咲子 | 明美さん、迷惑なんですよね。 |
明美 | 何が? |
咲子 | お客さん、恐がってるじゃないですか。 |
明美 | そうかな。 |
咲子 | だって、そのおなかの傷、気持ち悪いんですよ。 |
明美 | ごめんなさいね。 |
咲子 | ストリッパーの裸に傷があったら、だめじゃん。 |
明美 | なんか、だんだん目立っちゃって。 |
咲子 | 今度から、はじっこで踊ってくれます? |
明美 | うん |
| |
| 咲子、去る |
| |
ノリコ | 明美さん、聞いてください。 |
明美 | なになに、どうしたの? |
ノリコ | 最近、サブが冷たいんです。 |
明美 | えー、そんなことないでしょ。 |
ノリコ | サチコにちょっかい出してんじゃないかって思うんです。 |
明美 | うそでしょ。サチコは義夫ちゃん一筋じゃない。 |
ノリコ | だって、おかしいんですよサブの態度。 |
明美 | じゃあさ、今度、聞き出してあげる。 |
ノリコ | お願いします。あたしも、シゲさん、何考えてんだか、聞いときますから。 |
明美 | うん、頼むね。 |
| |
| ノリコ、去る |
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中野 | あなたたちストリッパーってのは、何を考えてるんですかあ。 |
明美 | 何も考えてませーん。 |
中野 | あの、本番って言いましたっけ。舞台の上でやっちゃうやつ。 |
明美 | 本番マナ板ショーでーす。 |
中野 | 恥ずかしくないんですか。 |
明美 | 仕事ですから。 |
中野 | 仕事ったって、恋人とか、何も言わないんですか。 |
明美 | カレシ、理解のある人なんです。 |
中野 | おかしくないの、それ。カレシって、何を考えてるんですか。 |
明美 | まあ、カレシったって、ヒモですから。 |
中野 | 今度、その人に、愛情について取材させて下さいね。 |
明美 | 取材ですか。シゲさん、愛情について、お話できるかなあ。 |
中野 | とにかく、顔が見てみたいんで、よろしく。 |
| |
| 中野、去る |
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みどり | 明美さん、マコトが結婚してくれるって。 |
明美 | おめでとう。よかったね、みどり。 |
みどり | でも、ちょっと心配なんです。マコト、子供だから。 |
明美 | いいじゃないの。マコトはいい子よ。幸せにね。 |
みどり | 明美さんも、シゲさんに幸せにしてもらって下さい。 |
明美 | どうかなあ。シゲさん、優しいんだけど、結婚はちょっと・・・ |
みどり | そうですね。だったら、義夫さんはどうですか。あと、アルバイトのシロちゃん。 |
明美 | うん。みんな優しいんだけど、いまいち、決め手にかけるのよ。 |
みどり | みんな、だめだなあ。押しが弱いんですよ。 |
明美 | 義夫ちゃん、好きだし、シロちゃん可愛いんだけど。 |
みどり | 詰めが甘いんだもの。もおー、今度、言っときます。 |
明美 | (ホントに)ねえ。マコトを見習えってのよ。 |
みどり | はいっ。 |
| |
| みどり、去る |
| |
サチコ | 明美さん、あの・・・ |
明美 | どうしたのサチコ。 |
サチコ | 明美さんは義夫さんのこと、どう思ってるんですか。 |
明美 | なによ、あらたまって。 |
サチコ | 義夫さんのこと、もて遊ばないで下さい。 |
明美 | やだなあ。深刻ぶっちゃってぇ。 |
サチコ | 義夫さんは、いろいろ大変なんです。マジメな人なんですよ。 |
明美 | 知ってるよ。マジメないい人よ。 |
サチコ | だったら、ちょっかい出すの、やめて下さい。 |
明美 | 別に、ちょっかい出してないよお。 |
サチコ | うそです。明美さんにはシゲさんがいるじゃないですか。 |
明美 | 義夫ちゃんはいい人だし、あたし、好きよ。それだけよ。 |
サチコ | あたしの方がずっとずっと好きです。 |
| |
| サチコ、去る |
| |
美智子 | いつも父がお世話になってます。 |
明美 | いえ。 |
美智子 | 母が、お礼を言ってました。 |
明美 | どういたしまして。 |
美智子 | きれいなものですねえ。 |
明美 | はあ? |
美智子 | 明美さん。(音楽、カットアウト) |
明美 | はい。 |
美智子 | 見せていただきました。 |
明美 | 何を。 |
美智子 | ストリップです。 |
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| 美智子去る。シゲ、登場。 |
| |
シゲ | 娘なんだよ。 |
明美 | シゲさん、あんた子供いたの。子供は嫌いだって言ってたじゃないの。 |
シゲ | 大っきらいだよ。 |
明美 | あんたが嫌いだって言うから、死にそうになりながら子供おろしたんじゃない。 |
シゲ | 女房が勝手に産みやがったんだよ。 |
明美 | あたしだってさ、8カ月だったのよ。盲腸になっちゃってさ、盲腸が子供に押されて背中の方に行ってたのよ。腹膜炎起こしてさ、お腹はどんどん大きくなるし、手術しても盲腸の傷はくっつかないし大変だったのよ。シゲさんの子供、助からなくて。 |
シゲ | ガキなんかうるせえばっかりでどうしようもねえぞ。俺もさ、女房も子供も捨ててきてんだからよ。 |
明美 | でもさ、あたし、子供好きだし、一人ぐらい欲しかったんだけど、そん時、ダメな身体になっちゃったじゃない。卵管にうみがたまって、 |
シゲ | 仕方ねーんだよ。 |
明美 | でもいいんだ。シゲさんがいるから。 |
| |
| 明美、去る。義夫、登場。 |
| |
義夫 | シゲさん、明美さん、泣いてましたよ。 |
シゲ | いいんだよ義夫ちゃん。それよか、もっと照明、工夫してやってよ。明美のおなかの傷は消えないんだからさ、照明でなんとかしてくれないと。 |
義夫 | いろいろやってますよ。赤を強くしたり。 |
シゲ | 頼むよ。俺らヒモはさ、そういうとこに気を使ってやんないと。 |
義夫 | 正面からがんがんピンをたいてると、やっぱ熱もっちゃうんじゃないかと思うんですよ。そんで、今度、いっそ横に2台、ピンを仕込んでみようと思うんです。マコトとか、ケンとか、どうせみんな本番中、ヒマでしょ。背中からもサスを動かして、こう立体的にですね、いえ、明美さんだけ特別ですよ。他のやつは、何当てたって変わりませんから。明美さんは照明に映えるんです。ね、座長に言ってみて、今度、やってみますよ。 |
シゲ | お前さ、明美が好きなんだろ。いいんだよ、言ってくれよ。しあわせにしてやってくれよ。いつでも連れ出してくれよ。明美はさ、そりゃあアバズレだし、ひどい女かもしれないけど、気はいいんだよ。義夫ちゃんはさ、司法試験の勉強で忙しいだろうけど、少しはさ、女のシアワセっつうのを考えて、明美を口説いてやってよ、なあ。 |
義夫 | いえ、ボクは、 |
シゲ | いま、連れてくっからさ。 |
| |
| シゲ、去る。マコト、ケン、サブ、座長、出てくる。 |
| |
マコト | あのさ義夫ちゃん、俺ら別にヒマじゃないよ、本番中。 |
サブ | 楽屋でさ、ゴロゴロしてんのって、ヒモの仕事なんだよ。 |
座長 | そりゃあさ、義夫ちゃんは、ヒモもやりながら照明もやってるけど。 |
ケン | そういうのヒモって言えないだよね。サチコが泣いてたよ。 |
マコト | サチコも可哀想だよ。楽屋でゴロゴロしててくれないと、ストレスたまった時に、「このロクデナシ、あたしが必死で踊って稼いだ金を、ロクでもないことに使いやがって。ちったあ働け、ゴロゴロゴロゴロしやがってよお」って言って、殴りまくることすらできないもんな。 |
サブ | 大変なんだよ。ゴロゴロしてんのも。たまにはさ、俺だって、ちゃんと働こうかって思う時あるもの。窓から顔出して、「俺は明日から額に汗して働くぞー」って叫びたくなるもの。一日中、ノラクラしてんのって、つらいんだから。 |
座長 | オレもさ、ワセダ速記習おうかって思うわけよ。あとパソコンな。こういう時代だからさ、MACぐらい習ってさ。手に職持ってさ、いざと言うときにはヒモだって、女を食わせてやるわけよ。そういう甲斐性ぐらいはないとなんないと思うわけよ。 |
ケン | 義夫ちゃんはさ、どうせこんなとこ、通りすがりなんだろけど、サチコはここしかないんだよ。なのに明美さんに色目使って。そんなに好きなら、明美さんかっさらっていくぐらいの度胸はないの。 |
義夫 | 明美さんはシゲさんが好きなの。そんなこと、わかってるだろ。 |
ケン | だからさ、サチコのことを言ってるわけよ。 |
マコト | いいんだけどね。サチコはああゆうオンナだから。 |
| |
| サチコ登場。 |
| |
サチコ | 義夫さん。 |
義夫 | サチコ! |
サチコ | 明美さんの出番よ。シロウ君にはまかせられないんでしょ、あかり。 |
義夫 | あたりまえだ。バイト野郎に明美さんをまかせられるか。 |
サチコ | ほら、あんたたちも、明美さんの出番、見るんでしょ。 |
| |
| 咲子、みどり、ノリコ、登場して |
| |
咲子 | ケン、あんた、何ぐずぐずしてんの。とっとと動かんかい。 |
みどり | マコト!。マコト、マコト、マコト、あたしの顔に泥をぬる気かい。 |
ノリコ | サブ、こらー、サブ。もーサブサブ。とっとと行きなさいよってば。こらー。 |
| |
| 三人の男、去る。残された座長、いたたまれなくなり・・・ |
| |
座長 | いやーん、支配にーん。 |
| |
| 座長、去る。 |
| |
咲子 | ちょっと、支配人と座長って、どういう関係なのよ。 |
ノリコ | さあ? |
サチコ | 義夫さん、あの・・・ |
みどり | さっちゃん、頑張って。 |
咲子 | そーよ、負けちゃだめよ。 |
ノリコ | ここが踏ん張りどころよ。気合いで負けちゃだめ。 |
サチコ | あの、義夫さん、あの・・・。 |
咲子 | んもー、じれったいわね。義夫ちゃん、あんたさ、いいかげんにしなさいよ。女なめると承知しないわよ。うちのケンが黙ってないわよ。わかってんの。 |
みどり | そりゃあさあ、シゲさんああいう人だし、明美さんのつらい気持ちもわかるわよ。でもさ、男だったらさ、サチコのしあわせも考えてさ。確かに、サチコはへちゃむくれよ、スタイルも悪いわよ。でも、この子はこれでけっこうアレなのよ。 |
サチコ | そうよ。けっこうアレなんだからね。 |
ノリコ | それにさ、あたしらみたいな商売やってると、どうしたってストレスたまんのよね。やっぱカレシがいるのといないのとじゃ大違いなの。裸だってさ、舞台で人に見られるのはなんともないけど、カレシにだと・・・うっ、恥ずかしい。燃えるわ。サブぅ。 |
| |
| ノリコ、燃え上がって去る。 |
| |
咲子 | やっぱ、サブの体力がないと、ノリコの相手はできんわ。1日2回はくわえこんでる。 |
| |
| 明美、支配人、登場して。 |
| |
明美 | ちょっとあんたたち、何してんのよ。 |
支配人 | お前ら、裏で準備があるんだろ。 |
| |
| 咲子、みどり、「はーい」と返事して明るく退場。サチコ、明美を睨んで退場。 |
| |
支配人 | 義夫ちゃん、どうなの。あかりのプランは考えてくれてんの。明美さんはうちの看板なんだから。座長には前から言ってあるんだけどさ、必要な器材があったら、バリライトでもなんでも用意させるから、一条明美一座だけは特別扱いするんだから、とにかく明美さんをかっこよくあててよね。 |
義夫 | 支配人!、そしたらですね、全部の劇場に、コンピュータ導入して下さい。総額8千万円ぐらいですみますから。 |
支配人 | よし。考えとくわ。 |
| |
| 支配人、去る。義夫と明美が残る。 |
| |
明美 | 義夫ちゃん、あかり、きれいにあててよね。 |
義夫 | わかってます。 |
明美 | 東京の客はさ、傷口とか見つけるとうるさいの。もう、ごまかせないんだけどね。女も25過ぎると、肌の張りで騙せないのよ。たるんでくるのよ。 |
義夫 | 大丈夫ですよ。明美さんの踊りは、本物ですから。 |
明美 | ありがと。義夫ちゃんは、そうやって真剣に言ってくれるから好きよ。おせじに聞こえないんだもの。 |
義夫 | おせじじゃありません。 |
明美 | じゃあ、よろしくね。(明美、去る) |
義夫 | おせじじゃありません。明美さんの踊りはほんとにきれいです。きっと、若い頃はもっともっと素晴らしかったんでしょうね。もっと早く出会っていれば、その美しい踊りを見れたんでしょうね。残念です。とても残念です。もう、傷口を隠すことも難しいんです。身体の線が崩れてきていることを隠すのも難しいんです。時々、ふらつくのも、ポーズが決まらないことがあるのも、なんとかして隠したいんですけど。顔を中心にとります。明美さんの美しい顔を。明美さんの心の美しさを、その表情に読み取らせてみせます。大丈夫です。客は、明美さんの美しさに見とれてますから。さあ、明美さん、出番です。 |
| |
| 音楽、「魂のルフラン」。明美、踊る。 |
| いよいよブラジャーに手をかけた瞬間、明かりが消え、パトカーのサイレン。 |
| 暗転の中 |
| |
シロウ | 警察の手入れだ手入れだ。逃げろ。 |
座長 | またやりやがったな。 |
シゲ | うちの一座を潰す気か。 |
| |
| などと大騒ぎ。明るくなると、シロウ(シロ)と明美 |
| |
明美 | またあかり消したのね、おこられたでしょ、みんなに。 |
シロ | ブラジャーなんか取ったりして不潔だ! 早く着て下さいよ。そうじしなきゃいけないんだから。 |
明美 | 背中のジッパー、お願い。 |
シロ | 僕がそばに寄ると気色が悪いんじゃないんですか。 |
明美 | ほんとにかたぶつなんだから。どうして私がブラジャーとパンティに手をかけるとあかり消しちゃうの。 |
シロ | 足がコンセントにひっかかったんです。 |
明美 | この小屋に来て、もう五日よ。あたし、まだ一度も脱いでないのよ。そりゃ、怒るよ、客も。 |
シロ | 怒らしときゃいいじゃないですか、何を恥じることがあるんです。大体、ストリップ小屋に来たら、いつでも裸が見られるっていう、甘えが許せないんです。甘えるなあ。もう、僕の目の黒いうちは、絶対に認めませんからね。 |
明美 | いきなりパンツ、脱いじゃお。 |
シロ | パンティーでしょ。 |
明美 | あ、いやだった、こういう言い方。あたしさ、いつも裸で楽屋中走り回っているから、つい言葉悪くなっちゃうのよね。 |
シロ | だから、バスタオルを巻いて下さいって言ったでしょ。とにかく僕、嫌なんです。女の人が裸になるのは。 |
明美 | でも、あんまりコンセントが抜けつづけるとおかしいよ。 |
シロ | おかしいですか。ただコンセントが抜けて明かりが消えて、音楽が終わると明かりがついて、あなたが舞台にいないだけの話です。おかしくも何ともありません。その証拠に、大嫌いな春子の時は、太陽の10キロライトがボンッてついたじゃないですか。ザマアミロってんだ。 |
明美 | 春子、泣いてたよ。 |
シロ | 春子は僕らが腹が出てるのを隠してやろうとあかりを考えてやると図に乗って、ますます食って腹を突き出してくるんですよ。たまにはいい薬ですよ。明美さんと10キロで行ってこいですよ。プラマイゼロ。 |
明美 | こわいね、あんた。 |
シロ | 男はこわがれるぐらいがちょうどいいんです。なめんなよ。うっしゃー。どこ行くんですか。 |
明美 | 自分は着替えに行って参ります。 |
シロ | 一度脱いだ女は、何着たって同じなんですよ。 |
明美 | はーい。 |
シロ | 何喜んでるんですよ。おこられたことがないもんだから。近ごろの女は困ったもんです。 |
明美 | ・・せっかく慣れてきたのに、もう夏休みも終わっちゃうのね。私、好きなんだ。あんたが駅から菜の花畑の中「今年も来ました。また働かせて下さーい」走って来るのよね。女嫌いのふりして、あたしの気を引く悪い人。一度も誘ってくれないんだもん。ルリ子とは別れたの。 |
シロ | あんな女、関係ありませんよ。 |
明美 | 今朝だって、二人で出かけてたじゃない。何してたのよ。言ってごらんなさいよ。 |
シロ | ですから、あなたにあてつけてたんですよ。分らないんですか。 |
明美 | どうも、あんたのはまどろっこしいんだよね。 |
シロ | 何がまどろっこしいんですか。恋のイロハですよ。男と女の基本です。 |
明美 | あら、首にキスマーク。言っちゃお、みんなに言っちゃお。 |
シロ | どこにキスマークがあるんです。どこです。どこです。あなたはもう・・・ |
明美 | ありません。もう、しつこいんだから。ありません。冗談だってば。 |
シロ | 確かにルリ子は抱きついて来ましたよ。だけど僕は猫だまし一発かまして、けたぐりですっころがして、社の崖から蹴り落としてやりましたよ。キスマークがつくわけないじゃないですか。どこにあるんです。これは首の筋です。どうしてあなたは、そういうことを言うの。ねえ、どこ、どこ、どこ。(と、首を出す) |
明美 | ここにあるわよ。(と、首にキスをする) |
| |
| 二人して恥ずかしがる。 |
| |
明美 | ほら、あるじゃない。さて、と、飯でもかっこんでくるか、どっこいしょ。 |
シロ | どっこいしょってのはどこの国の言葉だよ、女の素養ってのがないのか、両手で尻をたたかなきゃ立てないの。 |
明美 | いちいち小姑みたいにうるさいわね。ちっちゃいときからの癖なのよ。 |
シロ | 悪い癖なら治せよ、ほら、髪にくしぐらい入れろよ。女だろ。嫌いなんだよ、そういうだらしない女。 |
明美 | いいわよ、どうせ私のことなんか嫌いなんでしょ。 |
シロ | 君はうちのおふくろを知らないだろう。階段の下なんかにゴミ置いといて、上がっていくときに拾うかどうか、試すんだよ。 |
明美 | そんときになったら拾うわよ。 |
シロ | 普段からやってなきゃ、できる訳ないだろ。 |
明美 | 悪かったわよ、ごめんなさい。 |
シロ | 家に友達なんか来たときも、どっこいしょって言って立つのかよ。オレの立場にもなってみろよ。 |
明美 | あっ。 |
シロ | あっ。 |
明美 | 私達ってまるで、結婚間近の恋人同志のケンカのよう・・・。 |
シロ | ものは相談なんだけど、聞いてくれる? |
明美 | 素直になれないよのよね、あたし。悪い性格なんだろうね、あたし、気が強いから。 |
シロ | 僕がいないあいだ、このストリップ、ブラジャーとパンティは取らないって訳には・・・。 |
明美 | ばか! |
シロ | ・・・・ |
明美 | また次の休みになったらアルバイトに来るんでしょ。今度こそふたりでフーッと飛んでみたいなと。 |
シロ | いえ、卒業ですから。 |
明美 | ・・・。そう、もう四年もたったのね。もう来ないのね。忙しくなるんだ。卒論頑張ってね。あんたなら大丈夫よ。社会人になっちゃうのか。社会人になったらこんなとこ来れないもんね。社会人になっても冷たくしないでね。 |
シロ | あいさつぐらいしてあげます。 |
明美 | ダメダメダメ、あたしドギマギしちゃうから。それに、あたしみたいな知り合いがいるとあんたに迷惑かかるから。 |
シロ | 明美さん、社会人になる前に一度ゆっくりお話したかったです。 |
明美 | いくらでも時間はあったんじゃないか、ふたりっきりになるつもりだったら。わかっていたんじゃないのか? あたしの気持ち。 |
シロ | 手に入れたものしかわかりません。特に女の気持ちは。 |
明美 | 手に入れようとしたことがあったの。 |
シロ | 山陰を回るようなことがあったら、僕の田舎の鳥取へ寄ってください。 |
明美 | またこれだ。 |
シロ | この仕事やめてもらうわけにはいきませんか。 |
明美 | ・・・そう言われて、三回やめてんの。「幸せにしますから一緒になって下さい」なんて言われてさ。一度目、みんなからわーっ、お姉さんいいな、うらやましい、うらやましいって言われて駅で待ち合わせよ。ずーっとずーっとずうーっと待って、電車がビューン、ビューン、ビャーッ。太陽がギラギラ照ってて、あたしこんなでかいトランクふたつ持って、ショルダー前と後ろに二つかけて、こんなつばの広い真っ白な帽子かぶって、ピンクの可愛いベスト着て、ヒラヒラのスカートはいて一日待ってたけど・・・。来やしないよ。そんなふうに駅ですっぽかされるなんてしょっちゅうよ。泣きべそかいて小屋に戻ると、シゲさんがちゃんと待っててくれてね、「残念だったな、気にするなよ、またいい男があらわれるよ」ってなぐさめてくれるの。抱いてくれるの。 |
| 二度目、45歳。三人の子持ち。おばあちゃんひとり。一度目でこりたから、これだけハンデがあれば大丈夫だろうと思って、玄関あけたとたん、そこんちの長男から「あ、おばあちゃん、こいつ函館で特出しやってた奴だ。俺、修学旅行んときに見たんだ。」それで終わりよ。あん時のおばあちゃんの歪んだ顔、忘れられないもんね。男は追ってこないんだよねえ。 |
| 三度目なんか、披露宴までこぎつけたのよ。シゲさんも喜んでくれてね。前の日なんか花嫁の父よ。お色直しんとき、シゲさんが手伝ってくれて、すそまくりあげて控え室で一発よ。燃えたね、あん時は。胸いっぱいの悲しみとスリルがあったなあ。ケーキカットも終わり、さっ、お開きとまでこぎつけたところで、仲人のやつがこいつも新郎とあたしのストリップ見にきてたんだよ。あたしがうさん臭い新郎の方になびいたのがくやしかったんだろうね。酔っ払っていわくありげな目をして、「それでは新婦にも、お得意なところをひとつ」「いえ、わたくし何も芸がありませんから」「まっ、そう言わずにここは無礼講といきましょう」「それでは昔とったきねづかで、福島県郡山市のたつみミュージックホールで大当たりを取った“花嫁のもだえ”のほんのさわりを。はーなー嫁は夜汽車に乗ってとついでーゆーくのー」あたしはストリップでお色直しの披露をしてやった。父親がわりで神妙に席に座っていたシゲさんの顔から血の気が引いていくのがわかったよ。気がついたら式場から押し出されていたよ。「来賓のみなさん、お色直しんとこだよ、さあ、特出し始めるよ、仲人さん、見なきゃ損するよ、ホラお兄さん、ちゃんと |
シロ | ・・・ |
明美 | 私が帰ってくるたびにいつも待っててくれるの、シゲさんは。線路のむこうの麦畑でかかしの格好して、シゲさんニコニコ笑ってんのよ。あたし荷物かなぐり捨てて、あんたあーって、その胸に飛び込んで行ったよ。。麦畑の中ごろごろ抱き合ったのが、あのシゲさん。雨のざあざあ降るときに、小屋の前まで帰ってきて荷物こんなにたくさん持って、ああ、もう死んじゃおうかなあと思った時に戸をガラッとあけて、何だこのやろう、やっぱり俺の身体が忘れられないか。ハハハお前は俺から離れられないんだよ。水たまりの中、ゴロゴロ抱き合ったのが、シゲさん。「またいい時もあるさ」って力づけてくれるのが、シゲさん、受け止める時は、受け止めてくれるの。 |
シロ | 明美さんはやっぱり、シゲさんのことが好きなんですね。愛しているんですよ。その気持ちを大切にした方がいいと思うな、僕は。 |
明美 | なにを言ってんの。いい年した男と女がホレたハレたじゃないんじゃない。ガッツじゃないの。ガッツでどこまでふんばれるかじゃないの。ふみとどまるかじゃないの。 |
シロ | ええまあ。 |
明美 | あんたすぐ傷ついちゃうのね。傷つくの上手ね。それだけが取り柄ね。おまえは俺の身体が忘れられない女になったのサ。言えるかね、あんた。ウソでもいいから。おまえは俺の身体が忘れられない女になったのサ。言えるかね。 |
シロ | 言えませんよ。社会人ですから。 |
明美 | 鳥取は今ごろ、ハマナスの花が砂丘一面に咲いてるんだろうね。こんな私でも、フッとさらってくれる人がいないもんかなって思っているんだけどね。 |
シロ | 靴のヒモがほどけてますよ。結んであげましょう。 |
| |
| 音楽。かがんだシロウの肩に明美が片足を上げる。シロウはそのまま立ち上がり、 |
| 明美にキスをする。ゆっくりと離れる。シゲが来る。 |
| |
シロ | (ドギマギして)あ、それと僕、今日限りで大学にもどらなきゃいけないんですよ。長い間お世話になりました。 |
シゲ | ちょっと待てよ、連れてってやれよ、明美はお前のこと好きなんだよ。 |
シロ | さようなら。(去る) |
シゲ | 待ってくれよ。明美の気持ちもわかってやれよ。幸せにしてやってくれよ。おい、明美、あと追って行かないか、荷物はあとで送ってやるって。さ、お前はいい子だよ、気だてのいい女だよ、勇気を出してとびこんでいって抱いてもらえ、幸せにしてもらえ。いいのかよ俺みたいなろくでなしに一生つきまとわれて。 |
明美 | だって。 |
シゲ | お前はな、いつでも帰ってくりゃ俺が待ってるって思うからダメなんだよ。今度こそ帰ってきちゃダメだ。我慢して尽くして、かわいがってもらえ、さっ、行けよ。 |
| |
| 汽車の音。明美、放心したまま、シロウと逆の方に去る。 |
| |
シゲ | 全く、自分でチャンスをものにするって気合いがないんだよな。せっかく一流企業の奥さんになれるチャンスをさ。 |
| |
| 美智子、登場して。 |
| |
美智子 | あの・・・。 |
シゲ | こんなとこに来ちゃいけないな。 |
美智子 | はい。 |
シゲ | 父さんが目を光らせてたからよかったけど、こんなとこうろうろしていると補導されちゃうよ。父さんがこのストリップ小屋にいるの、誰から聞いた。 |
美智子 | お母さまに。 |
シゲ | で、なんのようだ。 |
美智子 | ニューヨークに行きます。ニューヨーク工科大学へ留学です。 |
シゲ | 何しに行くんだよ。 |
美智子 | はい、物理を。核エネルギーをやるんです。 |
シゲ | 女の子がそんなことやってどうすんだよ。 |
美智子 | 好きですから。これにハンコをお願いします。 |
シゲ | 何だこの、父親の職業、ロープってのは。 |
美智子 | ヒモの意味がわからなくて、すみません。 |
シゲ | お前、17だよな。 |
美智子 | はい。お父さまが出て行ってから、もう7年です。 |
シゲ | ニューヨークか。お前、大丈夫か。向こうは外人ばっかりだぞ。 |
美智子 | はい。 |
シゲ | わかってるな。お嫁に行ける身体で帰ってこいよ。 |
美智子 | は、はい。 |
シゲ | なんだ、怖いのか。 |
美智子 | こわいです。 |
シゲ | ニューヨークってのは、音楽とかダンスとかもあるんだろ。まだやってんのか。 |
美智子 | はい。 |
シゲ | お前は小さいときから天才って言われてたっけ。 |
美智子 | 明日、成田から発つんです。 |
シゲ | 明日って、お前、やり方がきたないぞ。そんなはなしあるか。俺だって、父親として手土産の一つも持たせて |
美智子 | 3年は帰ってこないつもりですから、最後にひとめだけお会いしておこうと思って |
シゲ | 無茶言うなよ。普通1年だろ。なんだよ3年って。 |
美智子 | たまにはお母さまのところへも帰ってあげて下さい。きっと寂しいと思うんです。あの・・・ |
シゲ | なんだよ、もう。 |
美智子 | あの方にお会いできませんか。 |
シゲ | 誰にだ |
美智子 | 明美さんです。 |
シゲ | 何言ってんだよ。俺をバカにする気か。 |
| |
| 明美、ゆっくり登場する。 |
| |
美智子 | いつも父がお世話になってます。 |
明美 | 父って。 |
シゲ | うちの娘なんだよ。まいっちゃうよなあ。 |
明美 | あんた子供いたの。子供嫌いじゃなかったの。 |
シゲ | そりゃ俺だっていろいろあるよ。留学生とかなんとかでアメリカへ行くんだってよ。ニューヨークだってよ。餞別でもやっといてくれや。ちょっとケンたちに挨拶してくるわ。(去る) |
明美 | 待ってよ。 |
美智子 | どうも・・・。 |
明美 | 言ってくれなきゃねえ。 |
美智子 | さっき踊り見せてもらいました。とてもステキでした。 |
明美 | ステキって、あたしたちのやってるのはストリップなんだけど。 |
美智子 | 父のこと、よろしくお願いします。 |
明美 | 何もできませんけど、食うものは食っていただいてますし、着るもんも着ていただいてますし、病気なんかもしないもんね。 |
美智子 | はい。 |
明美 | 久しぶりなんでしょ、会ったの。私達、東京にいないで全国あちこち旅ばっかりしてるから。 |
美智子 | よく地方の名産を送ってくれました。 |
明美 | マメなのよ、あいつ。あんた、いくつ。 |
美智子 | 17です。 |
明美 | あ、あたし、シゲさんと知り合ったの17よ。おでこにニキビ。あたしいい薬知ってるんだ。あとで教えてあげる。あたし、どう、合格? |
美智子 | そんな・・・。安心しました。 |
明美 | そう。よかった。 |
美智子 | 客席で見ていてすぐにわかりました、あなただって。いつも母が言ってる通り、素敵な方だから。 |
明美 | かんべんしてよ、もう。あ、餞別あげなきゃ。 |
美智子 | いいんです。 |
明美 | いや、留学ったって、いろいろお金かかるんでしょ。勉強だって大変だし。 |
美智子 | 物理ですから。そんなにかかりません。 |
明美 | ニューヨークで物理なの。そう。でも持ってきなよ。これ、汚い金じゃないの。あたしこうみえても、OLやってた時の貯金200万ぐらい持ってるから。そっちの金をあげるから。もっとおしゃれしたい年ごろじゃないの。今日だって、お金せびりにきたんじゃないの。あ、ごめん。とにかくさ、持ってきな。 |
美智子 | そのお金をもらうと、母が可哀想ですから。 |
明美 | かっこつけんじゃないよ。いくらいるの。明日、恥かくんでしょ飛行場で。いくらいるのか聞いてんの。この指輪ももってきな。そこいらに持ってけば、300万ぐらいにゃなるから。 |
美智子 | でも。 |
明美 | だいじょうぶなのよ。あたしはがんがん稼いでいるからさ。脇で踊ってたでしょ。 |
美智子 | とってもきれいでした。 |
明美 | もっときれいだったの、昔は。真ん中だったの。 |
美智子 | あなたのことだけ見つめてました。 |
明美 | みいんなあたしのことだけを見つめているの。明美ちゃあん、明美ちゃあんって言われると、うれしくなっちゃって、ブラジャーとパンティー取った後、もうはずすもんがないのが口惜しくってさ。 |
美智子 | はい。 |
明美 | もっと足も上がったの。手の動きがきれいだって評判だったの。腰のグラインドも、もっと大きかったの。もっとしなやかだったの。あたしの踊りは本物だって、みんなが言ってくれたの。本物なのよ。テレビ出てたし。踊れるアイドルだったのよ。アムロ二世って言われたのよ。 |
美智子 | ステキでした。 |
明美 | じゃあね。そろそろ出だから行くわ。 |
美智子 | あの・・・。 |
明美 | そりゃあ、シゲさんは私にとって大事な人なんだから、せんべい布団になんかにゃ寝らせられないのよ。あの人、腰悪いし、身体丈夫な方じゃないし。 |
美智子 | 踊り、見てっていいですか。 |
明美 | 踊り、好きなの。 |
美智子 | はい。 |
明美 | しょうがないなあ。餞別替わりに、あたしの特出し見てくか。 |
美智子 | はい。 |
明美 | なんか楽しそうね。そっか、踊り好きなんだ。ニューヨークは、ショウビジネスのメッカだからね。コンサートとかもいっぱいあるしね。 |
美智子 | ライブ、好きなんですか。 |
明美 | ストリップだから、もう歌ったりしないんだけどね。 |
美智子 | 歌ってたんですか。 |
明美 | あたしの頃は、ジャネット・ジャクソンとかマドンナだったのよ。あこがれてさあ。安室奈美恵もまだ若くて。あたしも行ったのよ沖縄アクターズスクールに。すぐに認められてさ、LISって知らない?。コムロギャルソンよ。もう10年も前よね。18でテレビ出てさ、でも、LISってのは20人ぐらいいたのね。デビューできるかって思ったんだけど。踊りも歌もけっこう評価されてたのよ。コムロもニッポンにまだいたのよ。1度だけ会ったわ。上がっちゃって、何言ったのか全然覚えてないのよね。そんでも、なんか印象に残ることしなきゃって思って、こーんな風に踊ったのよ。ね、ひどいでしょ。一番嫌いなアイドルの振り付けなのよ。なんでこうなっちゃうんだろね。安室二世のあたしがさ、コムロの前でこーんな風に踊ってんだもの。でもね、またいつかチャンスが来るかなって、いろいろ研究はしてんのよ。もう、コムロもニューヨーク行ったきりだし・・・。あんた、テレビ出てなかった。もしかして。 |
美智子 | はい。あの、父には内緒にしといて下さいね。心配しますから。 |
明美 | あんたなの、コムロがあっちに作った音楽学校に日本から一人 |
美智子 | 学費は全部出るんです。マードックさんにも会いました。 |
明美 | でも、大変よ。いろんなもの見て、いろんなとこ行って、勉強することはいっぱいよ。 |
美智子 | はい。なんとかなると思います。 |
明美 | なんとかなるわけないでしょ。両親に内緒で、援助も受けずに、どうやって暮らすのよ。いいわ。あたしがなんとかしてあげる。いい、ちゃんと勉強すんのよ。へんな男につかまんないのよ。困ったことがあったら言いなさいね。ご両親に言えないんなら、あたしに言いなさい。 |
美智子 | はい、手紙書きます。 |
明美 | しっかりね。がんがん仕送りしてあげるから。 |
美智子 | 明美さん、成田発21時30分ロサンゼルス経由ニューヨーク行きは、サーチライトに照らされ、あなたのやさしさに抱きかかえられ、ゆっくりと離陸していきます。雲をつきぬけると、そこには満点の星空が広がり、星をたどれば、あなたのしなやかな足や細いあなたの手が線で結ばれ、星座となって私を見守っているような気がします。あなたのしなやかな踊りを見ながら、私も心の中で踊っていました。あなたのやさしさに抱かれて、あなたに包まれるようにして踊りました。とても幸せでした。あの幸せを心の支えとして、これから生きていこうと思います。父のこと、よろしくお願いします。 |
| |
| 飛行機の飛行音響いて、美智子、去る。 |
| |
明美 | お勉強はしてらっしゃいますでしょうか。お送りしたドレスとCDは届きましたでしょうか。今年のニューヨークは大寒波にみまわれていると聞いております。マンハッタンのビルの谷間を、冷たい風が粉雪を運び、あなたの小さな肩を震わせていることでしょう。ご自愛下さい。そして、たくさんのものを見聞きし、それらがあなたの血となり肉となることを祈っております。私は今、北国へ向かう列車に揺られながら、あなたからのエアメールを読んでおります。みちのくの里、青森は静かな湖と美しい緑に囲まれて、こんな私でも優しく迎え入れてくれることでしょう。名も知らぬ小さなストリップ小屋の楽屋に、またあなたからのエアメールが届いていることに胸を高鳴らせております。そのステージで、私はいつものように、あなたのことを思いながら、この身を捧げているのです。 |
| |
| 音楽(「おらは人気者」) |
| みどり、マコト、サブがラインダンスを踊る |
| 座長、登場し。 |
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座長 | なんだその踊りは。みどり、やる気あんのか。 |
マコト | すみません。みどりは半年も休んでいたんで |
座長 | マコトはひっこんでろ。ちょっと席を外せ。(二人、去る) |
みど | 座長。軽く練習してただけですから。 |
座長 | 何が軽くだよ。そんな踊りじゃ、舞台から引きずりおろされて袋だたきになっちまうんだよ。青森の客をなめんなよ。 |
みど | もう少し練習すればカンも戻ると思うんです。 |
座長 | みどり、もうダメなんだよ。お前の身体はもうダメだ。無理な身体なんだよ。義夫ちゃんがあんなに複雑な明かりをあてても、ストリップにならないんだよ。 |
みど | でも、腎臓でずっと舞台やってなくて離れてたから。すぐにカンが戻りますから、お願いですから使ってやって下さい。踊らないと食えないんです。 |
座長 | だから。その腎臓は激しい踊りしちゃいけないって医者から言われなかったか。俺はもう診断書見せてもらったんだよ。知ってんだよ。 |
みど | お願いします。使って下さい。踊らせて下さい。 |
座長 | お前、その体形で良く言うな。お前のためなんだよ。客だって、黙って見ちゃいないって。半殺しにされるぞ。 |
みど | これから一生懸命やります。まな板ショウもやってもいいです。白黒ショウもやります。 |
座長 | ふたことめには白黒ショウだの何だって。あんたら女の神経はどうなってんのよ。うちの一座は踊りでもたしてんのよ。私の目の黒いうちは、客を舞台にあげて、まな板やったりしないわよ。第一、今のあんたのからだで客が舞台に上がって来るの?、ねえ、来るの。見せたい気持ちはわかる。女だもんね。女だったらねえ。でもね、ここはしっかり信州あたりのサナトリウムに行って静養したほうがいいのよ。 |
みど | やめると、まことと二人、食えなくなっちゃうんです。まことをどうやって食わせていけばいいのか。 |
座長 | まことが働けばいいんじゃないの。 |
みど | 無茶苦茶言わないで下さい。まこと働かすなんて、あたしそんなのいやです。まことはゴロゴロさせてあげたいんです。死ぬまで脱ぎます。舞台の上で死にたいんです。 |
座長 | 聞かせてやりたいねえ。今の言葉をあのアバズレどもに。でもみどりちゃん、まことだって、今の言葉聞けば働くよ。 |
みど | とにかく脱がせてくれませんか。とりあえず脱ぎましょう。あたし、脱いでないと落ち着けないんです。脱ぎますよ。 |
座長 | 第一、あんた、あたしがあんた達踊り子さんが病気になったり、踊れなくなったりした時のための保障の問題を、って提案した時、あんた、あたしに向かって何て言ったのよ。あたしがさ、せっかく、組合作って踊り子のオッパイを増やしたらどうでしょう、ささやかな提案をした時、「こきやがれカマがよ。なまじ踊り子にオッパイがあるから客も踊り子も怠けるんだ」って包丁片手に踊り子追っかけ回しちゃ、「カマは酔っぱらいの整理してりゃいい」なんて言ってさ、くやしいったらありゃしない。 |
| |
| 義夫が来て、座長を止める。 |
| |
義夫 | 座長。まあまあ、落ち着いて。みどり、ちょっと外へ行ってろ。 |
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| みどり、去る。 |
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義夫 | 座長も、言いすぎだよ。まな板だって、もうやらないわけにはいかないんだし。どこだって、やってるんだから。 |
座長 | そんな残酷なこと、よく言えるわね。そこいらのホテルにしけこむのと違うのよ。舞台の上で、何人もの相手しなくちゃならないのよ。それのどこが踊りなのよ。 |
義夫 | そのカマ声、やめて下さいよ。 |
座長 | (低い声で)うちは踊りでもたしてんだよこのやろう。 |
義夫 | 踊りの水準は高いんです。 |
座長 | ところで、明美ちゃん、裏口んとこにいるから、有楽ホテルに連れてってくれ。 |
義夫 | えっ。 |
座長 | 頼むよ。シゲさんがなんかすねちゃってて |
義夫 | どういうことですか。 |
座長 | いつものことよ。向こうに行けばわかるから。もう、2時間も顔役さんが待ってんだよ。頼むよ。断らないよな。じゃあ、よろしくね。(去る) |
| |
| 座長と入れ替わりに明美、来る。 |
| |
明美 | まだなの。早くしないと、行きたくなくなっちゃうよ。 |
義夫 | 行かなくてもいいんじゃないんですか。 |
明美 | そうも行かないのよ。で、じいさん、どこで待ってるって。 |
義夫 | 二丁目の有楽ホテルです。橋の横の。 |
明美 | 義夫ちゃん、ついてこなくていいわよ。あたし一人で行けるから。今日はこれから、宴会でしょ。みんなと飲んでなよ。 |
義夫 | 頼まれましたから。 |
明美 | じゃ、終わるまで待っててくれる。 |
義夫 | 帰りはシゲさんが迎えにきてくれるそうです。 |
明美 | なあんだ、つまんない。 |
義夫 | えっ? |
明美 | あ、冗談よ。まじに受け取らないでよ。義夫ちゃんには冗談が通じないから怖いよ。 |
義夫 | はあ。 |
明美 | そんで、サチコとはどうなってんの。 |
義夫 | どうともなってませんよ。 |
明美 | サチコからいろいろ相談されてんのよ。弱ったな。 |
義夫 | 気にしないでくださいよ。 |
明美 | サチコってね、ああ見えるけど身持ちがいい、いい子なのよ。もう500万は貯金してるって言ってたしさ。 |
義夫 | 関係ありませんよ、そんなこと。 |
明美 | 一緒になろうとか、所帯もとうとか、そういうこと考えなくていいのよ。手をつないで寝てくれるだけでいいんだって。ほら、あたしたちの仕事ってはげしく身体を動かすでしょう。正直な話、一人だと身体がほてってなかなか寝つけないんだ。 |
義夫 | 僕、あの人嫌いですから。 |
明美 | 嫌いったって、何度かそういう関係なんでしょ。 |
義夫 | 明美さん、もうやめて下さい。そりゃ大人ですから、いろいろあります。実家には女房も子供もいます。でも、もうそれはいいんです。今は僕と明美さんのことを考える時じゃないんですか。 |
明美 | えっ? |
義夫 | あ、いや、その。シゲさんが心配してました。美智子ちゃんのことを応援するのはいいけど、働きすぎじゃないかって。 |
明美 | いいの。あたし、こんなに踊るのが楽しいのって、いままでなかったわ。 |
義夫 | ほんと、踊り、好きなんですね。 |
明美 | 三つのときからだからね。こう見えたって、10歳の時には早乙女バレエ団の天才少女って言われたのよ。それからジャズダンスも始めて、13歳で歌って踊れる子供スターよ、近所の商店街のイベントには必ず呼ばれてたわ。16歳でアイドル予備軍。もてもてだったのよ。そんな天才少女が、ストリップやってりゃ世話ないけどね。 |
義夫 | 東京の大きな舞台で踊りたいでしょうね。 |
明美 | シゲさんが言ってたんでしょ。もう、そんな気なんかないわよ。こないだも、東京に行って、なんとかって事務所のオーディション申し込んで来たっていうのよ。 |
義夫 | 受けてみればいいじゃありませんか。 |
明美 | 合格すると思う? |
義夫 | 思います。 |
明美 | やめてよ。悪い冗談は、あたしはもう、25よ。あたしはシゲさんがそばにいてくれるだけでいいのよ。そういうことをわかってないんだな、シゲさんは。 |
義夫 | シロウ君が、明美さんはストリップをやめた方がいいって言ってました。 |
明美 | やめて、あたしをどうしてくれるの? どうすればいいの? |
義夫 | いや、その・・・。 |
明美 | ほらね。答えられない。男の人は無責任にみんなそういうのよ。「あなただけは別だ」って。「こんなことする人間じゃない」って。女はさ、バカだから信じちゃって、身を投げ出しちゃうんだけど、だーれも受け止めてくれないのよ。怖くなって、どたん場で逃げ出しちゃうのよ。シゲさんだけなのよ、受け止めてくれるのは。 |
義夫 | はい・・・。 |
明美 | 17だったのよね、シゲさんと出会ったの。シゲさん、うちの高校の国語の先生でさ、シブかったんだ。そのくせ、とっても純情で可愛かったの。シゲさんも若かったのよねえ。 |
義夫 | もう、そろそろ行きませんか。 |
明美 | いいのよ。こういうのはじらしといた方がいいの。のんびり行こうよ。 |
| |
| 明美、寝転がる。 |
| じっと見ている義夫。 |
| |
義夫 | 肌がほんと、白いんですね。 |
明美 | 何、見てんのよ。 |
義夫 | (あわてて)あ、いえ、すみません。 |
明美 | コラ、色気づきやがって。 |
義夫 | いや、子供じゃないのに。 |
明美 | ふふっ。でさ、シゲさんの奥さんって人がいい人らしいんだよね。そうだよね、7年前に家を出て以来、文句の一つも言ってこないんだもんね。でもさ、シゲさん帰すわけにはいかないんだ。もう、あたしも一人じゃさみしい年だからね。シゲさんいなくなったら、あたし、一人っきりになっちゃうもん。 |
義夫 | 返すことないですよ。もう、絶対に。 |
明美 | そう、そうだよね。絶対だよね。 |
| |
| と、明美は義夫の太股に手をおく。義夫は驚く。 |
| |
明美 | あ、ごめん。つい、くせで。まったくもう、義夫ちゃんは疲れるよね。子供じゃないのにさ。その点、シゲさんって人はぜんぜん疲れないからいいんだ。あたしの見飽きた裸だって、客を押しのけてかぶりつきでキャッキャ喜んで見てくれるもんね。 |
義夫 | はい。 |
明美 | 客が乗ってこない時でも、シゲさんだけは一人で大騒ぎすんだから。 |
義夫 | ・・・ |
明美 | ねえ、義夫ちゃん。あさっての山形から、咲子にトリをとらせて、あたし前座に回るわ。 |
義夫 | 今夜の酔っぱらいの野次のことですか。気にすることありませんよ。 |
明美 | 客からも苦情が出て、売上が落ちてるって言うし。みぞおちまで傷のある踊り子なんて、気色悪いもんね。 |
義夫 | 照明でなんとかしますから。 |
明美 | もう無理ね。も、醜くなるばっかりね。シゲさん、いつまで優しくしてくれるのかなあ。ほら、本番やってたミミさんは、西村さんが優しいからああしてやってられんだよね。あたしもさあ、シゲさんがやさしくしてくれるなら、本番やったっていいんだけどね。ほんとよ。それとも、あたしが本番やっちまえば、シゲさんもああなってくれんのかな。 |
義夫 | ・・・ |
明美 | あたし不安なの。夏に母さんが死んでから、あたし身寄りが一人もいないもんね。シゲさんから捨てられたら、行くとこないもんね。 |
義夫 | 明美さん。オレ・・・。 |
明美 | なあに。 |
義夫 | いや、オレは明美さんをどこに送っていこうとしてるのかって思うと、情けなくなってくるんですよ。 |
明美 | 義夫ちゃん、あんた、あたしに惚れてるって言いたいわけ。あんたの惚れ方は、あと引くのよね。女を不幸にするよ。なま殺しになっている奥さんの身にもなってあげたら。 |
義夫 | しかし。 |
明美 | なあに。 |
義夫 | いや。 |
明美 | はっきり言ったらどうなの。男らしくないわね。 |
| |
| 明美、義夫の胸に飛び込み |
| |
明美 | あたし、これから見ず知らずの男に抱かれに行くんだから怖いのよ。気がたっているのよ。誰かにすがりついていたいのよ。今度呼び止められたらあたし、本気でほれられて連れて逃げてもらえるものだと思うわよ。あんたに覚悟してもらうわよ。その気で呼び止めてね。一生あんたにつきまとうわよ。その度胸がなかったら、金輪際、チョロチョロ女に気のあるふりをするもんじゃないわ。じゃ、行くから。 |
| |
| 明美、去る。取り残される義夫。シゲ、出てきて |
| |
シゲ | すごいね。まいったね。さすがだねオレの女だよ。一生つきまとってやるわよだって。オレ、聞いてて怖くって小便もらしそうだったよ。いくらなんだって、あんな女に一生つきまとわれた日にゃ気が狂っちゃうよ。 |
義夫 | シゲさん。 |
シゲ | 気にするなって。一晩寝りゃ、すぐ忘れるさ。昔はもっとすごかったけどな。しつこかったんだ。俺がトイレに座っていると、ドアがあいて立ってんだよ。「おっ、なんだなんだ」って言うと、「うん、見てるの」「おい、やめろよ」「だって愛してるもん」こうだもん。ケツの穴に体温計つっこまれたり、懐中電灯で観察されたり、そんで「だって、シゲさんのことみんな知りたいんだもん。愛してるんだもん。」って泣くんだぜ。気が狂いそうだったよ。 |
義夫 | 俺、何もしてあげれませんから。 |
シゲ | 気にすんなって。えっと、あそこか。あの部屋か。ほら、今、電気ついた。明美がカーテン開けるぞ。な、オレらがここにいること知ってるんだ。じじいは見えるか。奥にいるのか。あ、あいつ手を振ってるぞ。ふざけた野郎だよ。 |
義夫 | あ、ブラジャーはずしました。 |
シゲ | おおっ、双眼鏡出せ。 |
義夫 | はい。 |
シゲ | うわああ、いやらしいなあ。乳首が黒ずんでら、ざまあみろ。あんなアバズレ、よく抱きたいなんて思うよなあ。じじいの考えることはわかんねーな。 |
義夫 | オレの照明の腕がいいんですよ。 |
シゲ | じゃあ、今ごろびっくりしてんだろな。おお、始まったよ。色っぽいぞ。ほら、見るか。 |
義夫 | いや、いいです。 |
シゲ | お前、もったいないこと言うなよ。明美はあごがとがっているからのど元がすげえ色っぽいんだよ。おっ、あっ、そうか、そう来るか。おおお、ちっくしょう、やりやがったなあ。 |
義夫 | 何が起きてるんだあ。 |
シゲ | オレ、欲情してきたよ。窓のせいで、胸から下が見えないのによ。やっぱストリップはパンツ取りゃいいってもんじゃねーな。あいつも、ようやくそのいきに達したか。 |
義夫 | あ、じじい、出やがった。 |
シゲ | ばか、出番はもっと後なのに。ばかばかばか。 |
義夫 | じじいにオレたちが見えますかね。 |
シゲ | そんなわけねえだろ。それどころじゃないよ。 |
義夫 | 明美さん、あんなにガラスにへばりついて。あああ。 |
シゲ | 明美のやろう、なんかガラスに書いてるぞ。 |
義夫 | えっと、スキって書いてます。スキって。 |
シゲ | アイシテル。ちっくしょー、俺も書きたい。アイシテルゾー。 |
義夫 | あいしてるぞー。 |
シゲ | あ、じじいが髪の毛さわりやがった。ふざけるな。お前にそんな資格はない。 |
義夫 | そうだそうだ。髪の毛禁止。 |
シゲ | そう、それだよ明美。ケツをつきだせ。ケツしか触らせるな。 |
義夫 | そうだそうだ。じじいはケツで我慢しろ。 |
シゲ | よし、アイシテルゾー。 |
義夫 | アイシテルゾー。 |
シゲ | いいなあ俺たち。プラトニックだよなあ。ピュアだよなあ。じじいのやろう、俺たちの純情にはかなわねーだろ。な、これでお前もわかったろ。俺たちがいかに愛し合っているかが。信じているんだよ俺たちは。太いきずなで結ばれているんだよ。かっこいいなあ俺たち。 |
義夫 | かっこいいっす。 |
シゲ | この愛は、 |
義夫 | この愛は、 |
シゲ | 誰にも渡さん。 |
義夫 | そのとおり。 |
シゲ | 俺たちは、 |
義夫 | 俺たちは、 |
シゲ | 深く愛している |
義夫 | ホントの愛だあ。 |
シゲ | 明美! |
義夫 | 明美さん! |
シゲ | この愛は、 |
義夫 | この愛は、 |
二人 | 俺のものだあ。 |
| |
| 音楽「マキバオー」エンディングテーマ |
| 8人ぐらいが左右から登場し、ラインダンス。全員退場して、 |
| (以下、「ニューウェーブストリップ劇場」は、これら数本の中から1〜2本上演) |
ナレ | ニューウェーブストリップ劇場 作品25 遭難 |
| |
| 舞台に、4人の人々。吹雪の中である。 |
| |
山崎 | 隊長、だめです。猛吹雪で、一歩も進めません。 |
榊 | か、完全に、行く手を阻まれております。もう、戻ることもできません。 |
大島 | な、なんだと。我々はこの冬山の猛吹雪の中で、遭難してしまったというのか。 |
山崎 | はい。その説明的なセリフの通りでありまーす。 |
優 | どうしましょう。もう、食糧も全くありません。 |
榊 | 寒い。寒くてこごえそうだああ。 |
山崎 | しっかりしろ。体力を使うな。死んでしまうぞ。 |
榊 | しかし、さむーい。 |
大島 | 全くだ。さむーい。こごえそうだ。 |
山崎 | どんどん体温が下がっていく。このままでは全員凍死してしまう。うー寒い。 |
大島 | そうだ。こうしよう。服を脱いで、みんなの身体を寄せ合うんだ。 |
榊 | どういうことでしょう。 |
大島 | みんなハダカになるんだよ。 |
| |
| みんな優を見る。 |
| |
優 | えっ? |
山崎 | そうですね。こうなったら、そうやって身体を温めるしかありません。 |
榊 | くそー、そんなことしか方法はないのか。じゃあ、君から脱いで。 |
優 | えっ! |
山崎 | さ、脱いで脱いで。 |
優 | 私からですか。 |
大島 | ばかー。何を躊躇してるんだ。早く脱ぐんだ。命が惜しくないのか。 |
優 | で、でも。 |
山崎 | こらー。き、君は助かりたくないのか。死にたいのかー。 |
榊 | わかった。こうしよう。俺が一枚脱ぐから、君が三枚脱げ。どうだ、そのあたりで妥協してもらえんか。 |
大島 | いや、ここは公平に、ジャンケンで決めよう。な、はい、ジャンケンポン。 |
| |
| 三人、チョキ、優はパー。 |
| |
山崎 | やったー、勝ちー。 |
榊 | よっしゃー。 |
大島 | ざまあみろ。さあ、脱いで。 |
優 | じゃあ・・・(脱ぐ) |
| |
| 音楽 |
| |
ナレ | ニューウェーブストリップ劇場 作品38 マッチ売りの少女 |
| |
| 雪の降る寒い晩、一人の少女が歩いてくる。 |
| |
少女 | マッチをどうぞ。マッチを買って下さいな。あ、おじさん、マッチを、マッチを買ってくださいな。だめだわ。全然売れない。こんなことじゃ、またしかられちゃう。どうしよう。マッチを、マッチを・・・。 |
男 | (登場して)おじょーちゃん、どうしたんだい。 |
少女 | あ、おじさん、マッチを、マッチを買ってくださいな。 |
男 | マッチをかい。でも、私はライターを持ってるんだよ。 |
少女 | あ、そうなの。でも、一つぐらい、マッチを。 |
男 | あ、なんだ、そういうことか。そんなことならおやすいごようさ。じゃ、脱いで。 |
少女 | えっ? |
男 | だから、マッチを買って欲しいんだろ。うん、わかってるさ。じゃ、脱いで。 |
少女 | 脱ぐって、どういう。 |
男 | 脱ぐのは、脱ぐんだよ。裸になるんだよ。ねー、簡単なことさ。 |
少女 | でも、私はマッチを。 |
男 | うん、そうさ。マッチを一つ、下さいな。さ、脱ごうね。おじさんが手伝ってやるよ。 |
少女 | で、でも。 |
男 | いいからいいから。何もしないから。はい、腕を抜いて。そう、脱ぐのは、マッチを売るのより、簡単だよ。次は、下。(脱がされる) |
| |
| 音楽 |
| |
ナレ | ニューウェーブストリップ劇場 作品63 スパイ |
| |
| 銃を持った男女、侵入してくる。 |
| |
男 | よし、誰にも気づかれていない。 |
女 | この壁の向こうに、ヤツがいるわ。 |
男 | 問題はここからだ。 |
女 | ええ。 |
男 | おそらく、赤外線感知器がしかけられているはず。 |
女 | 間違いないわ |
男 | で、どうするか。 |
女 | そこが問題よ。 |
男 | しっ、静かに。何か動いた。 |
女 | ・・・。 |
男 | よし、急ごう。いくぞ。じゃあ、脱いで。 |
女 | えっ? |
男 | 服を脱ぐんだ。 |
女 | 脱ぐの? |
男 | そう。全部脱いで。完全に裸になるんだ。 |
女 | でも、 |
男 | 急げ。ぐずぐずするな。 |
女 | なぜ |
男 | 今、理由を説明しているヒマはない。とにかく脱いで。 |
女 | ・・・(一枚脱ぐ) |
男 | それも、脱いで。 |
女 | (脱ぐ) |
| |
| 音楽 |
| |
ナレ | ニューウェーブストリップ劇場 作品8 晩秋 |
| |
男 | (小津風)マチコさん、たかしはまだ帰らないのかい。 |
女 | (原節子風)あら、たかしさんは、ロンドンへ出張なさってますのよ。今夜は帰りませんわ。 |
男 | おや、そうかい。また旅行かい。忙しいんだねえ。たまにはマチコさんも連れてってあげればいいのに。 |
女 | 仕方ありませんわ。あの人は、仕事一筋の人ですから。 |
男 | それじゃ寂しいだろう。私もねえ、もう少しかあさんを連れて歩けばよかったなって思うんだよ。 |
女 | あら、でしたら、おとうさんが私を連れてって下さいな。 |
男 | えっ、それは |
女 | わたし、おとうさんと旅行に、行きたいなあ。 |
男 | おいおい、そんな・・・ |
女 | うふふっ・・・ |
男 | 蒸し暑いな・・・ |
女 | あら、そうですか。クーラーつけましょうか。 |
男 | いや、あれは身体によくない。脱げばいいんだから。 |
女 | じゃあ、あたしも脱ごうかな。 |
男 | えっ、そっ、そうだね。 |
女 | ほら、おとうさんも脱いで下さいな。 |
男 | うん。 |
女 | これも脱いじゃっていいかしら。 |
男 | そ、それは・・・ |
女 | 脱いじゃお。 |
男 | マチコさん! |
| |
| 音楽 |
| |
ナレ | ニューウェーブストリップ劇場 作品51 教育問題 |
| |
男1 | あのさ、君さ、真剣さが足りないんじゃないよね。 |
男2 | 全くだ。まじめに子供たちのことを考えてんの? |
女1 | あなたのそういう発想って、絶対にありえないと思うわけよ。 |
女2 | あたしは、マジメに真剣にイジメの問題と戦ってきたわ。 |
男1 | 何言ってんだよ。君の態度のどこがマジメなんだよ。ふざけてるよ。 |
女2 | ふざけてなんか、いないわ。 |
男1 | 冗談だろ。君は子供のことを少しもわかっていない。 |
男2 | 子供だけじゃない。自分自身のことも、わかってないよな。 |
女1 | もう一度、自分を見つめ直して欲しいわ。 |
男2 | そうだ、君は、彼らにモノを言う資格はない。人間として認められないんだよ。 |
女2 | ひどいわ。あんまりだわ。 |
男1 | じゃあ、脱いでもらおうか。 |
男2 | そうだね。脱いでもらわないと。 |
女1 | まあ、仕方ないって感じかな。 |
女2 | どうして? |
男1 | どうしてじゃないだろ。君は人として恥ずかしくないのか。さ、脱いで |
男2 | 脱いで |
女1 | 脱いで |
女2 | じゃあ、子供たちの未来のために |
| |
(脱ぐ) | |
| |
| 音楽 |
| |
ナレ | ニューウェーブストリップ劇場 作品97 アイを叫んで |
| |
| 女の子を、大勢が囲んでいる。 |
| |
男1 | キミは立派な人間さ |
男2 | キミはもう一人じゃない |
男3 | キミはステキだ |
女1 | キミは守られている |
女2 | キミはこれからも生きていける |
女3 | キミは私達の仲間よ |
女4 | ボクは、生きてもいいんだね。 |
男1 | そうだ。キミが必要だ |
男2 | キミはみんなと同じなんだよ |
男3 | 逃げなくてもいいんだよ。 |
女1 | 心を開いて |
女2 | 心を解放して |
女3 | もう、何も恐れることはない |
女4 | うん。ボクはみんなを愛している |
男1 | そうだ、愛している |
男2 | 愛している |
男3 | 愛している |
女1 | 愛している |
女2 | 愛している |
女3 | 愛している |
女4 | (力強く)はい。(みんな拍手) |
男1 | じゃ、服を脱いで。 |
男2と3 | 脱ぎ捨てよう |
女123 | ハダカになろう |
女4 | うん、ボク、ハダカになるよ |
全員 | シンジくん(みんな拍手) |
| |
| (脱ぐ) |
| |
| 音楽 |
| |
| みどりとマコトが残る |
| |
マコト | みどり、しばらく休んだ方がいいんじゃないのか。 |
みどり | なに言ってんの。評判いいのよ「マタニティショー」。こんなときじゃないとできないもんね。もう5カ月だから。時々動くのよ。 |
マコト | ほんと大丈夫かよ。 |
みどり | 大丈夫よ。どっちみち、あたしの踊りじゃ使ってもらえないんだし。ちょうど良かったのよ。産まれるまでいくわ。でも、さすが座長よね、うまい企画だわよ。お客さんに診察させてさ。これで臨月になったら、出産ショーって名づけて、舞台できばってみせるわ。陣痛なんて、そうそう見る機会ないから、きっといけるわ。いつ産まれるかわからないけど、いつかホントに産まれるんだから、どんどん客が増えていくはずよ。 |
マコト | だけど、座長が「みなさまのために、みどり北川、5カ月の身重にしてまいりました。」とかって言って、なんで客は素直に受け入れるんだ。医者の役よりも、赤ん坊役に希望するヤツが多いってのは、なんでなんだ。 |
みどり | いいじゃないの。人気あるんだから。 |
マコト | あいつら、お前のマタニティの中で何やってんだよ。 |
みどり | 体内回帰よ。 |
マコト | そうか。いや、そんなこと言ってる場合じゃない。もうやめろよ。もしものことがあったら、どうすんだよ。 |
みどり | なんとかなるわよ。 |
マコト | もうやめよう。俺が働くからさ。 |
みどり | 何言ってんの。あんたが働けるわけないでしょ。 |
マコト | バカ言うな。俺だって、社会人になれるんだぞ。 |
みどり | あんたね、社会人っていうのは、大変なのよ。毎朝、起きるのよ。朝、起きるのよ。 |
マコト | ばかやろー。朝だろ、起きれるよ。 |
みどり | じゃあ、いいわよ。起きたとするわ。で、満員電車に乗るのよ。できる?。 |
マコト | 満員電車って、あれだろ。満員なんだろ。こう、人と人が並んで、押し合ってんだろ。隣りの人がここにいて、こうギューって。 |
みどり | ちょっと、押さないでよ。 |
マコト | すみません。 |
みどり | どこ触ってんのよ。 |
マコト | どこも触ってませんよ。 |
みどり | 変態。 |
マコト | や、やめて下さいよ。あやまりますから。 |
みどり | やっぱり触ってたのね。 |
マコト | さわってませんよ。怒るから。 |
みどり | 怒ってないわよ。 |
マコト | もう・・・。 |
みどり | 満員電車だけじゃないわ。社会人になったら選挙もしなきゃなんないし、 |
マコト | ばか言えよ。選挙ぐらい、誰だってできるんだぞ。 |
みどり | やったことあるの。 |
マコト | あるわけねーだろ。なんで、ヒモやってて選挙しなきゃなんねーんだよ。ヒモに選ぶ権利があるわけねーだろが。与えられたものを、黙って受け入れる。なんでも受け入れる。それでいて文句を言われる。そういう歪んだ卑屈さがあるから、お前だって殴りやすいんだろ。 |
みどり | だからさ、そんなあんたに選挙ができるの。 |
マコト | 徐々に慣れるよ。 |
みどり | ご近所の人と朝合ったら、何するか知ってる? |
マコト | えっ? うまとび。 |
みどり | ばか。 |
マコト | 冗談だよ。朝だろ、こう、向こうから来るんだろ。そしたら、目をそらす。隠れる。謝る。変身する。かたつむりになる。尾行する。わかった、拍手する。 |
みどり | だめだわ。挨拶よ挨拶。 |
マコト | なんの? |
みどり | あるでしょう。おはようとか、季節の挨拶とか、そういうのが。 |
マコト | なんで? |
みどり | ご近所だもの。するでしょ普通。 |
マコト | しないよ。するかなあ。しないよ。いや・・・しないよ。 |
みどり | するのよ。 |
マコト | お前、いろいろ知ってるのな。よし、田舎行こう。親父に紹介するから。 |
みどり | いやよ。 |
マコト | いやよじゃないよ。逃げるなよ。なんでこの話になると逃げんだよ。 |
| |
| 義夫、登場して |
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義夫 | マコト、幕間の新しいコントのネタ合わせやるってよ。 |
マコト | あ、義夫さん、聞いてくださいよ。みどりが一緒に田舎に行ってくれないんです。 |
義夫 | だけど、式はあげるんだろ。 |
マコト | あげますよ。一応、来年の春ぐらいに予定してます。 |
義夫 | だったら、なんで行けないんだ。 |
みどり | あたし、行けませんよ。 |
義夫 | なんで。 |
みどり | だって、マコトんちって、すごく立派なんですよ。備前の殿様だったとかで。あたし不安なんですよ。こないだ家老が訪ねてきて、マコトのこと若様若様って呼んでんの。父君が、とか、奥方様が、とか、お家の一大事とか、いまどき使いませんよ。 |
マコト | 若様なんて昔のことだよ。今なんか観光用のばか様って呼ばれてるよ。いざとなったら、じいが、三左衛門がなんとかしてくれるよ。 |
義夫 | お前んち、ホントすごいな。 |
マコト | な、みどり。ちゃんと紹介するからさ。心配しなくていいよ。こわがることないんだ。オレはお前を必要としている。それが人間として一番大事なことなんだよ。ちゃんと満員電車に乗ってみせるよ。怒られたって、お前が殺されるわけじゃないんだから。半殺しに合ったって、ちゃんと会社にたどりついてみせる。爪はがされたって、耳そがれたって、通勤してやるよ。近所の人への挨拶だって、覚悟はできてるから平気だって。いざとなったら服だって脱ぐし、なんだったら指だって詰める。それぐらいのことで俺らの愛を阻むことはできないよ。俺がおまえを愛しく思い、おまえが俺を愛してくれていること、それが人間として一番大事なことなんだよ。田舎、一緒に行ってくれるよな。 |
みどり | ・・・。 |
マコト | 心配するなって。俺とお前は一緒のお墓に入るんだよ。義夫さん、俺ら、ラマーズ法で子供産むんですよ。分娩室にずっと俺もつきそってて、スーハースーハーやるんです。手を握っててやって、スーハースーハーやるんです。へその緒は俺が切るんです。俺たちの子供ですもんね。腹ん中にいるときから、いろいろ苦労かけた子ですから、ちゃんと見届けてやらなくっちゃ。 |
義夫 | みどり、お前、マコトの言う通りにしろ。 |
マコト | やだなあ。俺の言う通りになんかしたら、とんでもないことになっちゃいますよ。みどりなりの考えってのはあるんです。ただ、結婚だけは、ちゃんとしてやろうって思ってるんです。オレ、今までシゲさんにさからったことありませんけど、シゲさん間違ってますよ。女ってのは、大きなあったかい手で抱きとめてやらなきゃいけないと思うんです。あんな、明美さんに本番をやらせるようになっちゃいけないと思うんです。いえ、本番はいいんです。でも、その分、ちゃんと抱きとめてやらないと。ね、みどりの指を見てくださいよ。婚約指輪なんです。あげたんですよ。必要なんですよね、こういうことが。じゃ、俺、ネタ合わせに行ってきますから。(去る) |
みどり | 嬉しいんだけどね。義夫さんは、奥さんや明美さんのこと、どうするんですか。 |
義夫 | 俺のことはいいよ。それより、ちゃんと結婚するんだから、ちゃんと幸せになれよ。 |
みどり | でも、行けないよ、田舎は。 |
義夫 | マコトは松山には住めないんだよ。 |
みどり | えっ |
義夫 | あいつ、中学の時、線路に石を並べて列車を転覆させたことがあるんだよ。4人ぐらい死んだって行ってたかな。 |
みどり | ほんとですか。 |
義夫 | 覚えてねえかな。今から十年ぐらい前、新聞にでっかく載ったろ。 |
みどり | はあ。 |
義夫 | ここにいた方がいいんだけどな。 |
みどり | はあ。 |
義夫 | ま、頑張って幸せになれよな。って、俺が偉そうなこと言えないんだけどさ。でも、きついよなあ。結婚、とかって、みんなへの影響が大きいよな。ケンと咲子も、サブとノリコも、みんな動揺してたよ。 |
みどり | 明美さんもそうだけど、サチコのことも考えてやってよ。 |
義夫 | あいつは勝手に騒いでるだけ。関係ないよ。 |
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| サチコ、登場して |
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みどり | あ、サチコ |
サチコ | みどりさん、マコトさんが呼んでたよ。 |
みどり | そう。(去る) |
義夫 | 俺も行こう。 |
サチコ | 待って下さい。 |
義夫 | なんだよ。いそがしいんだよ。 |
サチコ | ごめんなさい。 |
義夫 | じゃあな。 |
サチコ | あの、奥さんから電話がありました。お父さんが病気だそうです。 |
義夫 | あ、そう。でも、別にいいんだよ。 |
サチコ | 心配じゃないですか。 |
義夫 | 心配だよ。でも、あの親父は死なないから。 |
サチコ | 奥さんって、やさしそうな方ですね。 |
義夫 | 関係ないだろ。 |
サチコ | ごめんなさい。 |
義夫 | 他に用事はないのか。 |
サチコ | 明美さんが、具合い悪そうですよ。 |
義夫 | そりゃそうだろ。あんなに本番やってりゃ、誰だって身体壊すよ。心配なら、お前らが止めてやれよ。なんで誰も止めないんだよ。あんなことやってたら、病気になっちまうのあたりまえだろ。 |
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| 明美、登場。 |
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明美 | あ、義夫ちゃん、いたのね。見て見て、美智子ちゃんから手紙よ。ね、見て見て、きれいな字でしょう。上品な文章なのよ。この子、ほんと頭いいわ。 |
義夫 | きれいな字ですね。シゲさん喜んでたでしょ。 |
明美 | 見てくれないのよ。俺に近寄るな、とか言っちゃって。 |
義夫 | 照れてるんですよ。 |
明美 | もういいのよ。それよりも、頑張って稼いで、いっぱい仕送りしないとね。いい照明あててよね。 |
| |
| サチコ、去る |
| |
義夫 | 今日はなんか、体調いいみたいですね。昼の部、照明ののりが良かったですよ。 |
明美 | 久しぶりの大きな舞台ですもの。やっぱ、東北の田舎の本番しかない客とは違うはね。横須賀なりの、踊りを見つめる視線が痛いのよ。 |
義夫 | 良かったですね。 |
明美 | (突然、義夫の肩に手を回し)ねえ義夫ちゃん、楽屋でうわさなんだけど、あんたとあたし、できてるんだって。ねえ、どうなってるの。 |
義夫 | あっ、すみません。 |
明美 | 義夫ちゃん、そんなに奥さんと別れたかったわけ。ちっとも知らなかったわよ。これからも、あたしでよかったらいつでも言ってよ。慰謝料とかなんとか言ってきたら、あたしも少しは出してあげるからね。なにせ、あたしのために義夫ちゃん、家を出たんだもんね。くっくっく。 |
義夫 | いえ、いいですよ。 |
明美 | そんなにひどい奥さんだったの。写真かなにかない。こうなったらあたしも負けられないから研究しとかなきゃ。あたし、着物でもいい線いくからね。 |
義夫 | いいですって。別に明美さん関係ないですから。 |
明美 | 何言ってんの。関係なくないわよ。みんなから冷やかされて楽屋にいれないんだから。あたし明日から調光室で着替えさせてもらうからね。 |
義夫 | えっ、そんな。 |
明美 | 嘘よ。だらしないんだから。・・・あたしにキスしてもいいよ。 |
義夫 | えっ? |
明美 | あっ、いや、なんだかあたし嬉しくなっちゃって。義夫ちゃんって、ただのぶっきらぼうな人だと思ってた。ちょっと、キスしない、したいんだ、ね、しよう、あはは。 |
義夫 | ・・・ |
明美 | だってさ、あたしとあんた、できてるってことになってんだから、奥さんから証拠見せてって言われたら、キスぐらいできなきゃしょうがないでしょ。 |
義夫 | 大丈夫です。そんな女じゃありませんから。 |
明美 | そんな言い方ないじゃない。それじゃあたしがバカみたいじゃないの。 |
義夫 | いや、そういう意味で言ったんじゃなくて |
明美 | だったらキスして、はやくう(目をつぶり迫る) |
義夫 | ・・・・(うつむいてしまい)正月は、どこへ行ってたんですか。 |
明美 | ああ。東京でオーディション。シゲさんが受けてみろって。 |
義夫 | で、どうだったんですか。 |
明美 | 落ちた。 |
義夫 | そうですか。シゲさん、なんか言ってましたか。 |
明美 | また受けろって。でも、もういいの。若い子って、足が長くていい身体してるの。もうこれでふっきれたから、ガンガン踊ってお客さん入れるわ。いいあかりちょうだいね。 |
義夫 | はい。 |
明美 | よおし、ぼちぼち身体動かしておくかな。 |
| |
| と、エッチな姿勢をとる。義夫、うしろを向いてしまう。 |
| 明美、ゆっくり近づいていき、抱きつく。その瞬間、どやどやと人々が。 |
| みんな半裸状態とか、わけのわからない状態である。 |
| レポーター(中野)とディレクター(森) |
| |
中野 | ようやく見つけました。森岡咲子さんはこのストリップ小屋にいるのです。 |
森 | すみません。森岡咲子さんは、どなたですか。 |
ヒモたち | なんだなんだ。テレビカメラだよ。パンツはかなきゃ。 |
中野 | (明美に)あなたが咲子さんですか。 |
明美 | 違います。 |
中野 | 森岡咲子さんはどなたですか。 |
義夫 | えっと、こいつです。 |
咲子 | なんか用ですか。 |
中野 | 旦那さんが探してます。子供達も泣いているんですよ。カメラに向かってひとことお願いします。 |
咲子 | あんた、みっともないことしないでよ。 |
森 | えっと、山田健作さんは、どちらでしょう。 |
シゲ | おい、ケン、ケン。 |
ケン | えっ、なんか用? |
中野 | この人ですね。咲子さんを奪って逃げたのは。 |
ケン | なに、俺、そうなの? |
中野 | 旦那さんに申し訳ないとは思わないのですか。 |
ケン | すみません。 |
森 | じゃあ、咲子さんと山田さん、スタジオへ行きましょう。 |
中野 | いまから、そちらに向かいます。さて、どうなるでしょうか。 |
| |
| 中野、森、咲子、ケン、退場。 |
| |
シゲ | なんだよあれ。 |
マコト | ケンが奪ったとか言ってたけど、咲子がひっかけたんだろ。 |
明美 | ケンもなんであやまっちゃうんだろ。 |
サブ | すみません。習慣なんです。 |
シゲ | まったくしょうがねえなあ。 |
| |
| と、森たちが戻ってくる。 |
| |
森 | あのー、すみません。よろしいでしょうか。 |
咲子 | なんか、今の照明が暗かったんで、もう一度撮り直してくれっていうの。 |
シゲ | えっ、 |
座長 | またやるの。 |
森 | すみません。 |
中野 | お願いします。 |
明美 | いいんじゃない。シゲさん、あたしのシャネルのコートとって |
シゲ | え、どこだったか。 |
明美 | しっかりしてよ。何年ヒモやってんのよ。 |
咲子 | ちょっとケンちゃん、あたしのケンゾー、どうしたかな。 |
みどり | マコト、なんでもいいからてきとーにみつくろって |
ノリコ | サブ、フェラガモの赤持ってきてよ。ビトンもね。 |
| |
| ヒモたち、退場する。 |
| |
森 | あの・・・さっきと同じに・・・ |
明美 | だいじょうぶよ。大騒ぎすりゃいいんでしょ。やるわよ。ねえ。 |
咲子 | そうよ。あたしたちは、毎日舞台に立ってるのよ。シロートじゃないんだから。 |
みどり | ただ、ちょっと普段着を着させて欲しいのよ。 |
ノリコ | 寝まきだし。 |
森 | でも、この格好の方が、いいんで。お願いします。 |
咲子 | そうなの。しょうがないわね。ちょっと、みんな、戻ってきて。 |
| |
| 戻る。 |
| |
中野 | じゃあ、もう一度。みなさん、いましたいました。森岡咲子さんは、このストリップ小屋にいました。 |
| |
| 誰も動かない。 |
| |
咲子 | あなたたちは、いったい、どちらさまでしょうか。 |
明美 | あたいたちに、いったい、なんの用があるってんだい。 |
シゲ | おいおい、てめーら、誰に断って、この場所に入りやがったんでぃ。 |
座長 | 断りも無く、そうそう入りこまれちゃ、俺っちの立場がねえぜえ。 |
サブ | おうおうおう、俺たちゃなあ、ちょいとスネに傷持つみさ。 |
マコト | そうでい。この子達に、指一本、触れさせやしねいぜい。 |
みどり | あんた、かっこいいよ。 |
マコト | おう、ありがとよ。 |
咲子 | さあ、堅気の方々よ、いったいあたいに、何の用があんのさ。 |
中野 | あの、森岡咲子さんはどなたでしょう。 |
咲子 | (前に出て)あたしのことよ。 |
ケン | かあちゃん、かっこいい。 |
中野 | あの、山田健作さんは、どちらでしょう。 |
ケン | あ、僕です。こんにちは。ピース。 |
中野 | あの、あなた、森岡さんの旦那さまに申し訳ないとは思わないのですか。 |
ケン | あ、はい。やはり、人間として、僕は間違った行為をしてしまったと。 |
咲子 | いいえ、私がいけないんです。私が。うちの人を責めないで下さい。 |
ケン | 咲子、お前、自分を責めちゃいけないよ。俺が悪いんだよ。 |
明美 | そうよ。悪いのは男の方よ。ケン、あやまんなさい。 |
シゲ | ちょっとまちねい。咲子だって、悪いとこはあったんだよ。 |
咲子 | そうよ。私が私が・・・ |
明美 | さきちゃん、ないちゃだめよ。 |
ノリコ | 頑張るのよ。 |
サチコ | しっかり。 |
明美 | ケン、なんとかしなさい。 |
シゲ | ばかー(明美を殴るふり、明美倒れる)。男と女の問題に、廻りが首をつっこむもんじゃあないよ。 |
マコト | そうさ。二人の問題だ。 |
義夫 | 当事者同志、よく話し合って解決しな。 |
支配人 | いやいやいや、それは難しいんでないかい。誰かがアドバイスをしてやんないとなあ。 |
マコト | 支配人、なんか考えあるんですか。 |
支配人 | 俺かあ・・・、よし、考えとくわ。 |
座長 | よし、ここは俺にまかせてくれ。テレビ局の方々、事情はそうゆうわけなんで、ここは一つ、一座の座長である俺が丸く納めるしかねえだろ。で、一つ提案があるんだが、この二人をスタジオに連れてってくんねい。なーに、心配いらねえってことよ。そりゃあ確かに、売れっ子ダンサーである咲子嬢がステージに穴を空けることはとっても痛い。がしかし、人の幸せがかかってるんだ。みんな頑張って、咲子の分までいいステージを見せてくれるさ。なあ、みんなー。(しーん) |
森 | お疲れさまでしたー。 |
咲子 | あれ、もういいの。 |
中野 | お疲れさまでしたー。 |
明美 | はい、お疲れー |
シゲ | ごくろうさん。 |
マコト | これ、いつ放送ですか。明日、 |
サブ | おい明日だってよ。ちゃんと映ってるかな。 |
| |
| とか言いながら、みんな退場。 |
| 去ろうとするシゲを、明美が引き留める |
| それに気づき、義夫も立ち止まる |
| |
シゲ | 最近どうだ。元気そうじゃないか。 |
明美 | うん、そうでもないけど。 |
シゲ | 義夫、こっち来な。お前ら見てると、じれったくて仕方ないよ。明美ももういい年なんだから、ちゃんと自分のことは自分でしろよ。 |
明美 | あたしはいつだって、一人でちゃんとしてたよ。 |
シゲ | 俺に面倒かけるなってことよ。義夫に優しくしてもらえよ。 |
明美 | 義夫ちゃんは優しいよ。でも・・・。 |
義夫 | あの、俺、何もできませんから。 |
シゲ | なにを言ってるんだよ。お前ら、この後に及んで、何を言ってるんだよ。男と女だろ。お互いにくからず思っているんだろ、こんちきしょー。しまいにゃ仏のシゲさんも、怒るよ。明美、お前、その態度、直せ。甘えろ。一人で頑張るな。女は弱さが武器なの。 |
明美 | だって、 |
シゲ | だってじゃない。お前はいい女だよ。俺が保証するから。そりゃあお前は俺に惚れている。オレはいい男だから。だけど、俺とじゃ幸せになんかなれねーんだよ。だってそうだろ。オレはほら、一人の女を幸せにする、そういうタイプじゃないからさ。仏のシゲさんは、幸せな二人を見守るからこそ |
明美 | あたしは、シゲさんと |
シゲ | ばかばかばか。もう、ダメだ。お前はダメだこの正直者。よし、じゃあ、聞くぞ。お前、なんで美智子なんだよ。 |
明美 | だって。 |
シゲ | お前、美智子はないだろ。あれは俺の娘だよ。なんでそんなに入れ込むのよ。俺が捨てて来た娘なんだよ。それを、なんであんなにかわいがるんだよ。そりゃないだろ。 |
明美 | ごめん。 |
シゲ | ごめんじゃないだろ。お前さ、俺がどんな気持ちでいるかわかってんだろ。もう、美智子の名前が廻りでちょろちょろしてるだけで、俺、だめよ。落ち着けないのよ。いたたまれないのよ。わかってんだろ。 |
明美 | ごめんね。でも、あたしも、我慢できないの。美智子ちゃんのこと、ほっとけないのよ。何かしてあげたいのよ。だって、美智子ちゃん、あたしの夢なんだもの。 |
シゲ | お前さ、子供じゃないんだから、そんな夢とか言ってないで、自分の幸せを考えろよ。すぐそばに、手に届く幸せがあるんだから、それに手を伸ばせよ。 |
明美 | 美智子ちゃんの夢が私の幸せだから。 |
シゲ | 何を言ってんだよ。義夫、この馬鹿、なんとかしてよ。ダメか、ダメだろなあ。こんなやつほっといて、もっといい子探すか。 |
義夫 | シゲさん、明美さんのこと、わかってあげて下さい。明美さんは |
シゲ | なにがだよ。わかってあげて下さいだと。お前にそんなこと言われる筋合いはねえんだよ。あのさ、明美は支配人に、ストリップやめろって言われてんだよ。一緒に踊ってる子が迷惑するからって、言われてんだよ。 |
義夫 | おなかの傷のことですよね。バカどもはおっぱいが大きけりゃいいと思ってんですからね。でっかいのがプルンプルンしてりゃ喜んでんですから。そんなやつらが、傷がどうのって言ってんの、聞くことありませんよ。ストリップだからって、脱ぎゃいいってもんじゃないんですよ。裸じゃないんですよ。踊りなんですよ。 |
シゲ | あれのどこが踊りなんだよ。マナ板ショーで、本番やりまくってんのの、どこが踊りなんだよ。そんなに金が欲しいのか。 |
義夫 | 金じゃないですよ。夢ですから。 |
明美 | あたし、あれしかできないから。 |
シゲ | まったく、お前ら、どうしようもねえな。これで、美智子がニューヨークで遊んでいたら、最低だろな。遊んでんだろなあ、俺の娘だから。母親に似てるから。 |
義夫 | 美智子ちゃんは、明美さんがこうして踊っている限り、大丈夫ですよ。 |
明美 | あたしの踊りがさ、あの子を支えてんの。 |
シゲ | お前の踊りがか?本番やりすぎで、ふらふらじゃねーか。義夫、最近明かりに工夫がねえぞ。 |
明美 | 義夫ちゃんでも、おなかの傷、隠しきれないんだ。 |
シゲ | そりゃ怠けてんだよ。 |
明美 | でもさ、どっかの温泉街にでも行きゃ、やっていけるもの。それがダメでも、ゲテモノストリップとかで、なんとかなるもの。あたし、平気だもの。 |
シゲ | うそつけ。もっと踊りにこだわれよ。プライド持てよ。一条明美一座にこだわれよ。義夫、なんとか言ってみろ。 |
義夫 | 明美さんの踊りは、本物です。 |
シゲ | そうなんだよ。だから、そういうことを、ちゃんと話し合えよ。二人でさ。 |
| |
| シゲ、去る |
| |
明美 | あたしの踊り、本物かなあ。まだ、そう言えるのかなあ。誰も見てくれないのよ。野次ばっかりでさあ。 |
義夫 | あんな田舎もの、気にしなくていいですよ。 |
明美 | よくないわよ。座長も、劇場の支配人との板挟みで大変なのよ。こんなでっかい傷があっちゃねえ。一条明美一座の看板、もうダメかなあ。 |
義夫 | そんなことないですよ。支配人は、「よし、考えとくわ」って言ってましたもの。 |
明美 | あたしはさ、一条明美一座の名前にはこだわらないのよ。でも、踊っていたいんだ。どんな場末の小屋でもいいの。踊っていたいんだ。そんで、美智子ちゃんに仕送りしてあげるんだ。 |
義夫 | どんなとこに行ったって、やっていけますよ。俺が、俺が保障しますから。 |
明美 | それってさあ、あたしの面倒を見てくれるってことだよね。あたしさあ、今、ほんと危ないんだから、もう、決めちゃうよ。 |
義夫 | ・・・。 |
明美 | あんた、覚悟あるの。 |
義夫 | あります。 |
明美 | ほんとかなあ。 |
義夫 | 頑張ります。 |
明美 | そしたらさあ、なんか、言うことあるでしょ。普通、あるでしょ。こういう時に、言う決めの言葉がさ。 |
義夫 | えっと・・・よろしくお願いします。ふつつかですが、よろしくお願いします。 |
明美 | 違ってない? |
義夫 | 夜はおまかせ。 |
明美 | あのさ、あたしは本番でもゲテモノでも、なんでもやって稼いでやるから、心配しなくていいのよ。だから、あたしを捨てないでよ。あたし、もう一人になれないんだから。 |
義夫 | 惚れてます。 |
明美 | ありがと。でも、あたしは惚れないからね。もう、惚れないからね。だけどさ、もしダメになったら、あたしは街に立ってでもあんたを食わせていくからね。あんた、恥ずかしくないヒモになってよね。これからは生理のナプキンも取り替えてもらうから。腹すえて、あたしを捨てないでね。あたし、もうぜったい、一人になりたくないんだ。 |
義夫 | ヒモです。 |
明美 | わかってんのかなあ。 |
義夫 | わかってるよ。オレはさ、女房も子供も捨ててるから。女房はさ、学習院出のお嬢様で、俺も、父親も兄貴も裁判官っていう一家に育ってて、そんで、なんとなく就職して、なんとなく見合いして、なんとなく司法試験の勉強始めて。いま、思うと、あれってなんだったんだろうって思う。みどりが川崎のソープにいるらしいけど、マコトはマコトなりに頑張ってるんだよね。俺、マコト好きだよ。俺にはシゲさんの生き方はできないかもしれない。けど、俺、ほんと、明美さんのこと好きだから、明美さんの身体も踊りもみーんな好きだから。一緒にいさせて下さい。 |
明美 | おなかの傷がさ、胸のとこまで上がってきちゃってんの。気持ち悪いの。 |
義夫 | 平気だよ。おれ、ぜんぜん平気。 |
明美 | そんで、最近はそれがたるんで、しわしわになってんの。年なのよねえ。 |
支配人 | (登場して)そのしわしわ、なんとかならんか。 |
義夫 | 支配人。あの、 |
支配人 | 義夫は黙ってろ。あのさ、最近、身体の具合い、おかしくないか。 |
明美 | 平気よ。元気ですよ。 |
支配人 | そうなのか。なんか、最近、疲れやすいとか言ってなかったか。 |
| |
| 義夫、去る。 |
| |
明美 | そんなことないですよ。元気に踊ってますよ。ちゃんと見てくださいよ。マナ板ショーも人気あるみたいじゃないですか。 |
支配人 | あんなもん、誰がやったって客は喜ぶんだよ。 |
明美 | だったらいいじゃないですか。うちの一座はずっと本番やってなかったんですから。今は評判になって、もうかってるんでしょ。あたしも稼がないとならないんで。 |
支配人 | 本番なんか、やりたくないんだよ。だけど、最近のあんたの踊り、客が引いてるんだよ。知ってるよね。昔はもっと動きがシャープだったろ。なんか、だらだらしてないか。まあ、それはそれで評判だからいい。俺も、まあ、あんなもんだと思ってる。あんたには世話になったし、うちの劇場がここまで伸びたのは、あんたのおかげだから。あんたが本番やるって言えば、オレは認めるしかないし。でも、オレはあんたの踊りが好きだったんだよ。あんたが安室二世って言われて、ほんとかっこよかったもんな。ずいぶんファンレター出したっけ。覚えてるかな、あんたがコムロから離れて、三人でグループ作ってライブやったじゃない。客が15人ぐらいしかいなくて、広いフロアががらがらで、DJとかもやる気なくて。グループの二人が動揺して、うわの空だったのに、あんただけ落ち着いててさ、すごくテンション高くてさ、ほんとかっこよかったよ。俺、あんとき、あんたと一緒に仕事がしたいって思ったんだ。まさか、こんな仕事になるとは思わなかったけど、でも、俺としてはとっても満足してんだよ。でもさ、もう限界じゃないの。みんながなんて言ってっか知ってんの。安室二世じゃなくて、ニセアムロじゃねーかって |
明美 | そんなに踊りがダメかな。そうか、最近、ちょっとたるんでたからな。よし、わかった。基礎からトレーニングする。体力なくなってんだよね。やっぱ女は25過ぎると、体力維持するのに、何もしないでいるわけにはいかないってことだよね。そういうことなら、早く言ってよね。あたし、あんまり客の評判とか気にしないから。踊ってる時は、どうしても没頭しちゃうんだ。ごめんごめん。 |
支配人 | ごめんじゃねーんだよ。踊りのことを言ってんじゃないんだよ。あのさ、あんた本番のとき、(小声で)コンドームをさ・・・ |
明美 | 平気よ。お客さんも喜ぶし |
支配人 | 大事なお客さんに変な病気移されちゃ困るんだよ。出てってくれないか。 |
明美 | 嫌よ。 |
支配人 | うん。もういいよ。でもさ、もう少し、自分の身体のこと大切にしな。 |
明美 | わかってるって。 |
支配人 | 昔、「セーラー服色情飼育」ってポルノ映画でデビューした18歳のオンナがいた。薄暗いスクリーンの中でうごめくアイツにオレは感動した。いい映画だったよ。その後、アイツはアイドルになって、つまんねえバラエティとか、ドラマに出てた。悲しい表情の芝居ばっかりうまくなっていったっけ・・・。1997年5月9日、アイツは自殺した。オレのオンナだったんだよ。あんたには幸せになってもらわないと。義夫は、いいやつだよ。マジメだしさ。 |
明美 | わかってるって。あいつは、シゲさんと違ってさ、ほんとマジメよねえ。そこがちょっと問題でさ、あたしみたいなボロクズでいいのかなって。 |
支配人 | あんたはボロクズじゃないよ。いい女だよ。シゲさんがいつも言ってるじゃない。気持ちの優しい、いい女だって。あんたに幸せになってもらわないと。 |
明美 | あたしは幸せよ。いい男たちに囲まれてさ、毎日楽しいもん。 |
支配人 | うん。あんたの笑顔がさ、消えないことを祈ってるよ。義夫、出てこい。 |
| |
| 義夫、出てくる。 |
| |
明美 | 義夫ちゃん、なんだ、いたのか。 |
義夫 | うん。 |
支配人 | なんとか、しろよな。(去る) |
義夫 | ・・・・ |
明美 | あ、美智子ちゃんからエアメールがきてたよ。いよいよオーディションがあるんだって。向こうのレコード会社のよ。すごいなあ。シゲさんも喜ぶだろうなあ。あたしもさあ、どうせ踊れなくなるんだったら、あん時、産んでおけばよかった。女の子だったんだって。あたし、踊り教えてあげれたのに。 |
義夫 | いつか美智子ちゃんも日本に戻ってくるから。楽しみだね。 |
明美 | あたしに会いにきてくれるかなあ。くれるよね。一緒に踊ってくれるかなあ。 |
義夫 | だいじょうぶですよ。 |
明美 | でもあと2年は帰ってこないんだ。それまで頑張って、いっぱい稼いで、元気に踊ってないとね。あんた、立派なヒモになってもらうよ。やることはたくさんあるんだからね。あたしの傷口にキスしてくれるよね。傷が消えるようにって願いながら、キスしてくれるよね。 |
義夫 | たばこ、吸うか。 |
明美 | あんたも吸いな。 |
義夫 | オレはいいよ。オレはヒモだから、こんな長いタバコはもう吸わないんだ。バチがあたるからさ。オレはシケモクでいいんだ。いじけてシケモク吸うんだ。この快感がさ、ヒモの生きる道だもんね。いじらしいだろ。俺に惚れろよな。 |
明美 | 惚れてるよ。 |
義夫 | よし。なんでもやってやるからな。 |
明美 | いっぱいやってもらうからね。あたしが眠る時は、あたしのおっぱいをこうやって、ゆっくりもみながら、大きく大きく大きくなあれ、って言うのよ。あたしが眠るまでずっとやるのよ。シゲさんはそうやってくれたんだから。あたし、そうじゃないと眠れないんだからね。 |
義夫 | わかったよ。 |
明美 | 灰皿とってくれる |
義夫 | これでいいよ(と、手を出す)。うっ(熱さに耐える)。せめて、こんなヒモの手を灰皿がわりに使って下さいよ。 |
明美 | だいじょうぶなの。 |
義夫 | なあに、大丈夫。こういうのがヒモの喜びなの。快感なの。 |
明美 | 快感なのか。そのわりに、つらそうな顔してるぞ。 |
義夫 | あ、楽しい。気持ちいい。前向きです。もっとやって。 |
明美 | よし。それでいい。 |
義夫 | この手相見てよ。生命線なんか消えてるよ。だけど、お前と一生離れられないって運命線だけが、くっきりと出てるよ。見ろよ。喜べよ。 |
明美 | 嬉しいよ。薬とってくる。 |
義夫 | いらないよ。薬なんか取りに行くと、ヒモは逃げ出しちゃうの。女に薬とかつけていただいちゃったら、ヒモの立場はないんだよ。 |
明美 | うん。なんか、どんどん好きになってくな。あんた、こんな人だったの。 |
義夫 | 俺も自分でも驚くんだけど、根っからのヒモだったんじゃないのか。ヒモ体質なのかもな。なんか、自信出てきたかんじ。さあ、ナニしてさしあげましょう。 |
明美 | あたしさ、本番のやりすぎで、身体ボロボロなのよ。支配人がさ、大切なお客さんに変な病気移されちゃ困るから、出てってくれ言われてんの。でも、どこででもやっていけるよね。 |
義夫 | こんな一座、もうやめよう。マコトもさ、みどり連れて出てったよ。働くってさ。でも、オレは働かないよ。だって、美智子ちゃんに送る金は、お前が稼ぐんだろ。俺が働いたら、お前、働けないもんな。ヒモが働いたら、お前、働けないもんな。 |
明美 | 当然よ。あんたの仕事は、あたしのそばにいて、あたしの言うことをぜーんぶやってくれることよ。 |
義夫 | かしこまりました。なんでも言って下さい。 |
明美 | ああ、あんた、好きよ。あんた、絶対に捨てないでね。あたしも、なんでもするからさ。もう、やだからね。あんたと別れたら、生きていけないでしょ。もう、年だからさ、生きていけないでしょ。本番やってるとさ、踊り子さん達に嫌われるんだから。踊って稼いでいる子から見ると、あたしなんかムシケラみたいなもんに見えるから。でもさ、そうやって稼いで、あんたを食わしていくのだって、そんなに変わんないと思うんだよ。 |
義夫 | うん。お前の方がずっと上だよ。 |
明美 | ありがと。なんか、歌いたくなったな。ううん、あんたなんか歌ってよ。 |
義夫 | うん。なに歌おうかな。 |
明美 | なんでもいいよ。 |
義夫 | うん。(歌う) |
明美 | じょうずだね、あんた。ちくしょー、惚れちまいそうだ。せっかくあたしが身体売って稼いでいるのに、てめーは競馬とか、パチンコとかばっかりに使いやがってよ。このロクでなし。あたしが稼がなかったら、あんたはのたれ死にだよ。あたしがいなかったら、まともに生きていけないろくでなしじゃないか。このクズ野郎。昔は働いていたことがあるって。もう、二度と働けやしないよ。だって、あたしのヒモになったんだもの。あたしのものになったんだもの。ちゃんと気合いいれて腰を動かせ。あたしは毎日毎日昼夜5ステージもこなしてくたくたなんだから、マグロって言われようが、動かないよ。ちゃんと気合いいれてやってよ。そんなんじゃ感じないよ。舞台のとあんたとのでは全然違うんだからね。あんたとなら感じれるんだから、ちゃんとふんばってよ。そう、そうよ、気持ちいいよ。あんたは最高よ。あんたじゃなきゃ、あたしは燃えないのよ。あんた、好きだよ。ちぇ、惚れてるなあ。もう、二度と惚れないと決めてたのに。男になんか、二度と惚れないって決めてたのに。あんた優しいから。ちくしょー、早く美智子ちゃんに会いたいなあ。美智子ちゃん、元気かなあ。 |
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| 救急車のサイレンが重なる。明美、男達に連れられて退場。 |
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義夫 | ちょっと社長、遊んでいかない。いい子いるよ。知ってるかな。昔アイドルやってた子。ウソじゃないよ。安室二世って言われたんだよ。ずいぶん昔だけどさ。でも、いい身体してるんだ。ダンスだよダンス、踊りで鍛えた身体だよ。肌が真っ白でさ、綺麗なんだよ。試してみてよ。安くしとくからさ。サービスサービス。も、すんごいサービスしちゃうよ。腰が強いんだ。手足が強いんだ。どんなことだってできるよ。驚くよ。ワザ持ってるから。遊んでってよ。奥さんとじゃ、絶対知らなかった世界が広がるよ。も、すんごいの。うっかりすると愛じゃないかって思っちゃうよ。愛なんだよ。愛、感じるって。絶対。保障つき。愛してみてよ。感じてよ。なんだ、だめかな。そっちの社長は、どう。サービスサービス。 |
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| マコト、登場して |
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マコト | 義夫さん、明美さんが、 |
義夫 | なんだマコト、こんなとこで。どうしたんだ。明美なら中にいたろ。 |
マコト | いま、救急車で運ばれた。どうしてあんなになるまで。 |
義夫 | なんだよ。いいだろ。ちょっと身体の線は崩れたかもしれないけど、まだまだ |
マコト | あれって梅毒だろ。それも、かなり進行してた。 |
義夫 | 大丈夫だよ。客なんか、そんなの気付かないから。 |
マコト | それは、梅毒が最近いないからで |
義夫 | うまくやってるから、明美はテクニックがあるから |
マコト | 病院に行けばはっきりするし、もう出られないよ。 |
義夫 | そうか。そうだよな・・・助かるよ。 |
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| シゲ、登場し |
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シゲ | 義夫、明美は。 |
義夫 | シゲさん、やだな。こんなとこ来るなんて。来ないでよ。 |
シゲ | 悪いな。美智子が明美に会いたいって言ってんだ。 |
義夫 | 美智子ちゃん来てんだ。大ヒット、おめでとう。 |
シゲ | 俺に言うなよ。俺とは関係ねーんだから。で、明美は。 |
マコト | 病院に。川崎中央病院。行きましょう。 |
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| マコト、シゲ、退場。 |
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義夫 | なんだよ。明美はすぐに戻ってくるって。そんな病院のベットに一人で寝てられねえんだから。俺がいなけりゃ寝られねーんだから。俺がおっぱいもんでやんなきゃ、寝られねーんだから。大きく大きく大きくなあれ。大きく大きく大きくなあれ。ストリッパーってのは、オッパイが大きくないとダメね。でないと自然、後ろに下げられちゃう。ライトだってあててもらえないんだ。あてられたって自然あとずさりしちゃうしね。でもオッパイに芯があるの、21歳頃までね。25過ぎるとこうもんでて何かの拍子であくびして落としたら、とぐろ巻いてるのね、ははは。これ形を整えるの大変だよ。「大きく大きく大きくなーれ」おれ、朝までもんでやるんだよ。明美のみぞおちまで切れ上がった傷をオレはなめてやるんだよ。大きく大きく大きくなあれ、大きく大きく大きくなあれ。(だんだん絶叫)大きく大きく大きくなあれ。大きく大きく大きくなあれ。 |
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| 美しい明美、登場し、 |
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明美 | あんた、どう、きれいでしょ。やっぱプロの手にかかると、ドレスアップも楽しいわね。あたしだって気合い入ったわよ。1時間よ。こんな姿、1時間しかもたないわ。でも、頑張るの。だって、あの子が来るんですもの。あの子が。 |
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| 美智子、飛び込んでくる。 |
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美智子 | 明美さん。 |
明美 | ストップ。来ちゃだめよ。そのまま立ってて。よく見せてちょうだい。 |
美智子 | 明美さん。 |
明美 | ごめん。よく見えないんだ。目がね、悪くなっちゃって。でも、きっときれいなんだろな。よく聞いてるのよ、あなたの曲、ほら、今もかかってる。よくかかるのよねえ。 |
美智子 | 明美さん、ありがとうございます。あなたのおかげで、デビューできました。 |
明美 | お礼なら、この人に言って。いろいろ大変だったんだから。 |
義夫 | 明美! |
明美 | 美智子ちゃん。これからも頑張ってね。へんな男につかまらないでね。でも、どんどん恋してさ、どんどん傷ついてさ、そんで、いい男と出会ってね。大丈夫。あたしが稼いで、ガンガン仕送りしてあげっから。 |
美智子 | 明美さん。 |
明美 | なんか、暗いなあ。もう夜なの。電気つけてよ。あと、音楽、なんかかけてよ。 |
義夫 | 明美。 |
明美 | あ、シゲさんだ。マコトも、みんないるのね。どうしたの。そうか、美智子ちゃんに会いにきたのね。だめよ、触っちゃ。あんた達が触れる人じゃないんだから。安室二世って言われてるんだから。コムロ音楽学院ニューヨークの特待生よ。もうすぐスーパースターよ。まだ18なのよ。あたしが育てたの。自慢の娘なのよ。 |
美智子 | 明美さんっ。 |
明美 | こらっ。美智子ちゃん、しっかりしなさい。いい、踊るわよ。一緒に踊るわよ。音楽。 |
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| 音楽「上京物語」 |
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明美 | いい、大好きな歌や踊りをやるんだったら、よそ見をしちゃだめよ。気合いを入れなさい。足腰が肝心よ。がんがん走るの。体操はしないとね。最後は腰だから、みてよこのグラインド。ね、あたしのはストリップだけど、どっちにしたってグラインドは必要なのよ。基本だから。足腰弱くちゃ踊れないのよ。ステップだって、足だけじゃだめよ。からだ全体でステップ踏むの。そんで最後は顔よ。顔でステップ、顔で踊るのよ。義夫ちゃん、ピンは顔だけ狙ってね。ね、きれいでしょ。美智子ちゃんも、きれいよ。よーし、じゃあ、ダッシュ3本、いってみよう。 |
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| 幕 |
| 照明つくと、明美と美智子、並んでいる。おじぎ。 |
| 暗転、音楽FOし、 |
| 音楽入る。サスの中に、マイクを持った榊 |
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榊 | 引き続きご覧いただきます。劇団十六夜社、第六回公演「二代目はクリスチャン」予告編!(銃撃音と爆撃音炸裂し) |
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| 血に染まった舞台に、瀕死の男たちと、シスター今日子(桜沢) |
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山崎 | うおーっ、シスター、もともと無理だったんですよ。信心とかできない人間のクズがヤクザになるんです。もう、今日ははっきり言わせてもらいます。わしら遅すぎたんです。キリストさんに会うのが、遅すぎたんです。 |
史朗 | シスター、ほっといたら黒岩組の思うつぼですよ。シスターが一言言ってくれれば、俺ら今から言って、あいつらたたっ殺してきますから。 |
大島 | シスター、俺ら、命なんか惜しくないです。俺ら人間のクズです。でも、シスターのおかげで、しあわせないい思いさしてもらいました。あとは、黒岩のんと差し違えて、立派に散ってみせますよ。 |
村田 | もう我慢できません。黒岩組に殴り込んできます。見逃して下さい。 |
高田 | ダイナマイト、仕込んでます。どっちみち、世間様の役にたってねえ命です。こっぱみじんにふっとんでやりますよ。 |
山野内 | ぅおりゃああ、いくぞてめーら。シスター、長生きしたって下さい。シスター、シスター、わし、シスターのことが好きでしたあああ、 |
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| 激しい爆裂音 |
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今日子 | 待って下さい。もう少し待って下さい。きっといい知らせが届くはずです。 |
山崎 | ばかをいわんで下さい。姐さんも、神竜組に二代目を継いだお人です。黒岩たちは筋金入りの極道ですよ。渡世の義理じゃないですか。ここまでコケにされて、なんで黙っていられるんですか。 |
今日子 | わかりました。明日、黒岩さんと掛け合いますから、それまで待って下さい。 |
山崎 | 何言ってんですかあ。今すぐです。そんな悠長なこと言ってる場合じゃないです。もうシスターの言うことは聞きません。さ、みんな行くぞ。仲間の弔い合戦だ。だいたいキリストさんだってたいしたことねーよ。なんで、マコトたちを見殺しにすんだよ。なんで救ってくれねーんだよ。 |
大島 | 俺らはさ、じっと我慢してきたんだ。堪えていたんだよなあ、シロウ、カズマ。シスターには内緒にしてましたけど、シロウだって階段から落ちて腕折ったのと違いますよ。黒岩組にやられたんです。大の大人が階段から落ちて腕なんか折りますか。シロウだけじゃないです。みんな、もう身体中ボロボロです。それでも辛抱して堪えてきたんです。 |
史朗 | 俺ら、いままでいっぺんもシスターの言うことに逆らったことありません。俺ら、字もろくに読めないけど、一生懸命聖書読みました。毎週ミサにも通いました。毎日、寝る前に十字きってますよ。街の一膳飯屋でメシ食う時でも、「天にましますわれらが父よ」と手を組んでます。恥ずかしかったですよ。でも、もう限界ですよ。 |
高田 | シスターはヤクザの恐さややり口を全然わかってません。関西連合の恐ろしさ、わかってません。あいつら人間じゃないですよ。黒岩だって恐がってるんです。そいつらが本当の敵なんです。俺たちだって、神竜組の子分です。このまま殺されるの待ってるわけには行きません。 |
村田 | 金蔵がやられて、マコトがボロクズにされて、このまま黙ってるなんて、人間じゃありませんよ、シスター!。 |
山野内 | 俺ら、人間のクズですもん。人様から後ろ指さされて、この道入ってますもん。もう、なおりませんもんね。キリストさんが、してはならないってことばっかり選んで生きてきましたもん。長いこと人間見てきましたけど、悪党が改心するってことは、ありませんもんね。例えば聖書の465頁でしたっけ。聖書あけてみい。俺ら、いつもディスカッションしてるんです。ここの解釈なんか、シスターとは全然違いますもんね。 |
山崎 | シスター、今日は言わせてもらいます。いくらキリストさんだって、子供たちまで巻き添えにしたらあきませんのや。いますぐや、いますぐここから連れ出さないと、大変なことになりますよ。だいたいキリストさんってば、ムチャクチャ言ってますよ。右の頬殴られて、殴り返さないで左の頬出すバカがどこにいますかいな。わしら、よう街で黒岩組のもんに右の頬殴られ、何度も左の頬出しましたがな。でも、やつら改心するどころか、今度は蹴りつけつばを吐きかけてきましたよ。こんなバカな話がありますか。わしらどっちか言うと、イスラム教の方が性に合ってます。右手にコーラン、左手に剣、これですよ。 |
大島 | 俺ら、心配してるんですよ。聖書のすみからすみまで読んだって、イエス様がお救いの手をさしのべていらっしゃるのは売春婦や長患いのしょうもない女ばっかりだ。シスターみたいな心のきれいな女の人は、ほったらかしにされてるんですよ。キリストさんってのは、美人に恨みでもあったんじゃないんですか。俺、心配ですよ。 |
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| 激しい爆裂音 |
| 飛び込んでくる稲月 |
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稲月 | 大変です。百合さんたちが、帰ってくる途中、黒岩組に・・・(死ぬ) |
史朗 | なんだとおおお。 |
村田 | 子供たちは大丈夫かああ。 |
山野内 | ちくしょー、あのやろー |
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| 爆裂音 |
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山崎 | しまった。子供たちの方だ。 |
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| 飛び込んでくる浅野 |
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浅野 | 子供たちが、子供たちがあああ、(死ぬ) |
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| 今日子が下手にはけようとした時、舞台が爆発、全員(今日子以外)死ぬ |
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今日子 | ゴローさん |
山崎 | (生きている)シスター、オレは死にません。このまま死んでたまりますか。(立つ) |
今日子 | ゴローさん、こういう時、ヤクザは落とし前をつけなきゃいけないんでしょうね。 |
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| 山崎、うなずく |
| 今日子、ゆっくり立ち上がり、刀を抜き放つ |
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榊 | (マイクで)シスター、お供します。俺は、伊達に刑事やってねえぜ。捜査一課にこの人ありと言われたマサカリの竜とは俺のことよ。シスターを心底愛してました。けど、うちが代々仏教やってますから、そうもいかんかったのよ。しかし、もう、そんなことはどうでもいい。黒岩組には200からのゴミどもがいる。そのうち100は俺がこましてやる。天台密教をなめんなよ。南無妙法蓮華教、南無妙法蓮華教、地獄に落ちろ、のろわれよ、かーっ!。仏教をなめないで下さいよ。キリストの尼さんに長ドス持たせといて、荒技でなる天台密教の生臭坊主が、手をこまねいて見ていたとなると、最澄さんに申し訳がたちゃしません。ゴロー、気合いいれろよ、てめー、こんなとこでくたばったら承知しねーぞ。さあ、シスター!。 |
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| 音楽が止まり、無音に。 |
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今日子 | 神竜今日子、黒岩組の親分さんにおめもじ願いたくはせ参じておりますとお伝え下さいまし。 |
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| 銃撃音、そして無音 |
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今日子 | てめえら、悔い改めてえやつは十字を切りやがれ。でねえと一人残らずたたっ斬るぜ。 |
山崎 | 二代目! |
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| 暗転、音楽! |
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榊 | 劇団十六夜社8月公演ジェルスカーニバル参加「二代目はクリスチャン」予告編、以上でございます。テストマッチ第二弾「ストリッパー物語」僭越ながら、役者紹介。ヒロイン一条明美、十六夜社に激しく燃える赤いバラ、丸山昌子。明美の未来を見届けました男、十六夜社のロマンチック担当、関義明。明美にあこがれる青年を演じました十六夜社のジャニーズ系、高畠史朗。はたして8月にシスター今日子を演じることができるのか、敵は丸ちゃん、桜沢幸。義夫さん、あなたってヒドイ人ね、サチコはバカな女よ、浅野洋子。場合によっては見せてもよかったんですけど、豊満な肉体は、あなただけに、稲月優。この男、疲れることを知りません、十六夜社一濃いー男、山崎竜介。新人男子です、いい男がまた入りましたよおねえさん、楽しみなナイスガイ、村田一真。十六夜社に音楽部ができます、バンドやりますよ、部長はこいつ、オカマ座長を演じました高田良三。帰ってきたアイドル系、十六夜社の秘蔵っ子、藤沢美奈。新人女子です、19歳の二人、これからをご期待下さい、中野有子、森淳子。今回から参加してます、支配人を演じました山野内たすく。シゲの娘を演じました桑原裕子。そして私、もっと出番を、も |
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大島 | 本日は、ありがとうございました。 |
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| 全員、礼。暗転。幕。 |