2006年7月第5週

 先週の乾坤は、遅れた上に、とりあえずの報告で終わってしまったので、まずは先々週の諸々の報告から。といっても、主なことはすべて週末と月曜日に集中していたのだが。

 福岡にいる時に、福岡の演劇関係の人たちや楽しいところを紹介してもらう上で大変お世話になり、最後には『豚とオートバイ』の制作までやってもらってしまった「福岡演劇のひろば」の主催者である薙野さん(現在は、兵庫県の明石市に住んでいる)が、23・24日に東京に来るということで、会って飲もう! ということになった。ついで、というか、『豚とオートバイ』の翻訳者の熊谷さんが懇意にしている(4月には一緒にソウルに行った)、青森の長谷川孝治氏の劇団弘前劇場の公演をスズナリで一緒に観ることにして、その後、下北沢で飲むことにした。

 23日の日曜日の昼間、久しぶりに下北沢に降り立った。こっちに帰って来てからは3回目だが、以前の2回は、夜の飲み会。考えたら、下北沢で芝居を観るのも久しぶりだ。いつ以来だろう? とにかく、今、『下北サンデーズ』で話題の、下北沢だ! 何を隠そう、なんて、別に隠す必要もないが、私は下北沢育ちだ。生まれこそ渋谷で、その後、文京区の千石というところ(昔は丸山町といった)に6歳までいて、小学校2年から世田谷区に引っ越した。それから下北周辺に住んでいる。小学校は代沢小学校、中学は富士中を卒業した(mixiの両校のコミュニティにも入っている。同世代はあまりいないが)。結局、結婚して子供が出来て神奈川に引っ越すまで、25年ほど下北にいたことになる。

 今も、小学校や中学校の同級生はたくさん住んでいるし、神奈川に引っ越してからもしょっちゅう、芝居を観に行ったり、飲みに行ったりはしていたが、下北の街は行く度に変わっている。それでも、2、3年前までは、いろいろ変わっていくなぁ、と、その変貌ぶりを微笑ましく眺めていたものだが、今回、久しぶりに下北沢に行ってショックだったことがある。それは、南口に出て、商店街の方ではなく、茶沢通りの方に左に降りて行った最初の十字路の角にある(そこを左に曲がってガードをくぐると本多劇場だ)八百屋の“八百銀”がなくなってしまったことだ! 何でも3月末で店を閉めたらしい。2ちゃんねるにも「八百銀の野菜が食えなくなった」と書いてあってびっくりしたが、ここは、シンちゃんという私の小学校の同級生の店で、御主人(シンちゃん)の写真が下北の店を紹介するサイトにも出ていた。いやぁ、本多やスズナリに行く時、いつも前を通ると声を掛けてたのになぁ。

 実は、ショックだったのはそれだけではなく、待ち合わせの時間の前に下北沢のあちこちを歩いたのだが、2、3年前に下北に行った時と、明らかに街の様子が変わっていたのだ。いや、前にも書いたが、行く度に変わっているのは確かなのだが、この前歩いた時は、まるで昔の下北の雰囲気がなくなったというか、もう、私の知っている下北沢の街じゃない、とはっきり思ったのだ! とにかく、南口商店街はもとより、あづま通りも一番街も、古くからある店がどんどんなくなっている上に、かつては住宅街だった、裏の細い路地にもいろんな店が出来ている。それもいたるところに! う〜ん、これが今の“シモキタ”なんだなぁ、とつくづく思ってしまったのだ。まぁ、『下北サンデーズ』は、“シモキタ”ではなく“下北”を残してくれているが……いや、実は、これにも異論、というか、いいたいことがある。あれは今現在が舞台のはずなのに、劇団の話にしても、取り上げる下北のエピソードや風景にしても、古いと思うのだ。あれじゃまるで80年代の小劇場だし、街の描き方だって、まるで70年代の『俺たちの旅』のようだ! そういう意味では“下北”でいいのだが、やはり旬の小劇場界と今の下北沢を描くなら、『シモキタ・サンデーズ』だろう! ていうか、今の小劇場界は、描けるものなんてないんだろうな、きっと。芝居にしたって強烈なインパクトのあるものはないし……。ま、『下北サンデーズ』は、ノスタルジックな思いに浸りながら、大笑いして(どのエピソードも、いささかオーバーではあるが、その通りだから!)、最後まで観続ける。もしかすると、DVDも買ってしまうかも! 上戸彩も、金八以来、久しぶりにいいと思ったし! ていうか、この上戸彩は、好きだ!

 さて、その下北のスズナリで観た弘前劇場(スズナリじゃなく、駅前劇場で弘前劇場だったら……フフッ……いや、失礼!)の公演『夏の匂い』は、なかなか楽しかった! いわゆる、“静かな演劇”の系譜に入るもので、実は私も嫌いじゃない。この乾坤でも何回か書いているかもしれないが、静かな演劇モドキは嫌いだけど、正統派は好きなのだ。実は、正統派の“静かな演劇”は、それほど静かじゃない(笑)。青年団の芝居にしても、この弘前劇場にしても。なんか、わざとらしく静かにやっているのが、静かな演劇モドキなのだ。それは嫌いだ。さらに、この弘前劇場は、青森弁が楽しい。私の友人に、中原智仁という役者がいて、彼は青森の五所川原出身なので、当然、青森弁を話せる。寺山修司も青森弁だ。まぁ、青森の中でも場所によって違いはあるらしいが、東京の人間からすると、みんな同じ青森弁に聞こえてしまう。彼に、寺山さんの『毛皮のマリー』を渋谷のジァンジァンでやった時(螳螂でも月光舎でもなく、プロデュース公演)、マドロス役をやってもらったのだが、青森弁の自衛官という設定にした。これがまさにハマリ役で、その後、月光舎の舞台に何回も出てもらい、やはり寺山さんの『書を捨てよ、町へ出よう』を、今はなき江ノ島の天文館でやった時にも、青森弁で演じてもらった。私は青森弁が好きなのだ(笑)。だから、弘前劇場の芝居も楽しかった。

 作品の内容に関しては、病院の病室が舞台なので、それぞれの人物の背景がもう少し見えると、より感情移入出来た気がするが、さらりと演じているので(決して新劇っぽくないので)、あれぐらいの描き方でいいのだろう。つまり、それぞれの背景の深い部分については、想像して下さい、というやつだ。日常の人間付き合いと同じ感覚。そういった意味で楽しかったし、好きは好きなのだが……久しぶりにスズナリで観た芝居としては、物足りなかったというのが、正直な感想だ。これは別に弘前劇場の芝居が悪いといっているのではない。私自身が、やはり本当は、衝撃的な舞台を求めているということなのだ! インパクトのある、それこそ、スゲェーッ! といわせてくれる舞台に出会いたいのだ! う〜ん、出会えるのは、いつのことだろう……何、自分で作れって? いや、もう、制作的なことから始めていかなくちゃいけないことを考えると、とても無理無理! 好きにやっていい、というスポンサーでもいれば別だけどね。

 だいぶ話が長くなったが、下北での話はまだ終わらない(この時以外の下北の話だったら、永遠に終わらないと思うが)。弘前劇場の芝居を観た後(公演の前には、熊谷さんに長谷川さんを紹介してもらい、少し話をした)、薙野さんと熊谷さんと、どこに行こうか、日曜日だから古里庵はやってないし、ということで、『下北サンデーズ』にも、およそ違うイメージで登場する眠眠亭ならぬa亭に行くことにした。あ、イメージは違うといったが、甲本ヒロトやバンドをやっている連中がa亭でアルバイトをしていたのは有名な話で、a亭も、下北でここを知らなきゃモグリといわれている超有名な店だ。a亭もねぇ、私が子供の頃に初めて行った時は、オデヲン座(三番館の映画館。今はフィットネスクラブになっている)の前の交番の横にあった、カウンターだけの小さな店で、今のところに建ってからも、もう随分経つのだろう、3人で2階の座敷に上がったが、結構古くなっている感じがした。飾られている芸能人のサインもかなり古い印象だ。そこで、定番メニューの餃子と棒鳥[バンジー]とジャンドーフをつまみに(あと、ピータンとレバニラ)、最初の一杯だけはビールで、後は紹興酒をグイグイ飲んだ。途中で、というか、お開きにしようかという頃に、4年前に、韓国現代戯曲ドラマリーディングで私が演出したチャン・ジンの『無駄骨』の翻訳者で、熊谷さんの友人でもある青木謙介氏が来たので、またそれから韓国の話で盛り上がって飲み出した。結局、薙野さんがその夜観に行くという、駅前劇場でやっていた代田’N(ダイタン)プラネッツの旗揚げ公演の開演時間直前まで、4人でa亭で飲んでいた。私は翌日学校なので、そこで別れて帰ったが、熊谷さんと青木さんは、その後、私も大昔からよく行っている、トラブルピーチ(1階のイート・ア・ピーチの方が、行っているのは古いが)に飲みに行ったという。ここも古くから有名な店だ。そういや、トラブルっぽいのは『下北サンデーズ』に出て来ないのかなぁ……あ、ここも“シモキタ”じゃなく、“下北”だな、確実に!

 というわけで、久々の下北の話は、『下北サンデーズ』の話や諸々含めて長〜くなってしまった。すまん! まぁ、下北沢はとにかくいい街で、2月には(今年は1月だった)天狗まつりがあるし、夏には阿波おどり(今年は8月19・20日。学院の体験入学があるので行けない)があるし、9月第1週の土日には北沢八幡の大祭もあるので、いろいろ行こうと思っている。またその時に、諸々報告しよう! 特に北沢八幡のお祭りは楽しみだ! さて、翌月曜日も薙野さんと会った。相鉄本多劇場で行われる、横浜の演劇人の集まり「劇サロ」が、7月はちょうど24日に開かれることになっていて、薙野さんを誘ったら、ぜひ来たいといってくれたのだ。福岡の演劇人の集まりとしては、「福岡演劇のひろば」のオフ会があり、乾坤でも度々報告したが、「劇サロ」のことは、福岡にいる時、よく薙野さんに話をしていて、興味を持ってくれ、今回、この日の夜、新宿から夜行バスで明石市に帰るのにもかかわらず、横浜まで来てくれたのだ。私もこっちに帰って来てから、5月に続いて2回目の参加になる。

 さらに、この日の「劇サロ」には、劇団世界劇場の主宰者で、2003年の利賀演出家コンクールで優秀演出家賞を取った小島邦彦氏(彼は新宿でシアターPOOという小さなシアターバーを持っていて、私は83年のオープン時から出入りしていた)、その小島氏が9月8・9日に横浜のランドマークホールで公演するベケットの『しあわせな日々』の制作を手伝っていて、実は20年以上前、螳螂がスズナリで上演した『フランシスコ白虎隊二万海里』に女子高生役で出演した(当時は現役の女子高生)、キリコ(旧姓は森脇だったと思う)も来てくれ、さらには、StagePowerの神保さんも参加と、私の知り合いだけでなかなかのメンバーになったのだが、当日、驚いたことに、60名近い参加者になり(これまでで最多の参加者数!)、大いに盛り上がった! もちろん、大西さんや一宮さんも参加していて、みんなを紹介し合い、交流の場もかなり広がった。まぁ、そこでは、なぜか蘭童セル(ご存知ですか? 昔、螳螂にも出たんですけど、彼女についての最近の情報があったら、ぜひ、メール等で教えて下さい!)の話や、横浜の新たな舞台芸術の創造拠点としての旧老松会館の運営の話や、もちろん各劇団のインフォメーションなどもあり、私も10時のお開きまで、あっちこっち歩き回りながら話をした。11時過ぎの新宿発の夜行バスに乗る薙野さんとは相鉄本多劇場の前で別れたが、私はこの日は2次会まで参加してしまった。小島さんは帰ったが、キリコはいた。そこでは、劇団studiosalt(スタジオソルト)の人たちとよく話をした。彼らは、8月23日から27日まで相鉄本多劇場で行われる、横濱リーディングコレクション『太宰治を読む!』に出るというので、観に(聴きに?)行こうと思う。この日は、実に久しぶりに(昔はしょっちゅうだったが)、相鉄の最終電車で帰った。

 というわけで、先々週の報告はここまで。

 さて、先週だが、金曜日で学院の1学期(?)の授業が終わり、学生たちは1ヶ月の夏休みに入った。もちろん、我々講師は、それまでの授業の整理や夏休み以降の授業の準備で出勤するし、何より、来年度の新入生確保のための体験入学やオープンキャンパスが目白押しになるので、夏休みとはいえ、結構忙しいのだ。そんな授業終了日、横浜校の先生方と久しぶりに野毛の三陽に行って餃子を食べた。要するに、授業の打ち上げだ。いやぁ、やっぱり、最高においしいねぇ、三陽の餃子は! バクダンやネギトリも! しかも、ビアガーデンと呼ばれている外の席で飲むのが最高なのだ! 店の前ではなく、ちょっと離れてところにもテーブルが置いてあり、そこは御用邸と呼ばれている。雨が降る日に、片手で傘を差しながら御用邸で餃子を食べた話は、以前したと思うが。ただ、三陽へ行くのは、次の日、仕事がない日に限る。だから金曜日が多いのだ。なんたって、スタミナ抜群のニンニクが、翌日まで、これでもかってほど、気持ちよく臭うのだから!

 一日おいた30日の日曜日には、スペシャル版の体験入学があったのだが、これが何と、横浜校の声優タレント科では、ここ何年かで一番最多という30名もの参加者があったのだ! 夏休みに入ってすぐということもあったのだろうが、福岡校にいた時は、それぐらいは毎度のことだった。だが、いつもは10名前後の少ない人数が(ここんところ、増えてはいるが)、急に増えると、大変なこともいろいろあった。体験アフレコも、いつもの倍の4チームにしたりしたもんだから、場をつなぐのに一苦労だった。まぁ、その分、参加者には楽しんでもらえたようなので、よかったが!

 そうそう、高校野球の神奈川大会の方は、予想通り、横浜高校が圧倒的な強さを見せてくれて優勝した! いよいよ松本君も甲子園出場だ! 小さい頃から次男たちも一緒にやっていた少年野球チームで、「甲子園に行くとしたらマツだろうな」といわれていたのが、ついに現実のものになったのだ! こんなにも早く夢を叶えてしまうなんて、すごい! ついこの間まで、次男たちと一緒にボーイズリーグで野球をやっていた中学生だったのに……とにかく、感動してしまった! きっと、3年後にはプロ野球に入っているだろう! どこかなぁ? その前に、甲子園だ! みんな自分の地元の高校を一番に応援するだろうが、ぜひ、春夏連覇もかかっている横浜高校を、そして、1年のレギュラーで頑張っている松本幸一郎君を、応援してほしい! 背番号も神奈川大会までは15番だったのが、甲子園出場でレギュラーの6番(正ショート)になったそうだ! ちなみに、松本君の写真は、2004年10月第2週の乾坤一滴写真館に次男と一緒に写っている(左が松本幸一郎君)。

 さて、今週は、8月1日の火曜日の夜は、臨港パークで行われる神奈川新聞花火大会を、学院の屋上から見物する。そして、5日の夜には、今年の福岡校の卒業生たちが出る舞台を荻窪に観に行き、それを観に来る卒業生たちも含めて、みんなで飲む予定だ! 楽しみ、楽しみ! あ、長らくお待たせしていた、2005年韓国映画ベストテンと個人賞も、今週、乾坤一滴プラスの方で発表する! おいおい、2005年って、もう8月だぜ! すんません!

(2006.8.1)
(つづく)


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