舞台明るくなる | |
橋本(龍太郎)が電話に向かって怒鳴っている。後ろ向きかも。 | |
橋本 | (電話に)いいかげんにしてくださいよ。全然理解できませんよ。許せませんよ。あれはいったいどういうことなんですか。なんで小泉ごときがあんなに票を集めてるんですか。大丈夫だって言ったじゃないですか。野中さん、説明してくださいよ。納得のいく説明をしていただかないと。それはだめです。そんなことは前からわかっていたはずです。それを前提として、私は立ったんですから。いいですか、今回の総裁選は、私の政治生命がかかってるんですよ。このままじゃ失脚じゃないですか。こんなこと、私を応援してくれているみんなに説明のしようがないじゃないですか。とんだピエロですよ。小泉の引き立て役ですよ。いいかげんにしてくださいよ。このままじゃ終わりませんよ。 |
家族だって、家族だって応援してくれてるんです。幼い子だっているんですよ。そうです。富子が生んだ子です。まだ子供ですよ。今度のことなんて、理解できるわけないじゃないですか。子供に説明できますか。優秀なんですよ。幸一郎よりも、ずっとずっとできるんです。跡継がせようと思ってます。今度生徒会長になったんです。才能あるんですよ。だけど、あいつだって、今回のダメージは大きいはずです。顔向けできません。いいですか、小泉とか田中とかが政治の表舞台に出るようになったら、この国は終わりですからね。我々が築き上げてきたものが壊れてしまいます。そんなことはさせない。絶対に。そこんとこ、野中さんも覚悟してくださいよ。ええ、私も腹くくって、死に物狂いで行きますよ。ええ、じゃ、後程、向こうで善後策を。はい、よろしく。 | |
電話を置く | |
橋本 | 幸一郎!(呼ぶ) |
橋本幸一郎(嫡子)、登場 | |
幸一郎 | はい。 |
橋本 | 30分後にでかける。準備はできているか。 |
幸一郎 | はい。 |
橋本 | いよいよだ。わかっていると思うが、惨敗だ。間違いない。 |
幸一郎 | はい。 |
橋本 | お前が一人前になるまで頑張っていようと思ったが、今回のことはダメージが大きすぎる。あとは、お前自身の手で、 |
幸一郎 | はい、わかってます。 |
橋本 | なにが? |
幸一郎 | はい? |
橋本 | お前に何がわかっているんだ。お前ひとりで何ができるんだ。なあ、おい。 |
幸一郎 | はい。 |
橋本 | お前はダメだ。使いものにならん。もういい。ついてこなくていい。今日は一人で行く。テレビで見ていろ。父親の無様な姿を、じっくり見ていろ。そして考えろ。な、この国が壊れていく姿でも想像していろ。いいな。 |
幸一郎 | はい。 |
橋本 | 順一郎はどうした。 |
幸一郎 | もう、学校へ行きました。 |
橋本 | そうか。よし、もう行っていい。部屋へ下がっていなさい。 |
幸一郎 | はい。(が動かない) |
橋本 | お前が順一郎だったら・・・ |
幸一郎、去る。龍太郎、取り残される。 | |
暗転 | |