2003年5月第3週

 福岡に来て、一ヶ月が経ちました。やはり、二、三日いるのと住むのとでは大違い。もちろん、いい意味で、ですよ。順応性の強い私としては、すっかり、とまではいかなくても、だいぶ福岡での生活に慣れ、こっちの人間と話していると、自然に「〜と。」という言葉も出て来てしまうようになりました。いや、ほんと。もちろん、もどきの博多弁ですが。しかし「〜たい。」までは出ませんね。あ、これは違うのかな。

 この福岡の代々木アニメーション学院は、九州各県(7県すべてわかりますか?)と関門海峡を隔てた山口県、そして沖縄県からの生徒がほとんどなのですが、声優科の授業なので、標準語を教え込みます。で、NHKで使っている言葉を基準にしているのですが、九州でも県によってかなり言葉のアクセントが違うことを知りました。方言が違うのはわかりますが、最近の若い人たちはあまり方言は使わなくなってきたようです。話を聞いても、「おじいちゃんやおばあちゃんのいってることはわからない」といいますしね。しかし、アクセントだけは明確に違います。どうも、宮崎の人は言葉のアクセントの違いが強く、独特のリズムで話しますね。さらに福岡県内でも違いがあるそうです。そう考えると、標準語というのは、言葉を平板化しているような気がします。特に最近は、平板に、抑揚を付けずにいう言葉が多くなってきているとかで、なんか味気ない言葉が増えてきている気がしますね。私はやはり温か味を感じる方言や地方独特のアクセントが大好きなので、生徒たちにも、「自分が生まれ育った場所で使ってきた言葉は、誇りを持って大切にし、決して忘れるな! ただし、標準語も覚えてきちんと切り替えられるようにしろ!」といっているのですが、この言葉のアクセントを直せるかどうかは、その人間のセンスにかかっているような気がしますね。何度いってもダメな人はダメだし、一回で直せる人もいますからね。まぁ、生まれも育ちも東京の私も、いまだにちょっと気を抜くと「し」と「ひ」がうまくいえなかったりするし、アクセントは私の専門分野でもないので、あまり強くはいえないのですが。

 今週末には、学院で一日体験入学というイベントが行われました。これは、学院に進学を希望していたり、興味を持っている高校生や一般の人が、学院で行われている授業と同じことを一日だけ体験出来るというもので、声優科には50人ぐらいの参加者がいました。その最後に、学院ではこういう実践的なこともやってますよということで短い舞台を発表するのですが、先々週ぐらいから、そのために連日遅い時間まで稽古をしてました。発表した舞台は、学院のアニメーター科の生徒が一昨年に卒業制作で作った『サイバーブレイズ』というアニメ作品を、映像を交えて舞台でやってしまおうというもので、いい出しっぺの私も、こんなに大変なことになるとは思いませんでした。何が大変って、主人公が入ってしまうサイバー空間を映像で表現し、主人公を助け出そうとする友人たちの現実の部分を実演で同時進行でやるのですが、その映像シーンのコンピュータでの画像処理の時間のかかることかかること。といっても、やるのは私ではなく、傀儡庵こと長谷川淳一氏なのですが。彼は何日か家に帰れないこともあったようです。撮影はもちろん私がやり、それも遅い時間までかかったのですが、何とか一日で終わり、コンピュータでの映像処理に渡したのですが、いやぁ、コンピュータってのは信用出来ませんね。人間なら何かあった時に何とか対処の方法を考えたりすることが出来るけど、コンピュータは止まったらそれで終わりですからね。まぁ、長谷川が頑張ってくれたおかげで何とか本番には間に合い(彼も私も本番に間に合わせた画像処理には満足はしてません。彼もさらに手を加えたいといっているので、いずれまた発表するとは思いますが)、2年生の生徒たちはさすがに画面に台詞を合わせるのは慣れていて、大きなミスもなく本番を終えることは出来ました。観てくれた代アニへ進学を希望している高校生たちも満足してくれたようです。

 そんなこんなで先週は家に帰ってバタングーの日々でした。

 そうそう、そんな忙しいさ中、先週末にようやく、やっとパソコンが開通し、メールも出来るようになりました。といっても、まだどこにも送ったり、送られてません(当たり前か)。この乾坤が最初になりましたね。関係者にも知らせなきゃ。 今週末には神奈川に戻って、『おいしい水』を観に行きます。子供たちにも久しぶりの再会だぁ!

(2003.5.20)
(つづく)


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