケット戦略

文責:編集部 じんぼまさのり


チケット販売大手のぴあとイープラス(エンタテインメントプラス=e+)の電子チケットがいよいよ事業化される。これまで、いくら公演情報のネット化やオンライン決済を行ったとしても、結局チケット配送は郵便局や宅配便に頼るしかなく、「莫大な」配送料を徴収せざるを得なかったわけだが、ようやく「配送」のカットが実現する。2000円のチケットに500円の郵送料負担はひどすぎるもの。

同じ「電子チケット」と言っても、2社の戦略はまったく違う。イープラスでは「非接触型ICカード」の「Edy(エディー)」を使う。これは、ソニーが開発したもので、JRの定期券(Suica)などにも採用されている。自動改札などで、定期券入れからカードを出さずに、読み取り装置に「かざす」だけで情報の読み取りが行える優れもの。今後の普及が期待されているものだ。Edyカードはコンビニなどで1枚300円で入手できる。電子マネーとしては、すでに2002年末で約55万枚程度発行。

一方、ぴあが採用したのは「携帯電話」だ。爆発的な普及を示すネット接続携帯電話だが、予約したチケットデータをダウンロードし、イベント会場では赤外線通信機能で認証を行う仕組みである。携帯電話を持たない人向けには、ICカードも用意する。ICカードの場合、専用の読み取り・書き込み装置を購入する必要がある。会場でもICカードリーダーを用意する必要がある。やはり、利便性は携帯電話のほうが高い。

さて、いずれにしても、「チケット」という紙は途中で必要とせず、配送のカットが実現できるものだが、2社の間にはそれだけではない違いがある。そこには、イープラスとぴあのそもそもの事業形態の違いがベースとなっている。

イープラスは実店舗網を持たないオンライン専業企業だ。2001年度取扱売上は100億円を突破し、2002年度倍増を目指している。実店舗を持たないがため、チケットは配送による提供しかない。ぴあの場合、チケット販売の直営店や提携コンビニ網を持ち、店頭での発券が可能。利用者に手間をかけさせることになるが、高額配送費のカットは可能である。ぴあでは、この電子チケットの採用により、Webサイトでのチケット予約後、お金持ちさんの郵送依頼を除いても、携帯電話、ICカードおよび「コンビニのキヨスク端末などで発券する」という三種から選ぶことができる。(コンビニのキヨスク端末はいろいろ使えるわりに使われていないみたいで、数が減ってるらしいけど)

ちなみに、ぴあのチケット販売事業は2001年度に650億円。全国19,000店の販売網を持つ。(上場したけど、IRにインターネット販売の売上高が書いてないよー)

また、二社の大きな違いとして、ぴあでは会員間のチケット譲渡や分配が可能という点が挙げられる。これは重要。いっぺんに4人分4枚を購入して、自分以外の人に分配する、ということはFSTAGERには多いわけだが、予約チケットデータが手元にないイープラスの場合はそれができない。Edyカードには個人情報が登録されているだけであり、複数枚を予約した場合は(予約は可能)、公演会場で認証を受け、チケットをそこで複数枚発券してもらって初めて、分配が可能となる。

ぴあでは、ネット上にチケットの仮置き場を用意し、ネット上で譲渡や分配が可能だそうだ。ダウンロードするのは予約チケットの情報であり、データを手元に持つこととなる。まあ、チケットをなくすのと同様、データをうっかり消去してしまう可能性はあるわけだが、ある意味、この機能は絶対に必要と言えよう。

イープラスでは、Edyが電子マネーとして流通が可能な点を強調し、物販の決済にも利用したいとしている。確かに、電子マネーとしてEdyを購入した人には「電子チケットにも使える」ことは利便性の向上だろうが、電子チケットとして不十分な機能では、「物販にも使える」理由で電子チケットを導入する人は少ないだろう。すべてはEdyの普及次第とも言えるものである。イープラスでも携帯電話の利用を考慮したそうだが、「ユーザーがまだ少ない」という理由でやめたそうだ。しかし、Edyはもっと少ない・・・。

とはいえ、当然、イープラスでもいずれは譲渡や分配が可能なシステムを開発するだろう。オンライン専業のローコスト性を生かし、手数料などでぴあと格差を生めれば、差別化が図れる。現状のシステムはまだまだ未完成のものである。2002年末にはスタートを切ったイープラスの電子チケット事業であるが、今後の改良に期待したい。

一方で、ぴあの事業化は2003年秋を目指すという。赤外線通信を利用している人って多いのだろうか? ツタヤオンラインの人気サービス「ダウンロード割引チケット」のように、携帯電話に直接データを表示させ、場合によってはそれをバーコードリーダーなどで読み取ってもらえれば、ユーザーにとっては利便性が高まるだろう。なにかと「手数料」が発生するぴあだが、システムの利便性を上げると同時に、手数料を下げる、カットする、も実現していただきたい。

ぴあにしてもイープラスにしても、どうしても「チケット販売」で利益を得ようとしているようだが、本来は情報の収集・集積により、新たな付加価値を生み出すことで利益を得るべきと考える。紙で売っているうちは、購入者の情報もあいまいなままであったが、ネットの利用促進で、動きのあるデータの収集が可能となる。電子チケットの事業化によりも、その次にどんな手を打ってくるか、こそが重要なのである。曖昧模糊とした興行の実態に迫るような企画が生まれることを期待したい。

イープラス

チケットぴあ
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