2007年12月第3週

 1ヶ月ぶりの乾坤だ。この間、当然、いろいろなことがあり、落ち着いて書いている時間が取れなかった。何しろ、ちょこちょこっと書けるミクシィの日記とかと違って、この乾坤をまとめるのは半日、いや、写真やリンク等の作業も含めると、まる1日や2日がかりになる時もあるから。一応、仕事として考えているし。原稿料はないけど。だからってわけじゃないけど、忙しくて書けない時にはやむを得ず休載させてもらっちゃってるわけだ。しかも、ここ1ヶ月近く体調が悪く、先週の金曜の夜には高熱を出し、土曜日はぶっ倒れて、医者に行ったら、幸いインフルエンザではなかったけど、菌がお腹に入って、今もまだ完全に回復してはいない。とはいえ、どこかに書いてあったけど(柳美里だっけ)、「連載で2回以上休むのは連載とはいえない」そうだし。まぁ、この乾坤は連載じゃないってことで勘弁してもらって(大本の週刊Stage Powerの方は毎週水曜日更新だけど)、とにかく言い訳ばかりしてないで、書き進めよう。

 何があったかな、この1ヶ月。いろいろあったのに、段々と記憶も薄れていく。特に年を取ると。そうそう、久しぶりに旅をしたんだっけ。11月23日から福岡に3泊、大阪に1泊。福岡は、劇団Hole Brothersの公演『ヘルメット・オン・ザ・ビーチ』のアフタートークのゲストと代アニ・福岡校でのDCS[ドワンゴクリエイティブスクール]の説明会。その帰りに大阪に寄って、代アニ・大阪校での説明会。福岡は約半年ぶり、大阪は5年ぶり。Hole Brothersは、主宰の幸田君に『豚とオートバイ』に出てもらい、今年6月の「演出家のためのワークショップ」にも彼と劇団員が参加した関係で呼んでくれたのだ。ありがたいことだ。Hole Brothersの公演を生で観るのは初めてということもあり、アフタートークのゲストは25日のマチネ公演の後だったが、24日の夜にも観ておくことにした。1回目に観た時と2回目に観た時の印象がかなり違った。それはなぜだろうと考えた。

 本来、演劇というのは一期一会だから、1回観ただけで判断すべきなのだが、その時の体調や観る位置、あと、やはり生ものだから、その日の芝居の出来不出来によっても、印象が変わってくるのは仕方がない。1回目に観た時は私自身が寝不足の上に疲れていたというのもあったかもしれないが、なかなか芝居の世界に入り込めなかった。後方の上の方の客席から観ていたので、演出家的な観方をしていたというのもあるかもしれない。初めてHole Brothersの芝居を観るということもあり、緊張感もあったし、アフタートークをしなければということで、ちょっといじわるな観方をしていたのかもしれない。そういったことが重なって、変に客観視して観ていたために、この物語自体に引き込まれなかったのが原因だと思う。ところが、翌日、2回目に観た時には、予備知識があったということももちろんあるのだろうが、物語自体に引き込まれ、純粋な観客として楽しむことが出来た。前の方の、見下ろす場所ではない席で観たということもあるかもしれない。役者と同じ目線だったので、感情が伝わりやすかったのだろう。その上で、個々の役者の演技や、演出の細かいところを感じることが出来たのだ。

 前述したように、演劇は一期一会だから、こういう観方や感じ方はいけないのかもしれないが、その上でということで感想を述べるなら、とてもいい作品だったと思う。いや、実は、1回観ていいなと思った公演でも、後々印象に残らない公演というのも多々ある。この『ヘルメット〜』は、おそらく、1回観て、あまりいい印象を受けなかったとしても、後々気になる芝居だったろうし、2回観てよかったと思う。リピーター半額割引というのがあったらしく、私は千秋楽のアフタートークだったので、そこで「2回観ると全然印象が違いますよ」と話したのだが、時すでに遅しだった。客席の中にはやはり2回観た人がいて、私の話に大きく頷いてくれていたが。何度もいうが、演劇は基本的には一期一会ではあるが、リピーター割引とか2回3回券とかあってもいいと思った。もちろん、好きな芝居を何回も観に行くという人もいると思うが、それとは違う意味でね。Hole Brothersは、来春の第2回福岡演劇フェスティバル西鉄ホールでやることになったらしい。ぜひ観に行きたい。さらなる飛躍が楽しみだ。

 福岡では、到着した23日の夜も劇場に行き、公演は観なかったが、その日のアフタートークのゲストだったギンギラ太陽’sの大塚ムネト氏と、司会だった西鉄ホールの中村絵理子さんや幸田君らと飲みに行った。中村さんに会うのは1年半ぶりぐらい。東京にはよく来ているというので、ぜひ東京で飲もうという話をした。ギンギラも来年の1月に2回目の東京公演があるので、今度こそぜひ東京で飲もうと約束した。チケット代が6000円とちょっと高く、大塚氏もそれを気にしてはいたが(西鉄ホールだと3500円)。

 24日の昼間は、好天に恵まれ、どこかへ行きたくなったので、高速バスで小倉に行った。バスの旅も楽しい。九州道を通って、まずは小倉競馬場へ。開催はしていなかったが、モニター付きの指定席で、きれいな競馬場とその向こうに広がる山並を見ながら競馬を楽しんだ。ジャパンカップダートの日だったが、戦果はちょいマイナスで済んだ。福岡に住んでいた時の競馬友だちの春日先生も一緒だった。レースが終わり、春日先生と別れ、モノレールで小倉駅に行った。北九州芸術劇場のある小倉駅近辺を少し散策し、帰りは新幹線で博多まで戻って来た。わずか15分。ひと眠りしている暇もない速さ、近さだ。その後、駅前の、やはり福岡時代によく通った焼き鳥屋「太一」に寄り、おなじみだった店員さんたちと話をし、大好きな博多風焼き鳥を少し食べて劇場に向かった。夜の公演(この日のアフタートークのゲストは空間再生事業劇団GIGAの山田恵理香嬢の予定だったが菊澤将憲氏に代わり、彼とも久しぶりに会って話をした)を観た後、Hole Brothersのメンバーや、ゲスト出演の、『豚とオートバイ』に出てくれた都地みゆき嬢や、「演出家のためのワークショップ」に参加していたNAC福岡の宮坂美l嬢と演劇銭団Do-リンク場の川崎和哉君らと上川端商店街の「博多一番どり」に飲みに行き、いろいろ話をして酔いどれた。

 翌25日が私のアフータトーク。マチネ公演を観た後、前述したような感じで話を進め、終わってみんなと挨拶をし、移動したホテルに一度戻り(この日の夜だけ、私のお気に入りの屋上に展望露天風呂がある博多駅前の個室があるカプセルホテルに移った)、夜の7時から「ふとっぱら」の天神店で「福岡演劇のひろば」関係者の飲み会。総勢15名ほど。明石に転勤している薙野さんとも久しぶりに福岡で飲むことが出来た。朝日新聞の長友さんとも1年半ぶりに会った。相変わらず元気だ。ハンキンさんが水族館劇場主宰の桃山邑氏を連れて来て、私が小倉で水族館劇場を観た話や、なんと桃山氏が昔、螳螂を観た話まで出て盛り上がる。来春、北九州と東京でやる公演にハンキンさんが出る。楽しみだ。

 次の日は午後から代アニ・福岡校でのDCSの説明会。その前に昼飯を、かつて週に1回は通っていた「とんかつ大将」に食べに行く。もちろん、おばちゃんは覚えてくれていて、前に行った時に、おばちゃんに「おみやげは?」と冗談でいわれたので、今回は東京みやげの“ごまたまご”をちゃんと持っていったら、なんと定食代をタダにしてくれた。ありがとう、おばちゃん。しかし、ここの“ジャンボとんかつ”って誰が食べられるんだろ。ギャル曽根は挑戦したのかな。代アニでの説明会の後、新幹線で大阪に移動。大阪は5年ぶりで、新大阪駅に着くなり、さっそくエスカレーターの乗り方でとまどう。しかし、なにゆえ関西は右側に立って、関東や九州は左側に立つのだろう。北海道はどっちなんだっけ。

 梅田から地下鉄で懐かしい代アニ・大阪校のある南森町に移動し、やはり屋上に露天風呂、しかも天然温泉のあるホテルに荷物を置き、さっそく難波に向かう。いろいろ食べたいものはあるが、胃に入る量は限られているので、今回は串カツとどて焼きにした。西日本地区限定発売という焼酎“それから”をやりながら、しみじみと食す。ここで疑問。福岡の焼き鳥や関西の串カツには必ずキャベツがタダでついてくるのに(おかわりも出来るし)、なぜ東京の焼き鳥屋にはキャベツはないのか。いや、あるにはあるが、別に金は取られる。おいしく食べられるように、キャベツぐらいタダで出せや! その後、腹ごなしのために道頓堀界隈をブラブラ。フードテーマパークが出来たり、釣り堀があったり、えべっさんの楕円形観覧車が出来たり、戎橋もきれいになったりと、久しぶりのミナミは大きく変貌していた。その後、〆に金龍ラーメン。う〜ん、久しぶりで懐かしかったけど、味はいまいちだったな。福岡でうまいラーメン食ってきちゃったからな。

 翌日は、午後から代アニ・大阪校で説明会。その前に、やはり大阪校に行くとよく食べに行ってた近くの店で大好きな“けつね”。もちろん“きつねうどん”のこと。ちなみに“きつねそば”は“たぬき”。関東の天かすが入っている“たぬき”とは違う。ややこしい。“ぶっかけ”もおいしいが、関東にはない。大阪校で懐かしい先生方にも会い、学生たちへの説明会が終わった後、新幹線で東京へ。ホントは新横浜で降りたかったんだけど、新横浜に停まる列車ではなかった。その代わり、品川に停まった。実は新幹線が品川に停まるようになったことは知らず(2003年10月からだから福岡住まいで知らなかった)、家に帰って子供たちに馬鹿にされた。帰りはもちろん車内で駅弁と“それから”で一杯。それにしても、相変わらず検札があるのには驚いた。あんなの、改札を通った時の切符からの情報で何とでもなるはずなのに。九州の列車では、座席の前に、つまり前の席の背のところに切符を差しておくところがあって、そこに切符を差しておいて眠っても、駅員が勝手に検札してくれるんだけど。それと、自分が降りる時、倒していた背を元に戻してほしいもんだ。あれって、あのままだと、出る時結構きついんだよね。後ろの人に注意して倒すのと一緒に常識にしてほしい。

 う〜ん、11月23日から27日までの福岡と大阪のことだけでかなり書いてしまったな。というわけで、その後のことは主なことだけ簡潔に。

 11月28日の水曜日、去年までの職場、代アニの横浜校(といっても場所は去年とは変わったけど)に行き、12月12日(水)に相鉄本多劇場で行われる舞台発表会の通しを観る。照明を頼まれて、私が出来ないので代わりに、とりいちえにやってもらうことになり、紹介も兼ねて一緒に行ったのだ。まぁ、去年1年生の時に1年間教えた子たちだからね。去年の舞台発表は『ピカイア』をやったし。で、本番も当然観に行った。というか、実は本番前日の仕込みの日の夜も行く予定だったのだが、体調を崩していて行けず(そうか、この辺りからすでに悪かったんだな)、本番の日も打ち上げも遠慮して、観た後みんなに挨拶をしただけで帰って来てしまった。みんな確かに頑張ってたけど、ホントにプロを目指したいのなら、あれじゃダメよって感じ。演技のレベルの問題じゃなくて、客を楽しませる意識があったかどうかってことでね。アマチュアだったら自己満足でもいいけど。高校演劇は高校演劇でいいんだけど、プロを目指す人間が高校演劇をやっちゃダメってこと。ま、今週末、横浜校の忘年会に行く予定だから、みんなにゆっくり話してあげましょう。

 12月9日の日曜には、DCS初の学園祭があった。今年開校したんだから「初」なのは当たり前なんだけど、声優科の学生たちも各クラス1時間ずつのクラス企画といくつかの個人企画で発表を行った。寸劇や朗読、歌やサウンドドラマなど、なかなか盛りだくさんの内容で、最初に意図していたようものは達成出来たと思う。ただ、その準備のための諸々(日暮里や秋葉原やホームセンターに買い物に行ったり)で動き回っていて疲れ果て、原稿を書く気力もなかったってのが乾坤を更新出来なかった一番の原因なんだけどね。そういや、福岡にいた時も学院祭の時に倒れたよなぁ。学生たちのためにって、ついつい頑張っちゃうからなぁ。来年は、もし学園祭とかあったら、先に、しばらく休載という告知をしておこうっと。

 というわけで、他にもなんかいろいろあったような気がするけど、それはまた思い出したら。あ、芝居は観に行ってないけど、ようやく野田秀樹の『THE BEE』を観ることが出来た。日英バージョン、両方ね。凄い! 演劇だよ、演劇! これぞ、演劇! いろんなものが詰まってる。ヤワな演劇が馬鹿馬鹿しくなっちゃうよね。自分でもやらなきゃ、って思うし。で、とても比較出来るようなもんじゃないけど、今、来年の1月にやるDCS声優科の舞台発表会の稽古に入っている。本番は、年明けの1月24日(木)・25日(金)・27日(日)に西武新宿駅のすぐ近くにあるシアター・ミラクルで。間の26日(土)はボーカル科のライブなので公演はない。まぁ、詳しくはまた近くなったら教える。タイトルは『夜の青空〜blue sky in the night』。小松杏里作・演出作品を首都圏でやるのは『啼く月に思ふ』以来5年ぶりだな。ぜひ観に来てほしい。

 そういや、ウチの近くのキャンプ座間に米陸軍の第一軍団司令部が移ってきて、今日、その式典があり、近くではデモが行われていた。司令部がテロリストたちに狙われる危険があるかどうかというのは諸説紛紛だが、現実にミサイルが射ち込まれた事実があるわけだから心配だ。それより、キャンプ自体がなくなること、つまり、米軍の基地がなくなることが重要なんだけどね。まぁ、戦後60年経っても、結局、敗戦国の日本は、日米安保条約という名の下、アメリカに守られてる(=支配されてる)わけだから、仕方ないんだろうけど。もちろん、皮肉。

(2007.12.20)


前週