2005年8月第4週

 さて、今週は久しぶりに日記形式でお送りしま〜す! といっても、結局、公演の感想も含め、中身が濃くて長くなったので、なんと二日分だけ……おいおい! しかし、日記形式で文体を変えて書くと、マジメな感じになるなぁ……特に演劇関係のことは。いや、根はマジメなんですよ、ホント。

■8月25日(木)

 毎年、学院の卒業式をやっている福岡市民会館に『弟の戦争』を観に行く。名古屋の劇団うりんこの公演(主催は福岡市のNPO子ども文化コミュニティ)だが、演出が鐘下辰男氏で、福岡に鐘下演出の舞台が来るのは初めてだそうな。しかも、一回だけの公演、というわけで、客席には福岡の演劇関係者が多数。私の隣りの席は、福岡演劇のひろばの薙野氏。近くにはサイコー舎の泊氏。終わってロビーに出ると、朝日新聞の長友さん、FPAPの高崎氏、ギンギラ太陽’sの立石さんら。他にもNTRの柴山さんや大野城まどかぴあの方たちなどなど。90年の湾岸戦争を題材にした『弟の戦争』は、イギリスの児童文学作家、ロバート・ウェストールの原作[原題:GULF]を鐘下氏が脚本化したもので、戦争そのものが舞台になっているわけではなく、家族の絆を通して戦争の意味というものを感じさせる作りになっている。そう、これは単純に反戦を謳い上げる演劇ではなく、戦争とは何なのかということを実感させる劇なのだ。そのための、鉄パイプを組み、モニターテレビを使った装置も、無機質な音楽や効果音も、陰影を強調した照明も、役者が入れ替わりスタッフワークをやるような作り方も、つまりは、鐘下演出の意図していた部分は、成功していたと思う。初めて鐘下演出に触れた福岡の人たちにとっては、かなり衝撃的であったに違いない。しかし、ある程度、鐘下演出を見慣れている私には、いや、たとえ見慣れていないとしても、その様式的な鐘下演出が、逆にこの作品のおもしろさを殺していたようにも思えた。終演後、開口一番、薙野氏に「これは原作を読んだ方が、この作品の良さが伝わるかもしれませんねぇ」といった。それは別に鐘下演出を否定しているわけではなく、鐘下演出でこの作品を観たことによって、よりこの作品に魅了され、深く知りたいと思ったからだ。演出で惹きつけられない舞台であれば、作品に興味を持つこともないだろう。

 それほど、おもしろいと思った作品であり(それは個人的に好きそうな作品という意味合いが強い)、この脚色台本の観せ方としては鐘下演出は間違ってはなかったのだろう(脚色も本人だから、当然といえば当然なのだ)が、私が終始この舞台に違和感を感じて入り込めなかった理由は、役者の演技に他ならない。特に、主役の兄、そして、家族の父親役の演技には、残念ながら、家族間の愛を感じなかった。形骸化した演技で、咆哮さえも本当に叫んでいるとは思えず、虚しく感じてしまったのだ。唯一、弟役の女優の自然な振る舞いには共感するものを感じ、惹かれた。終演後のロビーでは鐘下氏を交えたアフタートークが行われ、そこでは中学生や高校生を含めた観客から様々な感想が述べられていた。ほとんどは、戦争を題材にした作品そのものに対する感想で(さすがに薙野氏や高崎氏は演出的なことも質問していたが)、それはそれでこの公演を企画した子ども文化コミュニティの意図としては成功したといえるだろう。だが、福岡の地で初めて鐘下演出作品が上演された、ということにおいては、役者の技量も充分ではなかったし、この舞台を劇場ではなく、それこそ体育館のような場所で上演して欲しかった(うりんこの他の学校公演ではそうしているらしいし、その方が演出的な効果も生きてくるだろう)という思いもあり、決して満足のゆくものになっていなかったのが、残念だ。これはあくまでも私の感想だが。

 会館を出て、薙野氏、高崎氏、泊氏、長友さん、立石さんの5人と親富孝通りにある居酒屋“晴れたり曇ったり”に行ったが満員で、系列の“洗濯船”に行き、軽く飲みながら感想を話し合う。その後、高崎氏が子ども文化コミュニティ代表の高宮さんに連絡したところ、ぜひ打ち上げに来て下さいとのことで、全員で再び、打ち上げ会場であった“晴れたり曇ったり”に戻る。

 劇団うりんこでは、附属の演劇研究所の卒業公演で私の『グレシアの森に』が上演されたこともあり、その話をしたら、その時、演出を担当した演出の三雲氏と和都役の女優もその席にいて(『弟の戦争』にも出演していて)、挨拶を交わした。和都役の女優は、代々木アニメーション学院・名古屋校の卒業生で、10年ぐらい前に私の授業も受けたことがあり、同期に月光舎に入った子もいるという話も出て、驚いた。

 この打ち上げで、何かと縁がありながらも一度も飲んだり話したりしたことのなかった鐘下氏と初めて飲み、話をした。お互いに福岡の地で初めて会ったことを笑い合いながら、鐘下氏が学生時代スズナリでよく螳螂を観ていたということや、江ノ島にあった天文館で『tatsuya』が上演されたことなどの懐かしい昔話から、よくGAZIRAに出ている大鷹明良のことや、韓国現代戯曲ドラマリーディングでは渡辺美佐子さんに圧倒されたということ、次に出演する市原悦子さんもすごいということや、ぜひ美加理をGAZIRAに、という話など、いろいろよく話し、よく飲んだ。『弟の戦争』についても話をしたが、いろいろ制約もあったようだ。結局、打ち上げの席には最後までいて(薙野氏や高崎氏は先に帰ったようだが)、泊氏の音頭でみんなで博多手一本で締め、高宮さんに御礼を述べ、鐘下氏にも、東京に戻ったら観に行きますよと約束をして、家に帰った。やはり、芝居を観た後に、芝居の話をしながらみんなでおいしい酒を飲むのは楽しい!

■8月27日(土)

 今日から土日を挟んで火曜日まで休みをもらい(授業自体は水曜日まで夏休み)、夏の家族サービス。昼間は、ずっと休みがなくて出来なかった大掃除。汗だくになったのでシャワーを浴びた後、夕方16:10分着の飛行機で来る妻と次男を迎えに福岡空港へ。時間があったので、家から国際線のターミナルまで20分ほど歩き、そこから国内線ターミナルまで無料バスに乗る。つまり、ただで空港へ行けるということを発見した。ただし、大きな荷物がない時だけだろう。

 飛行機は初めてという中3の次男は、乗る前は緊張していたようだが、窓から見える地上の景色も充分楽しみ、耳が痛くなることもなく降り立ったとのことで、ひと安心。荷物を置きにタクシーで家に戻り、すぐにバスで天神まで出る。西鉄ホールに“エレキコミック”のライブ『デタラメ・オン・ザ・ビーチ』を観に行くためだ。やついいちろうと今立進の“エレキコミック”というコントコンビ、次男はよく知っていたが、私も妻もあまり知らなかった。つまり、先入観がないままコントを観たわけだが、これが非常におもしろかった。コントに関しては、私はなかなかうるさいと自負している。以前、太田プロに所属していた若手お笑いコンビのコントの台本も書いたことがあり(そのコンビはすぐに解散し、二人とも引退してしまった)、思えば、小学校の時に初めて書いた台本も『本屋騒動』というコントだった。

 コントを好きになった原点は、コント55号だろう。最近の、ワンパターン化した、個性とお決まりのギャグだけで笑いをとるようなコントは嫌いだ。どういうのが好きかというと、うまく説明出来ない。つまり、説明出来てしまうようなコントは、好きじゃないのだ。一方で、お互いの役割がしっかりしている古いタイプのコントも好きだ。そういう意味で、エレキコミックは、かなり気に入ってしまったのだ。オーソドックスなタイプの演劇性と、今風の意外性を兼ね備えている。さらに、二人の身体を使ったコントもいい。このライブの構成も良かった。おそらく、スタッフがしっかりしているのだろう。テレビのお笑い番組では特に観たいとも思わないが、時間的な制約においてテレビでは放映出来ないであろうライブは、次回もぜひ観に行きたいと思った。妻も次男も初めは、福岡に来てコント? と思っていただろうが、終わってみれば大受けで、西鉄ホールの中村さんにも大喜びで挨拶をしていた。代アニの学生数名や薙野さんや大野城まどかぴあのスタッフの人も来ていて、みんな楽しんでいたようだった。観客は特に若い女性が多く、最近のお笑いブームは、やはりそういった層に支えられているんだなと改めて感じた。韓流ブームのおばさんたちのように。

 その後、私にとってはおなじみの中洲のふとっぱらへ二人を連れて行き、お薦めのホルモン炒めやらいろいろ博多ならではのメニューを御馳走し、締めはラーソーメンで、ふとっぱらを後にする。ふとっぱらは翌日の28日から約1ヶ月間、店の改装に入るということで、実にグッドタイミングだった。家に戻り、火曜日までの三日間の予定を改めて考える。濃い〜最後の夏休みになりそうな気配を感じた。

(2005.8.30)
(つづく)


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