| 光の中に六人の男たちが現れる。動き出す。そして群唱。 |
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6人 | 朝日のような夕日をつれて |
| 僕は立ち続ける |
| つなぎあうこともなく |
| 流れあうこともなく |
| きらめく恒星のように |
| 立ち続けることは苦しいから |
| 立ち続けることは楽しいから |
| 朝日のような夕日をつれて |
| ぼくはひとり |
| ひとりでは耐えられないから |
| ひとりでは何もできないから |
| ひとりであることを認めあうことは |
| たくさんの人と手をつなぐことだから |
| たくさんの人と手をつなぐことは |
| とても悲しいことだから |
| 朝日のような夕日をつれて |
| 冬空の流星のように |
| ぼくは、ひとり |
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| 六人、はじけ飛ぶ、暗転 |
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| 明転。立花洋之介(社長)と、立花竜介(部長)。 |
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社長 | まだなんですか。画期的な新製品は、まだできないのですか。 |
部長 | もう少しです。ほんのちょっとで完成するはずです。 |
社長 | そのことばを聞くのが、803回目。部長、我が社は傾きかけてますよ。 |
部長 | こんどこそ、大丈夫です。社長、もうすぐです。 |
社長 | だまれ。もうだまされねえぞ。あれは793回目でした。プリクラに負けない新商品だと、 |
部長 | おしい。実におしい商品でした。狙いは完ぺきでした。要するにコミュニケーションです。ベル友、プリ友ってくらいですから。おまけに旅行ブーム。みごとにリミックスした商品でした。 |
社長 | 立花トーイが社運をかけた新商品。旅のお供に最適、御友達同士のコミュニケーションツール、「はんこ倶楽部」。 |
部長 | 素晴らしいですね。でもお嬢さんは反対したんです。「ばっかみたい」と言ってました。 |
社長 | 在庫の山です。例のあれはどうなってますか。対戦型たまごっち。 |
部長 | 素晴らしいアイディアです。 |
社長 | 私が考えたの。 |
部長 | こうやって、二つをつないで。うんこの量で勝敗が決するのとか、注射何本に耐えられるかとか。 |
社長 | 先におやじっちになったのが勝ちい、早く殺した方が勝ちぃ。 |
部長 | ただ、お嬢さんはまた反対してます。 |
社長 | みよ子はどこにいますか。 |
部長 | お嬢さんは、いません。 |
社長 | どうしていつもいないんだ。門限は6時にします。 |
部長 | (マジで怒って)なに言ってんだよ。 |
社長 | でなきゃ、キミはクビだ。 |
部長 | しゃちょーっ。 |
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| 二人、はじけとぶ。立花順次(研究員)、立花義明(モニター)、登場。 |
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研究 | やったー。やったやったやったー。完ぺきだ。見事だ。ビューティフルだ。 |
モニ | 素晴らしい。これこそ21世紀のコミュニケーションツールだ。 |
研究 | 社長、部長、できましたよ。立花トーイ、復活です。 |
モニ | 生まれ変わります。もう、こんなこぎたないおもちゃ会社とはおわかれです。 |
研究 | すごいぞゴーゴー、ラブリータチバナ。 |
モニ | エルオーブイイー、レッツゴー三匹。 |
研究 | それで、サンプルのピックアップは進んでいるのかい。 |
モニ | ばっちりです。 |
研究 | 選んでくれよ。モニターの人選は重要だからさ。 |
モニ | ばっちりです。 |
研究 | どんな反応があるか楽しみだ。 |
モニ | ばっちりです。 |
研究 | ばっちり以外には、 |
モニ | うっちゃりです。 |
研究 | うっちゃってどうする。 |
モニ | そとがけ。 |
研究 | そーとーなカケ。 |
モニ | ばっちりでーす。 |
研究 | えー、このたび、わが立花トーイは、立花テレビとして生まれ変わりました。 |
モニ | デジタルCSテレビに、3チャンネルを確保できる見通しです。 |
研究 | えっ、たったの3チャンネルなの。 |
モニ | 充分ですよ。1週間に1時間番組が504個放送できるんですから。 |
研究 | パーフェクTVとディレクTVとJスカイBのどこかになります。 |
モニ | パソコン通信ニフティサーブと提携し、コンテンツを製作します。また、インターネット上にもウェブサーバーを公開します。 |
研究 | わーい、テレビだテレビだ。 |
モニ | インタラクティブテレビ。サイバースペースで新しい出会いを。 |
研究 | 既存の一方通行マスメディアに、お別れしましょう。 |
モニ | わけのわかんないドラマとかワイドショーとかを見てると、頭悪くなります。 |
研究 | 地上波からは、頭の悪くなる電波が出ています。 |
モニ | ドラマ、見てますか。ひどいですね。「ストーカー」 |
研究 | 「キミは、僕がいなけりゃ、何も決められない」 |
モニ | きゃー。怖いぞ渡部篤郎。でも、お前は正しい、間違ってるのは高岡早紀だー。 |
研究 | 「踊る大捜査線」。お前だけ芝居が違うぞ深津絵里。 |
モニ | 「ぽっかぽか」 |
研究 | やめろー。その名を出すな。「ぽっかぽか」は演劇人の墓場だ。 |
モニ | だ、誰が出てんの。 |
研究 | えっ、長野きゃー、大高きゃー、山下きゃー。 |
モニ | CMいこ、CM。 |
研究 | ただいまー。 |
モニ | あら、どなた。 |
研究 | ナオミよー。 |
モニ | そんな、声まで変わって |
研究 | ちがーう。人種が違う。 |
モニ | エステと言えば、レッツテレフォンいい女 |
二人 | いまならタカノでいい女、 |
モニ | 出たな高知東急 |
研究 | 復活したなスコーンのCM。スコーンスコーン湖池屋スコーン〜かりっとさくっとおいしいスコーン。 |
モニ | このポーズがああああ。 |
研究 | 上川くん、演劇に専念して下さい。 |
モニ | 上川くん、CMもちょっと・・・。 |
研究 | 上川くん、私も紹介して下さい。 |
モニ | あ、わたしも。 |
研究 | って、うそだよ。立花テレビに、出るもんね。 |
モニ | あ、俺も出よう。ドラマってあるのか。 |
研究 | ないよ。パソ通のフォーラム式番組。ニフティに600番組あるって。 |
モニ | で、その場でコミュニケーション。ほんとの意味でのインタラクティブとは、コミュニケーションのことだ。 |
研究 | なんだよそれ。誰におそわったの。みよ子か。 |
モニ | いいだろ。それよか、おじさん呼んでこいよ。報告しないと。 |
研究 | 先にみよ子を探せよ。 |
モニ | 出てるんだろ。うちにいなかったよ。 |
研究 | またいなくなったのか。 |
モニ | みよ子も大変だよな。 |
研究 | とか言って、自分だけいろいろ聞いてんだろ。(去る) |
モニ | 違うよ。あいつは何も答えない。何も、教えない。 |
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| 音楽 |
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関 | 極論すれば、この現実を肯定することは、自分を否定することに他ならない。だとしたら、現実を否定しようと思う。このクソ面白くない現実を、無理してポジティブになんか、生きるのはよそう。そんなことはおやじにまかせておく。そんなことは、よっぽどボケていないとできないことだ。現実を認識すれば、リアルワールドでポジティブに生きることは、自らに死を宣告することじゃないのか。かといって、逃げたりはしない。ただ、思っていることはひとつ。おやじに死を。 |
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暗転 | |
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| 立っているみよ子と少年。 |
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少年 | こんにちは。何してんの。 |
みよ | 別に。 |
少年 | さっきから、ずっといるじゃん。 |
みよ | 見てたの。 |
少年 | ていうか、あっちで人を待ってたんだけど、来ないんだ。きみも、誰かを待ってんの。 |
みよ | まあね。 |
少年 | 来ないね。 |
みよ | 来るわ。 |
少年 | そうかなあ。 |
みよ | ・・・。 |
少年 | どっか、遊びに行こうよ。 |
みよ | なんで。 |
少年 | なんでって・・・。退屈じゃん。 |
みよ | ・・・。 |
少年 | カラオケとか、行かない? |
みよ | ・・・行かない。 |
少年 | 行こうよ、カラオケ。 |
みよ | 嫌いなの。 |
少年 | なんだよ、嫌いなのか。珍しい。 |
みよ | 別にいいでしょ。 |
少年 | じゃあ、飲みに、 |
みよ | 行かない。 |
少年 | あっ、そ。 |
みよ | 行かない。 |
少年 | きっと来ないよ。 |
みよ | そんなのわかんないよ。 |
少年 | そりゃそうだけどさ。 |
みよ | 来るよ。 |
少年 | そうかなあ。 |
みよ | 来るよ。 |
少年 | どっか行こうよ。 |
みよ | ・・・どこへ。 |
少年 | じゃあさ・・・。 |
みよ | なに? |
少年 | ホテル? |
みよ | ・・・だめ。 |
少年 | ふざけんなよ。 |
みよ | えっ、 |
少年 | ふざけんなっつーの。 |
みよ | ・・・。 |
少年 | 人がせっかく誘ってやってんのによお。なんだよ、その態度。 |
みよ | だって。 |
少年 | だってじゃねーだろ。ホテル?、冗談だよ。てめーなんかと行くかよ。てめー、あれだろ、おもちゃ屋の社長の娘だろ。態度でかいんだよ。 |
みよ | ごめんなさい。 |
少年 | あのさ、こんなとこでさ、ぼーっとつったってると、危ないんだよ。 |
みよ | ごめんなさい。 |
少年 | ごめんなさいじゃねーよ。ちゃんとしろよな。学校とか、どうしてんだよ。 |
みよ | ごめん・・・ |
少年 | いいけどさ。そんなに待ってて・・・なんかあんのかよ。 |
みよ | わからない。 |
少年 | なんだよ、わからないって。 |
みよ | わからないけど、来るかなって・・・ |
少年 | わけわかんねーよ。 |
みよ | ごめんなさい。 |
少年 | いいけどさ。来れば、いいけどさ。 |
みよ | うん。 |
少年 | (急に大声で)来ませんね。 |
みよ | (大声で)来るよ。 |
少年 | まだ待つのですか。 |
みよ | 待ちますよ。 |
少年 | ずっと? |
みよ | ずっと。 |
少年 | 行きましょうよ。 |
みよ | だめだ。 |
少年 | なんで? |
みよ | 待つんだよ。 |
少年 | 何を。 |
みよ | ゴドーさんを。 |
少年 | そうか。 |
みよ | そうさ。 |
少年 | 待つのか。 |
みよ | 待つのよ。 |
少年 | じゃあ・・・僕もここにいよう。 |
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| 少年、そばに座る。 |
| 暗転 |
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| じいさんとばあさんと称される二人がいる |
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じい | 結局さ、押しの一手ができないから。 |
ばあ | 詰めが甘いんだよ。可愛い顔してっけど、ああゆうタイプは、もろいはずよ。 |
じい | 弁当とか作ってきてくれるからと言って、そっちに傾くのはあまりにも単純だよな。 |
ばあ | やっぱ最初の思いっちゅうか、ひとめぼれの方が、気合いが入るもんな。 |
じい | 目移りするんだよなあ。浮気性なのか。 |
ばあ | そうじゃない。真剣さが足りないんだよ。マジメに口説けよな。 |
じい | そうは言ったって、女なんか、俺にとってはハケ口だもの。 |
ばあ | そう言うなって。遊びは遊びとして、計算づくでやんないとさ、面白くないよ。 |
じい | だけど、無理して高嶺の花を狙うよりも、簡単に落ちそうなのをこまめに拾っていったほうが、そこそこ楽しめるだろ。 |
ばあ | それじゃつまんねえだろ。周りの女なんか、カスだぞ。あんなの、簡単に乗せられて、みーんなやっちゃってんだから。ちゃんと狙えよ藤崎を。 |
じい | いやーん、難しいんだもん詩織ちゃん。 |
ばあ | お前なあ、いっつもそうなのな。だめだなあ。さっきだってそうだ。なんで逃げんだよ。ちゃんと殺せよな。 |
じい | だって、怖かったんだもの。普通びびるぜ。 |
ばあ | そうやって、逃げてりゃいいよ。ナイフひとつまともに扱えないで、 |
じい | 何言ってんだよ。てめーだって、何かってえと、すぐに撃つだろうが。あんな殺し方で、気持ちいいのか。少しは傷つきながら、からだを痛めながら、それで殺すのがルールじゃないのか。 |
ばあ | 殺せばいいの。あんなの、殺しまくるのが目的だろ。走って逃げたりして体力残して、どうすんだよ。アイテム拾うのが目的じゃねーんだぞ。 |
じい | 俺はジルが好きなの。薬草拾って、体力回復するぐらいなら、戦わない方を選ぶの。 |
ばあ | どうしてそうなの。そんなの邪道だろ。言っとくけどな、知り合いがナイフだけで戦ってゴールまで行ったってよ。ベレッタ使わずにだぞ。だけど、逃げなかったんだぞ。 |
じい | どうしてそんな歪んだ遊び方すんの。素直にやれよ。鉄拳も、一つの技だけで勝ち残るとかってやり方あるらしいけど、それの何が面白いんだ。 |
ばあ | 面白いだろ。すごいだろーが。 |
じい | そういうのは、ジャンピング・フラッシュでタイムを競うようなもんで、そんなことやってるヒマがあったら、新しいのやれよ。 |
ばあ | 新しいのっていっても、ロクなゲームないだろうが。こないだ買ったのがクロックタワー2。シザーマン。ジャキーンジャキーン。 |
じい | おっとこんなところに毛布が。隠れちゃお。 |
ばあ | ジャキーンジャキーン。(探して、そして去っていく)ジャキーンジャキーン。 |
二人 | おーい、気がつくだろ普通。おかしいぞ。どうなってんだごっつ。刑事だろがごっつ。 |
ばあ | まったくおかしいよ。絶対に気づくよ。 |
じい | なんで気付かないかな。 |
ばあ | 他にもあるぞ。クソゲーがよ。 |
じい | 俺が一番嫌いなのは、アクアノートの休日な。新型ゲームとか言って、何が面白いんだよ。散歩がよ。心が癒されるんだと。ゲームで癒されてどうすんだよ。俺はじじいか。 |
ばあ | ときメモがヒットすると、やれ卒業だ、プリンセスメーカーだって、かわいこちゃんシュミレーションばっかな。頭使えっつーの。 |
じい | でも好きだけど。 |
ばあ | このロリコンがあ。 |
じい | ロリコンのどこが悪い。 |
ばあ | 頭使えっての。ロープレを途中で投げるな。 |
じい | だって、クーロンズゲートなんか4枚組だよ。 |
ばあ | FFだって3枚なのに。 |
じい | そこいくと64はいいよな。めちゃソフトが高いけど。 |
ばあ | ハードは1万5千円になった。 |
じい | すごいな。セガとバンダイも一緒になったし。 |
ばあ | きっと、バーチャファイターにウルトラマンとかパワーレンジャーとか出るんだろな。 |
じい | ガンダムも参加するぞ、きっと。卒業のおねーちゃんも出るといいな。 |
ばあ | そいえば、ナムコってにっかつの親会社なんだろ。鉄拳にいつ小林旭が出るんだろ。 |
じい | にっかつだったら、その、あの、ロマンポルノのおねーちゃんが鉄拳で戦って。 |
ばあ | まったく、お前がバカだから、ゲームが進歩しないんだよ。 |
じい | どうせ、立花トーイだって、ろくなゲーム作ってない。 |
ばあ | いまはほら、たまごっちばっかり話題だから。 |
じい | まったく、たまごっち、欲しいよなあ。 |
ばあ | 何言ってんの。敵の商品だろが。 |
じい | だって、ゆう子が欲しがってたよ。孫のためなら、なんとかして1個ぐらい。 |
ばあ | いいかげんにしろよ。 |
じい | いいじゃないの。おーい、誰か、たまごっち、買ってこーい。 |
| |
| 4人(社長・部長・研究員・モニター)顔を出す |
| |
4人 | なに? |
じい | 1個でいいから、ない? |
ばあ | ちょっと待て。まったくもう、肝っ玉が小さいんだから。たまごっちぐらい、なんぼでもあるわい。おりゃー。 |
| |
| たまごっち、100個降ってくる。 |
| |
4人 | おおおっ。(拾いまくって去る) |
社長 | こりゃすげえや。これを1個5000円で売ろう。いや、1回500円でクジにしようか。当たりは1%。だと1個5万円だ。いやいやいや、売るのはもったいない。レンタルにしよう。レンタルたまごっち、略してレンたま。レンたまにんたろうで、たまらんたろう、なんちて。 |
| |
| 去る |
| |
じい | 洋之介も、社長なんだから、ちゃんと考えてゲーム作って欲しいよ。立花トーイの将来が心配だよ。 |
ばあ | あの兄弟は、考えることが単純だから。「はんこ倶楽部」だって、ポイントがずれてんだよ。 |
じい | 言っとくけど、俺は反対したよ。だけど、いくら俺が言っても、もう聞きゃあしねえんだ。 |
ばあ | そりゃしょうがないよ。もう引退した身なんだから。でも、確かみよ子も反対してたんだよなあ。 |
じい | なあ、ばあさん。 |
ばあ | なんだ、じいさん。 |
じい | みよ子は今、どうしてんだい。 |
ばあ | さあ・・・、最近見かけないねえ。 |
じい | あの子もかわいそうな子だよ。 |
ばあ | 仕方ないよ。みんな忙しいから。 |
じい | そういうふうに育てたのは、わしらだがな。 |
ばあ | でも、そんなに心配しなくても、だいじょうぶだよ。 |
じい | そうかい。 |
ばあ | あの子は、あれで意外としっかりしてんのよ。 |
じい | そりゃそうだけど。 |
ばあ | あの子なら、必ず見つけるよ。 |
じい | あの子なら、必ず見つけるさ。 |
| |
| 暗転 |
| |
| みよ子とゆう子(姉)が立っている。 |
| |
ゆう | 来ないね。 |
みよ | うん。 |
ゆう | 退屈? |
みよ | でもない。 |
ゆう | 慣れてるか。 |
みよ | まあね。 |
ゆう | まだいるの。 |
みよ | いるよ。 |
ゆう | 来ないのに。 |
みよ | 来るよ。 |
ゆう | 来るの? |
みよ | 来るよ。 |
ゆう | そっか。 |
みよ | そう。 |
ゆう | 来ればいいね。 |
みよ | うん。 |
ゆう | 来るんだろうけど。 |
みよ | うん。 |
| |
| 沈黙 |
| |
ゆう | みんな心配してるよ。 |
みよ | うん。 |
ゆう | 父さんは、相変わらずだけどさ。 |
みよ | ごめんね。 |
ゆう | えっ |
みよ | おねえちゃんに、メーワクかなと思って |
ゆう | ううん、そんなことないよ。 |
みよ | うん、ごめん。 |
ゆう | 仕方ないよ。父さんは、どう言ったってわかんないんだから。 |
みよ | うん。 |
ゆう | 母さんも。 |
みよ | うん。 |
ゆう | 適当に、言っとくから。 |
みよ | うん。 |
ゆう | でもさ・・・ |
みよ | なに? |
ゆう | 聞いていいのかな。 |
みよ | えっ。 |
ゆう | なにしてんの。 |
みよ | なにって。 |
ゆう | 待ってるって言うけど。 |
みよ | 待ってるの。 |
ゆう | 誰を。 |
みよ | そりゃあ・・・ |
ゆう | 別に、無理に応えてくれなくてもいいけど。 |
みよ | うん。 |
ゆう | 誰なの。 |
みよ | うん。待ってるの。その人を。 |
ゆう | うん。それで? |
みよ | その人が、きっと来るの。 |
ゆう | どんな人。 |
みよ | だから、待っている人なの。 |
ゆう | どんな人を待っているの。 |
みよ | そうじゃなくて、待っている人を待っているの。 |
ゆう | ちょっとわからない。 |
みよ | だから、私も待っているけど、その人も待っているの。 |
ゆう | 待ってる人同士ね。 |
みよ | たぶんね。 |
ゆう | その待ってる人は、みよちゃんが待ってる人なのね。 |
みよ | うん。 |
ゆう | よくわかんない。 |
みよ | だから、待ってる人を捜しているの。 |
ゆう | みよちゃんと同じなんだ。 |
みよ | そう。 |
ゆう | でも、その人も待ってるんでしょ。 |
みよ | そう。 |
ゆう | その人と出会えるの。 |
みよ | えっ、 |
ゆう | その待ってる人は、来るの?。 |
みよ | 来るよ。 |
ゆう | そうかな。 |
みよ | 来るよ。 |
ゆう | ふ〜ん。 |
みよ | 来るよ。 |
ゆう | うん。きっと来るかもね。 |
みよ | うん。 |
ゆう | その人が来たら、すぐにわかるんだろうな。 |
みよ | えっ、 |
ゆう | その人だって、わかるんだよね。 |
みよ | わかるよ。 |
ゆう | わかるんだよね。 |
みよ | うん。 |
ゆう | いいなあ。 |
みよ | うん。 |
ゆう | でも、なかなか来ないんだ。 |
みよ | うん。 |
ゆう | それでも、待つんだ。 |
みよ | うん。 |
ゆう | 私は待てないな。 |
みよ | うん。 |
ゆう | 大変だなあ。 |
みよ | うん。 |
ゆう | みんな心配してるんだけど。 |
みよ | うん、ごめん。 |
ゆう | じゃあさ、これ渡しとく。 |
みよ | なに? |
ゆう | ポケベル。 |
みよ | どうすんの。 |
ゆう | メッセージが出る。 |
みよ | どんな。 |
ゆう | 普通のメールと一緒。漢字かな混じりで50字送れる。 |
みよ | ふーん。 |
ゆう | 呼ぶから。 |
みよ | うん。 |
ゆう | 時々呼ぶから、そしたら来なよ。 |
みよ | うん。 |
ゆう | 無理に来なくてもいいけど。 |
みよ | うん。 |
ゆう | 気が向いたらさ。 |
みよ | うん。 |
ゆう | 心配だし。 |
みよ | うん。 |
ゆう | じゃあ、あとで。(去ろうとする) |
みよ | うん、あの。 |
ゆう | えっ? |
みよ | 待ってるから、呼んでね。 |
ゆう | うん。待っててね。 |
みよ | 待ってる。 |
| |
| 残されたみよ子、ポケベルを大事に抱え、暗転 |
| |
| ウラヤマ(社長)とエスカワ(部長)がいる。 |
| |
ウラ | また同じだよ。なんで次から次へと同じものが出てくるんだ。 |
エス | なんだってそうだよ。テレビなんか、同じやつしか出てないぞ。 |
ウラ | 同じようなクイズ番組、同じようなタレント、同じような司会者、構成作家は違うのになあ。 |
エス | 大騒ぎを見せれば、楽しいとか思ってしまう視聴者がいるから。 |
ウラ | そんなの、まだいるのか。 |
エス | いるよ。でなきゃ、昼間のワイドショーの頭の悪さは説明つかんだろ。 |
ウラ | 俺、けっこう好きだけどな、ワイドショー。 |
エス | 俺も。 |
ウラ | まあ、テレビだから。 |
エス | 仕方ないよな。 |
ウラ | 今始まったことじゃない。 |
エス | 昔っから、真似だったもの。大昔は外国番組の真似。そして他局の真似。 |
ウラ | テレビだから。 |
エス | 仕方ないよな。 |
ウラ | 音楽も、同じだよな。 |
エス | 小室の曲って、区別つかないぞ。 |
ウラ | ミスチルとかって、結局サザンだろ。 |
エス | でも、今始まったことじゃない。 |
ウラ | そう。昔は外国の曲のコピーだった。 |
エス | 今は、ヒット曲のコピー。 |
ウラ | 結局、歌謡曲だから。 |
エス | 芸能界だからな。 |
ウラ | 音楽産業はあっても、音楽業界はないんだよな。 |
エス | 仕方ないよな。 |
エス | 演劇って、最近、見たか。 |
ウラ | 見ないよ。演劇ってあれだろ。キャッツとか。 |
エス | そうそう。あと、武田真司だか香取慎吾とかも出てるらしい。 |
ウラ | どこでやってんだ。 |
エス | 知らねえよ。 |
ウラ | ぴあとかに載ってないのか。 |
エス | 載ってないだろ。 |
ウラ | じゃあ仕方ないな。 |
ウラ | アニメは。 |
エス | エバンゲリオンな。あれって、過去のアニメ台本を集めて並べ替えただけって噂あるぞ。 |
ウラ | でも、よくできてるだろ。 |
エス | そういうの、よくできてるって言うのか。 |
ウラ | 言うだろ。丁寧に作りこんでるもの。 |
エス | 大人の仕事って感じはする。 |
ウラ | 見たことあるシーンがいっぱいで安心するだろ。 |
エス | それはあるな。懐かしい感じした。 |
ウラ | な。アニメで育ってるもの。 |
エス | いいよなあ、どっかで見たことある感じって。 |
ウラ | そうそう。 |
| |
沈黙 | |
| |
ウラ | (大声で)来ませんね。 |
エス | 来るよ。 |
ウラ | まだ待つのですか。 |
エス | 待つよ。 |
ウラ | ずっと? |
エス | ずっと。 |
ウラ | 待つのか。 |
エス | 待つんだ。 |
ウラ | 行こうよ。 |
エス | だめだ。 |
ウラ | なんで。 |
エス | 待つんだよ。 |
ウラ | 誰を。 |
エス | ゴドーさんを。 |
ウラ | そうか。 |
エス | そうさ。 |
ウラ | 待つのか。 |
エス | 待つんだ。 |
| |
| 沈黙・・・突然、 |
| |
ウラ | 斉藤陽子って、エッチだよな。 |
エス | 斉藤友子って、何してんだ。マイブックの。 |
ウラ | 斉藤ゆうこだっけか、ハンバーガー飛ばなかったの。 |
エス | のこいのこって生きてんのか。 |
ウラ | このはのこってのもいたっけ。 |
エス | のーこう民族。 |
ウラ | 濃厚ホモ牛乳 |
エス | 川合も結婚するって |
ウラ | 偽装だろ。 |
エス | 偽装だよ。 |
ウラ | ギロチンだ。 |
エス | 議論百出 |
ウラ | 義理人情 |
エス | 銀河鉄道 |
ウラ | ぎぼあいこ |
エス | ギター抱えて |
ウラ | 銀之丞 |
エス | 銀ちゃーん。 |
ウラ | おいは、くやしかとですよ。 |
エス | 黙れハゲ。 |
ウラ | ひっどい、あんまりだわ。 |
エス | ナマ言ってんじゃねーよ。 |
ウラ | やめて下さい。 |
エス | 何もしないって。だいじょぶだいじょぶ。 |
ウラ | 絶対に何もしないで下さいよ。 |
エス | だーいじょぶ。嘘だと思うんなら、このつぶらな腰を見てよ。 |
ウラ | 好きにしてー。 |
エス | さわるな。手は洗ったのか。 |
ウラ | 薬用ミューズ石鹸で。 |
エス | メンタームアローバ薬用スキンクリームにして。 |
ウラ | レピアスシーバムクリーンシートで小鼻のお手入れ |
エス | ファインガルシニアダイエット紅茶を飲んで |
ウラ | マルマンスーパー核酸DNAダイエットも服用 |
エス | 二人はサイバネティックなライフスタイルに |
ウラ | 憧れのバストラインを目指して |
エス | 顔やせ脚やせ、下半身革命 |
ウラ | やせてもブスはブス |
エス | 植毛しても、ハゲはハゲ |
ウラ | 黙っていればわからない。 |
エス | 黙っているのは気の毒だから。 |
ウラ | 春なのに、デブ |
エス | 年なのに第三舞台 |
ウラ | 気付かないふりが思いやり |
エス | 支え合ってのサザンシアター |
ウラ | そんなに毒をはいてどうするー |
エス | 黙っていればわからない |
ウラ | じゃあ、黙ってようよ |
エス | 黙ってよう・・・。 |
| |
沈黙 | |
| |
ウラ | 何か話してくれよ。 |
エス | 何を話そうか。 |
ウラ | 何か話そうよ。 |
エス | 何も話せないよ。 |
ウラ | じゃあ・・・行こうか。 |
エス | だめだよ。 |
ウラ | なぜさ。 |
エス | 待つんだ。 |
ウラ | 誰を |
エス | ゴドーさんを。 |
ウラ | そうか |
エス | そうさ。 |
ウラ | 待つのか。 |
エス | 待つのさ。 |
ウラ | もう・・・待てないよー。 |
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音楽 | ゴドー1(研究員)、客席から登場。 |
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ゴ1 | 可愛いふりしてあの子、わりとやるもんだねと、言われ続けたあの頃、生きるのが辛かった。行ったり来たりすれ違い、あなたと私の恋、いつかどこかで結ばれるってことは永遠の夢。 |
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| 音楽鳴る中、舞台へ。 |
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ゴ1 | お待たせしました。お待たせいたしました。おまん、たせいたしました。ゴドーです。私がゴドーです。サミュエルベケットの、正真正銘のゴドーです。全世界のゴドー待ちのみなさん。ご安心下さい。私が来たからには、もう大丈夫。ほら、気を楽に。ほら、身を委ねて。いいんですよ、私が引き受けます。じっぱひとからげ。あなたの悩みもすっきりさわやか。快食快便、うんこもまろやか。ほんのり香る、朝のピコレット。輝ける一日の始まりです。あなたの未来は、もー大丈夫。男だって手玉に取れます。私がめんどう見てあげます。正しい男のつまみぐい、ご指導いたしましょう。だめですよ、中途半端なマニュアルを信じちゃ。大火傷の元です。火遊びは、指先とハートを焦がすぐらいの、まったりとした焼け具合い。ミディアムレアで、若い子を食っちゃいましょう。平気です。女は25過ぎたら、食っていいんです。世界保健機構(WHO)が発表してます。あなたは充分待ちました。これからは、待たずに、考えずに、身体のおもむくままに行動しましょう。いやん、やめないで。言っていいんです。恥ずかしくない。ゴドーは恥ずかしくない。ゴドーは世界の救世主です。もう安心。私にかしずきなさい。私を信じなさ |
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ウラ | ゴ、ゴドーさんですか。 |
ゴド | そうです。私がゴドーです。 |
エス | 腕に名前が書いてあるぞ。 |
ゴド | そうです。ほら、ゴドー1、えっ、1? |
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| その時、 |
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声 | わーい |
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| ゴドー3(ばあさん)が、舞台奥の大黒の裏から登場 |
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ゴ3 | みなさん、こんにちは。やあ、ごきげんよう。みんな、見てるぅ。僕だよーん。さわやかお兄さんだよーん。素敵な笑顔の僕だよーん。にこっ。ね、さわやかでしょ。お兄さんの名前は、ゴドーです。覚えてよね。ゴドーさんでーす。みんな、ゴドーさーんって呼んでね。そしたら、僕が答えるよ。なーんだい?。素敵!。これでみんな、とっても御友達だ。嬉しい。楽しい。あはははっ。あははははっ。(降りてくる)じゃあ、みんなで一緒に、お兄さんのこと、呼んでみようか。じゃあ、いくよ。ゴドーさーん。はいっ、ごどーさーん。そう、じょうずだね。みんなとっても元気なんで、お兄さんは安心さ。これからも、仲よくしようね。僕達は、オトモダチ。そこのハデな君、君だよーん、僕達の関係は、何かなー? |
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ゴ1 | (無言) |
ゴ3 | あれあれー、僕たちは、おともだち、だね。おともだち、おともだち。 |
ゴ1 | おともだち。 |
ゴ3 | そうそう。じゃあ、そっちの二人も一緒に、僕のことを呼んでみようか。さんしっ、ゴドーさーん。ごどーさーん、ごどーさーん、(腕章を見せて)ゴドー3。えっ、3? |
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声 | 待たせたね、暗転。 |
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| 暗転する。3秒後に明転。客席最前列に座っているゴドー2。 |
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ゴ2 | コンケラコッコ、コンケラコッコ。スンダラホーイ。スンナラホーイ。夜のお供に、シリカゲル。愛する二人はアマカケル。イントライントラ、ネットワク。ワールドワイドにネットわく。あっちちあっちち熱湯ね。マントライントラエクストラ。さあ、私がゴドーです。元祖ゴドーです。にせものに騙されてはいけません。唱えましょう。マントライントラエクストラ。ナニはなくとも江戸紫。違う。そうではない。それは間違い。だめ。そんなことでは、意味がない。無駄。無能。処置なし。限界。アウト。帰っていいよ。来なくていいよ。だめだなあ。一からやりなおし。人間やってく資格ないよ。ひどいもんだ。さいてー。ぶた、ひゃくしょー、いぬころ、アルツハイマー、手遅れー。でもだいじょうぶ。私が来たからには、問題解決。ゴドーですよ。この私が元祖ゴドーです。どうですか、見るからにゴドーでしょう。遠慮しなくていいんです。なんでも尋ねて下さい。私がすべてを解決しましょう。そこのぼーっと立っているあんたたち、何か聞きたいことありますか。 |
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| 突然、舞台奥の平台がはねあがり、中からゴドー4登場。平台をかついで |
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ゴ4 | トランシルバニアのサミーが死んだ。バージン・ロードの途上で死んだ。スワン・ソングは海を越え、時計台までやってきた。仲間は誰もいなかった。赤い自転車途方にくれて、宛名捜して日が暮れた。ネクタイで首をくくったクルーは笑い、アンリはシャドウで涙をかいた。仲間は誰もいなかった。サミーはスワンを待っていた。スワンの足のバスケット、昔の笑いと幸せのきっちりつまったバスケット。だけど仲間はもういない。天国と空のすきまの雲の上、サミーはセピアの涙を出した。だけど、仲間はもういない。赤い自転車考えて、スクエア・ビルの屋上に、石の重しを置いたまま、宛名不明のスワン・ソング、風の吹かれるままにした。サミーは初めて微笑んだ。きっと仲間ができるらろう。都会のビルに吹く風に、白い翼を街ほどひろげ、スワンの足のバスケット、ビター・スウィート・サンドイッチ。きっと仲間ができるだろう。きっとみよ子は微笑むだろう。ゴドーだぞ。 |
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全員 | このやろー。舞台壊したなー。なおせなおせー。 |
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| なおす。 |
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ウラ | 君達はいったい、誰なんだ。 |
4人 | ゴドーです。 |
エス | なんで4人もいるんだ。 |
4人 | ゴドーです。 |
ゴ1 | ちょっと待てよ。俺がゴドーだろ。 |
ゴ2 | 元祖ゴドーです。 |
ゴ3 | 本家ゴドー。 |
ゴ4 | ゴドー本店。 |
ゴ1 | ゴドー家元 |
ゴ2 | ゴドーオリジナル |
ゴ3 | ゴドースペシャル |
ゴ4 | ゴドースピリッツ |
ゴ1 | ゴドーインターナショナル |
ゴ2 | ゴドーエンタープライズ |
ゴ3 | ゴドー海外協力隊 |
ゴ4 | ワールドゴドーリミテッド |
ゴ1 | デフォルトゴドー |
ゴ2 | コムサデゴドー |
ゴ3 | ロイヤルストレートゴドー |
ゴ4 | ユナイテッドステートオブゴドー |
ゴ1 | ゴドー通り商店街 |
ゴ2 | ゴドー中町銀座 |
ゴ3 | ゴドー生活協同組合 |
ゴ4 | ゴドー連絡協議会 |
ウラ | ゴドー町内子供会 |
エス | ゴドー・・・・ちょっと、あんたら、なんなのよ。4人してぇ。 |
ゴ1 | 俺たちは、ゴドー4人衆 |
ゴ2 | 俺たちは、少年ゴドー隊 |
ゴ3 | 俺たちは、ゴドー組のもんじゃい。 |
ゴ4 | 俺たちは、そうだ、ゴドレンジャーだ。 |
4人 | とおっ。 |
ゴ1 | ゴドーレッド |
ゴ2 | ゴドーパープル |
ゴ3 | ゴドーピンク |
ゴ4 | ゴドーグリーン |
4人 | 4人揃って、ゴドレンジャー、てやっ!。 |
ゴ1 | ピピピピー。はい、こちらゴドレンジャー、なにぃ、ちびっこハウスが襲われただとー。 |
ゴ2 | (エスに)ほらほら、ちびっこ、ちびっこ。 |
エス | えっ・・・、えーん、襲われたあ。 |
ゴ3 | 誰に襲われたんだい。 |
エス | 怖い化け物だよ、えーん。 |
ゴ4 | (ウラに)ほらほら、化け物、バケモノッ。 |
ウラ | えっ・・・、このやろー、私は化け物さあ。 |
ゴ1 | ちびっこ君、怖がることはない。僕らが来たからには、もう大丈夫。ゴドーレッド、 |
ゴ2 | ゴドーパープル |
ゴ3 | ゴドーピンク |
ゴ4 | ゴドーモスグリーン |
4人 | 4人そろって、ゴドレンジャー、とおっ。 |
ウラ | わー、やられたー。 |
エス | ちょっとまて、なんであんたモスグリーンなの。さっきと違う。 |
ゴ4 | ふっふっふ、よくぞ見破ったな。それでは教えてやろう。私の正体は、スーパーサイヤ人、孫悟空。 |
ゴ1 | 私の正体は、ウルトラスーパーサイヤ人、孫御飯。 |
ゴ3 | 私の正体は、超ウルトラスーパーサイヤ人、孫御殿。 |
ゴ2 | 私の正体は、超々スーパーサイヤ人、孫ご、ご、ご・・・ごま。 |
ゴ4 | なんだよ、ごまって。 |
ゴ1 | そんなのいねーよ。 |
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| などと、みんなで非難 |
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ゴ2 | なんでよ。いいだろが。ごま、可愛いだろが。 |
エス | とうとう仲間割れか。 |
ゴ1 | うっ。私はゴド春。 |
ゴ2 | 私はゴド夏。 |
ゴ3 | 私はゴド秋。 |
ゴ4 | 私はゴド冬。 |
ゴ1 | それでそれで・・・なんかないか四つ一組。 |
ゴ2 | 四国。 |
ゴ3 | やめとこ。三つまでしかわからない。 |
ゴ4 | 土佐県?。 |
ゴ1 | わかった。トン。 |
ゴ2 | ナン |
ゴ3 | シャア |
ゴ4 | ペー、ハク(戻る) |
ゴ3 | ハツ |
ゴ2 | チュン |
ゴ1 | (困って)・・・チッソ |
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| チッソ(幕)、降りてくる |
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5人 | おおっ、(ゴ2〜4、ウラ、エス) |
ゴ1 | さらに、(幕を裏返して)ウラドラは、スーワン(幕を下ろす) |
ゴ2 | やった、リーチ、一発、ツモ、イーペーコー、タンヤオ、ドラドラ三色、ハネマンだ。(てきとーに) |
ゴ3 | おおっ、 |
4人 | わーい(ゴ1〜4)、大金持ち〜い |
ゴ1 | おっと、この財宝は、全部いただいたぜ |
ウラ | 誰だ。 |
ゴ1 | 怪盗、ルパン3世 |
ゴ3 | しゃきーん、同じく、五右衛門 |
ゴ4 | ずきゅーん、俺が次元だ |
ゴ2 | えっ、じゃあ俺は、ゼニ |
ゴ1 | ふーじこちゃーん |
ゴ2 | あっ、なあにルパン、ぼよよよよーん |
ゴ1 | 失敗した。めっちゃブス。 |
ゴ3 | 違うのにしよ。 |
ゴ4 | 四つ一組四つ一組。(と、ハリセンを四つ、持ってきて配る) |
ゴ1 | 北方領土 |
ゴ2 | くなしり、えがしら(いきなり叩かれる) |
ゴ3 | 違う違う。 |
ゴ4 | 世界四大珍味 |
ゴ1 | キャビア |
ゴ2 | フォアグラ |
ゴ3 | トリュフ |
ゴ4 | 野沢菜(叩かれる) |
ゴ1 | 新聞4大紙 朝日 |
ゴ2 | 読売 |
ゴ3 | 毎日 |
ゴ4 | トースポ(叩かれる) |
ゴ1 | 日本列島、本州 |
ゴ2 | 四国 |
ゴ3 | 九州 |
ゴ4 | 佐渡島(叩かれる) |
ゴ4 | なんでよ、佐渡島は日本だろ。お前ら差別してんな。 |
ゴ1 | じゃんけん。グー |
ゴ2 | チョキ |
ゴ3 | パー |
ゴ4 | 田舎のチョキ |
ゴ3 | セーフ。田舎のチョキはあるある。 |
ゴ4 | じゃあ、今度オレから。みよこの宝物。えっと、みよ子の使ったハンカチ。 |
ゴ1 | どっから持ってきたんだよ。 |
ゴ4 | 昨日の打ち上げでちょろまかしたの。 |
ゴ2 | みよ子の使ったハブラシ(と、口に入れる)。 |
ゴ1 | なんでそんなの持ってんだよ。 |
ゴ2 | さっき楽屋にあったの。 |
ゴ3 | みよ子の使った・・・みんなひかないでね。みよ子の使った、タンポン。 |
ゴ1 | 出すな。それは出すな。じゃあ、俺は、みよ子の使ったリップクリーム。 |
ゴ2 | あああ、それいいな。ちょっと貸して。 |
ゴ1 | だめー(塗る)。 |
ゴ2 | 貸せよ。 |
ゴ1 | だめだめー。 |
ウラ | あの。 |
ゴ4 | え、なに、参加したいの? |
ウラ | じゃなくて、まだ続きますか。 |
エス | いいんですけど。 |
ゴ1 | 我々は、地球を守るために、組織されたのだ。 |
ゴ2 | 美しく青き地球と、 |
ゴ3 | そして、みよ子を。 |
ゴ4 | 愛する地球と、愛するみよ子を。 |
ウラ | みよ子は、どこにいる。 |
エス | みよ子は、どこに。 |
ゴ1 | みよ子、ちょっと見ない間に、ずいぶん可愛いくなったな。もう17か。カレシとかできたのか。やめろよおい、お兄ちゃんなんて呼ぶなよ。いとこ同士ってのは、結婚だってできるんだぞ。学校でいじめられてないだろな。みよ子は、人見知りするからなあ。でも、高校生なんかガキだし、バカばっかだから相手にしない方がいいぞ。今度、デートしようよ。プリクラしよう。やるんだよな高校生は。いいよ、俺の趣味じゃないけど、やってやるよ。一緒に並んで、撮ってやるよ。(去る) |
ゴ2 | みよ子、手紙読んだか。けっこう、頑張って書いたんだぞ。漢字苦手なんだけど、頑張ったんだ。誤字とかなかったか。陳腐ってのは、人の名前じゃないんだぞ、知ってたか。陳さんって人がいるってわけじゃないんだ。漢字は難しいよな。ワープロ?、キーボード難しいだろ。絶対にあれ、ない文字があるだろ。Pって、ないよな。ある?、わかったよ、今度捜しとくよ。だけど、ワープロとかパソコンとかって、身体に有害な電波出てんだろ。お前、あんまりやっちゃだめだぞ。パソコン通信とか、やってんだろ。身体壊すぞ。外で遊ぼうよ。ディズニーランド行こう。連れてってやるよ。スプラッシュマウンテン乗ろうよ。な、すみからすみまで案内してやるよ。女子高生は、やっぱディズニーランドのことは、きっちり押さえておかないとなんないからな。(去る) |
ゴ3 | みよ子、元気ないな。なんか、あったのか。なんでも相談しろよ。聞いてやるよ。どうせ、ろくでもないことで悩んでんだろ。高校生のころって、なんでも悩みにしちまうんだよな。恋の悩みか?。わかった、やせたいんだろ。そりゃあ確かにお前はやせてるとは言えない。口が裂けてもいえない。いくら人質が解放されないからって、それだけはできない。けど、気にするな。いつかはやせる。メシを食うな。水を飲むな。な。そうすりゃ、きっとやせるから。悩まなくていいよ。そうだ、もしやせたら、俺とデートしよう。デートしてやるよ。俺はほら、かっこいいだろ。並んで歩くと、けっこう楽しいぞ。会話は苦手なんだけど、黙って歩くのはできるから。な、もうちょっとやせたらな。(去る) |
ゴ4 | みよ子、聞いたよ。家を出たいんだって。お前の父親は無神経だからなあ。あいつは甘やかされて育ったから、よくわかんないんだよ。でも、何も出ることはないよ。まあ、反対はしないけどな。若いうちは、いろいろ経験するもんだ。お前も、甘やかされているから、この際、いろいろやってみるのもいいかもしれない。そのかわり、私には教えておけよ。住所だよ。時々見に行ってやるから。そうだ、引っ越し祝いを買ってやるよ。何が欲しい。たまごっちか。立花トーイの商品はいらないか。最近のは、使えないかもな。センス悪いから。なんでも言っていいんだよ。どうだい、何が欲しい。(去ろうとする) |
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沈黙 | |
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ウラ | それで・・・。 |
ゴ4 | えっ、 |
ウラ | 行こうか。 |
エス | だめだよ。 |
ウラ | そうか。 |
エス | そうさ。 |
ウラ | 待つのか。 |
エス | 待つんだ。 |
ゴ4 | 待つのか。 |
エス | そうだ。 |
ゴ4 | 誰を。 |
エス | ゴドーさんを。 |
ゴ4 | そうか。 |
エス | そうさ。 |
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| 暗転 |
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| 座っているみよ子と、見下ろしている女(桜沢)がいる。 |
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桜沢 | でもね、テクノロジーが成し得ることには限界があるのよ。いくらネットワークが発展したからって、そう簡単に新しいコミュニケーションの形が産まれるもんじゃないわ。 |
みよ | それはそう。時間がかかると思う。 |
桜沢 | 立花さんの考えは、決して間違っていないとは思うし、希望は失ってはいけないけど、あまりに現実認識が悲観的すぎるし、ある意味では、現実逃避とも言えるものだと思うわ。 |
みよ | そうじゃないと思うけど。 |
桜沢 | だって、逃げてるでしょ。 |
みよ | そうかなあ。 |
桜沢 | まあ、そういう認識がないんなら、仕方ないけどさ。なんか、聞いてて、ちょっと違うんじゃないかなって思ったもんだから。 |
みよ | ・・・。 |
桜沢 | おかしいでしょ。 |
みよ | そうかな。 |
桜沢 | 絶対に変よ。ずれてるわよ。 |
みよ | えっと。 |
桜沢 | えっとじゃなくて。 |
みよ | はい。 |
桜沢 | あのね、社会ってのはね、いろいろあって、大変なのよ。そこから逃げちゃだめ。全身でぶつかってこそ、新しい出合いが産まれるのよ。 |
みよ | めんどくさいの。 |
桜沢 | 何言ってんの。あなただって、カレシ欲しいでしょ。 |
みよ | もう、いいの。 |
桜沢 | うそ、おっしゃい。そうでなきゃ、異常よ。あたしだってさ、欲しいんだから。普通の人間は、欲しいものなのよ。普通はね。 |
みよ | そうかなあ。 |
桜沢 | そうでしょ。 |
みよ | あたし、普通だし、でも、なんか、めんどくさいなあ。 |
桜沢 | 欲しくないの。 |
みよ | まあ、欲しいですけど。 |
桜沢 | ほら、ごらんなさい。 |
みよ | でも、なんか、大変だなあ。 |
桜沢 | 大変なのよ、カレシを作るってことは。エッチすりゃいいってもんじゃないんだから。カレシなんだから。 |
みよ | 力、入ってますね。 |
桜沢 | そんなことないわよ。 |
みよ | はい。 |
桜沢 | あたしは、ほら、余裕あるもの。そんな、男に不自由してないし。 |
みよ | ええ。 |
桜沢 | 女はね、25過ぎたら、食っちゃっていいのよ。 |
みよ | どういう意味ですか。 |
桜沢 | あなた、自分が若いと思って、バカにしてない? |
みよ | いいえぇ。 |
桜沢 | この身体、維持すんのだって、大変なんだからね。お金かかってるし、手間暇かかってるし、スケジュール管理が大変なんだから。 |
みよ | 大変ですね。 |
桜沢 | そんなに苦労しても、誰でもいいってわけにはいかないでしょ。そりゃ、多少の妥協はするわよ。かと言って、それなりってのはあるから。 |
みよ | キムタクぐらいですか。 |
桜沢 | (笑って)なーに言ってんのよ。そんな、業界人のカケヒでミーノとかシーメとか、レーコがばりばりよ。 |
みよ | ええまあ・・・。 |
桜沢 | あなたも頑張って、もっときれいにならないとね。あたしみたいに。 |
みよ | 別にいいですよお。 |
桜沢 | あきらめちゃ、だめ。へちま、貸してあげようか。 |
みよ | いいですよ。 |
桜沢 | もう・・・だんだんいらついて来たわ。あなた、友達少ないでしょ。 |
みよ | 多いんですか? |
桜沢 | えっ・・・。少ないわよ。そんな、多けりゃいいってもんじゃないし。 |
みよ | 少なくていいです。 |
桜沢 | いるの? |
みよ | いますよ。 |
桜沢 | うそ。 |
みよ | やだなあ、いますよ。 |
桜沢 | いるの・・・。でも、時々合ったりするとか、学校とか職場とかの知人とかじゃ、だめなのよ。 |
みよ | まあ、それほどでもないですけど。 |
桜沢 | ほら、ごらんなさい。 |
みよ | でも |
桜沢 | どこで、知り合ったの。 |
みよ | えっ、 |
桜沢 | わかった。NOVAでしょ。多いのよね。池袋コミカレ?、ドゥスポーツプラザ、ねるとん、立花テレビ、マクドナルド、若い根っこの会? |
みよ | ちょっと違うけど、まあ、そんなとこです。 |
桜沢 | そうなの。別にいいけどさ。 |
みよ | はい。 |
桜沢 | 今度、紹介してよ。 |
みよ | いいですよ。 |
桜沢 | もしかして、男性もいる? |
みよ | いますよ。 |
桜沢 | そう・・・。別に、どうでもいいんだけどさ。 |
みよ | はい。 |
桜沢 | 大変よねえ。 |
みよ | はい。 |
桜沢 | 頑張ってないのに。 |
みよ | 別に、関係ないんじゃないですか。 |
桜沢 | まあね。 |
みよ | 友達ったって、それ以上でも、それ以下でもないんですから。 |
桜沢 | そうなの。 |
みよ | その方が、気が楽ですよ。 |
桜沢 | まあ、そうかもね。 |
みよ | そりゃ確かに、ハードな関係を望む人もいますけど、 |
桜沢 | そうなの。 |
みよ | 好みですから。 |
桜沢 | そうよね。 |
みよ | そうですよ。 |
桜沢 | 今度紹介してよね。 |
みよ | ええ。 |
桜沢 | きっとよ。 |
みよ | きっと。 |
桜沢 | 待ってるから。 |
みよ | いいですよ。 |
桜沢 | ケータイの番号、教えとく。 |
みよ | はい。 |
桜沢 | 電話してよね。 |
みよ | はい。 |
桜沢 | 待ってるから。 |
みよ | はい。 |
桜沢 | 待ってる。 |
みよ | 待ってるんですね。 |
桜沢 | うん。待ってる。 |
| |
| 暗転。社長・部長・研究員・モニター、登場。 |
| |
研究 | もう一度ご説明しましょう。未来型コミュニケーションゲーム「立花テレビ」です。 |
社長 | もういいよ。わかったよ。要するにメディアミックスだろ。しかし、そんなコストで実現可能なのか。 |
研究 | 可能なのか?、疑問文ですね。お答えしましょう。可能です。いえ、もう始まってます。反響はものすごいです。 |
モニ | 驚くべき反応です。あっと言うまに広まりました。まずメディアが飛びつきました。おかげで、CMなしで、認知度が急上昇です。会員も、すでに2万5千です。現在のパーフェクTVの会員数は25万ですから、その1割に達するものです。これは、はっきり言って、驚異的です。 |
研究 | その他、ホームページへのアクセスも1日10万ヒットを数えます。これは、いかに人々の関心を集めているかという現れです。パーフェクTV側も、立花テレビこそがキラーアプリケーションであると認識してくれまして、資本提携の動きも見える程です。 |
部長 | しかし、この後のシステムは大丈夫なのか。見切り発車だったんだろ。 |
研究 | それはまあ・・・。概要はつかめてますんで、大枠のところでは、間違いないと思います。 |
社長 | なんだよ「思います」って。大丈夫か。 |
モニ | なにぶん、みよ子が、いないんで。 |
研究 | 全力で捜してます。しかし・・・。 |
社長 | なんでシステムのコンセプトを提案したものが、現場にいないんだ。それで、よくプロジェクトをスタートできたな。それって問題だろ。 |
研究 | なんとかなります。コミュニケーションを成立させればいいんです。双方向のインタラクティブをネットワークでバーチャルアポイントメントです。 |
モニ | サイバースペースにおけるワントゥワンのリアルタイムレスポンスです。ですよね。 |
社長 | 意味、わかって言ってんのか。 |
部長 | 大丈夫か。 |
研究 | よくわかりません。 |
モニ | カタカナ、苦手なんです。 |
社長 | 漢字も苦手だろ。 |
モニ | はい。 |
社長 | いいのか、こんなんで。 |
部長 | ですから、お嬢さんを捜してますから。 |
社長 | どうしていないんだ。どこ、ほっつき歩いてんだ。 |
研究 | 責任は、(社長に)あなたにあります。 |
社長 | 私じゃないだろ、(部長に)こっちのせいだろ。 |
部長 | うっそ。絶対違うね。(モニターに)ちゃんとやっとけよな。 |
モニ | なんでそうなんだよ。(みんなを見て、それから、遠くに)おーい。 |
| |
| じいさん(陽介)と、ばあさん(史朗)がでてくる。 |
| |
モニ | (彼氏に)あんたがボケてるから悪いんだろ。 |
ばあ | いきなりなんだよ。(じいさんに)お前が悪いんだろ。 |
じい | 関係ねーよ。(研究員に)てめーがやったんだろ。 |
研究 | なにいってんだよ。(社長に)反省しろよな。 |
社長 | ふざけんなよ。(部長に)てめーがダメなんだよ。 |
部長 | 人のせいにすんなよ。(モニターに)わかってんのかよ。 |
モニ | 俺じゃねーよ。(彼氏に)殴られてーのかよ。 |
ばあ | ふざけろっつーの。(じいさんに)おめーがよお、さいてーなんだよ。 |
じい | うっ。(研究員に言おうとした時)・・・、 |
研究 | やめよう。すげえやな気分。これやめよう。責任転嫁しりとり。 |
社長 | やめやめ。なんか、ひどいな。 |
モニ | 暗くなるな。しかし、これのどこがしりとりなんだ。 |
部長 | ただのなすりつけリレーだろ。 |
じい | ちょっと待て。俺のこの、いやーな気分はどうすればいいんだ。どうすれば・・・。(ふと、客席に気づき、近場の女性に向かって)てめー、首吊って死にやがれ、この、ブス。 |
| |
| みんなで止める。じじ・ばばを残して、退場。 |
| |
じい | まったくよお、気分悪いぜ。 |
ばあ | みんな、気が立ってるから。 |
じい | みよ子は、まだ見つからないのか。 |
ばあ | どこ行ったんだか。 |
| |
| ゆう子、現れて |
| |
ゆう | みよちゃんは、元気よ。 |
じい | 知ってるのか。 |
ゆう | うん。 |
ばあ | どこにいるんだ。 |
ゆう | それは、言えないの。 |
じい | そうか。まあ、いい。元気なら。 |
ばあ | でも、みんな心配してるのに。 |
ゆう | 知ってる。 |
じい | じゃあ、仕方ないな。 |
ばあ | 大変なのに。 |
じい | まあいい。あの子には、あの子の考えがある。 |
ばあ | そりゃあそうだけど。 |
ゆう | ごめんなさい。 |
じい | しかし、そのことを、どうして父親に言わないんだ。言ってないんだろ。 |
ゆう | だって・・・。 |
じい | 親子のコミュニケーションが、とれてないなあ。 |
ばあ | そんなの、普通だけど。 |
ゆう | うん。言っても通じないし。 |
じい | そうなのか。 |
ゆう | だって、すぐ怒るし。 |
ばあ | あいつら、プレステすらやらないから。 |
じい | 64は買ったんだろ。買っただけか。 |
ばあ | みたいよ。今度、持ってきちゃお。 |
ゆう | パソコンも、置いてあるだけよ。 |
じい | なんで?。通信、やってないのか。 |
ばあ | ホームページ、あるんだろ。 |
じい | そうだそうだ。 |
ゆう | 自分達じゃ、見れないの。 |
じい | なんだそりゃ。 |
ばあ | そうなのか。 |
ゆう | 今、勉強してるみたい。 |
じい | しかし、それじゃまずいだろ。 |
ばあ | すると、全部、みよ子のアイディアなのか。 |
ゆう | うん。 |
じい | そうか。 |
ばあ | なんとか、みよ子を連れてこれないのか。 |
ゆう | 聞いてみる。 |
じい | 聞いてみな。 |
ばあ | とりあえず、呼んできて。 |
ゆう | わかった。 |
| |
| ゆう子、去る。 |
| |
じい | あの子は、何をしてるんだ。 |
ばあ | 待っているんだろ。 |
じい | 何を待っているんだ。 |
ばあ | 誰かを待っているんだ。 |
じい | いつまで。 |
ばあ | さあ。 |
じい | 来るのか。 |
ばあ | さあ。 |
じい | 来ないのか。 |
ばあ | さあ。 |
| |
| 沈黙 |
| |
じい | 立花トーイは、どうなってるんだ。 |
ばあ | みんな、待っているんだろ。 |
じい | 何を待っているんだ。 |
ばあ | あの子を待っている。 |
じい | あの子? |
ばあ | そう。 |
じい | 来るのか。 |
ばあ | 来るだろう。 |
じい | そうか。 |
ばあ | そうさ。 |
じい | きっと。 |
ばあ | 来るだろうとも。 |
じい | そして。 |
ばあ | えっ、 |
じい | それからどうなる。 |
ばあ | それから、 |
じい | それから、 |
ばあ | 新しい製品を作る。 |
じい | また。 |
ばあ | また。 |
じい | 新しい製品ができるまで |
ばあ | 新しい製品ができるまで |
じい | できるのか。 |
ばあ | できるとも。 |
じい | きっと。 |
ばあ | きっと。 |
じい | その日まで |
ばあ | その日が来るまで |
じい | また。 |
ばあ | また。 |
二人 | その日は、来るのか。 |
| |
| 暗転。 |
| |
| ゆう子、登場して。 |
| |
ゆう | みよちゃん、私は最近思っています。姉として、みよちゃんに何もできないかもしれないと。ただ、みよちゃんには頑張ってもらいたいのです。私も、現実から逃げない。現実を見つよう。そのくだらなさを見つめようと思います。そして、現実に埋没することなく、生きます。かあさんが理解できないことだって、ある。かあさんを悲しませることは、とても悲しいことだけど、私にはたくさんの時間が残されているのだから、自分のやりたいようにやるしかないと思います。さよなら、かあさん。(去る) |
| |
| 少年、登場して。 |
| |
少年 | 竜一です。最近、全然学校に来ないけど、どうしてますか。みんな、心配してるんだよ。みよ子さんは、すぐに深刻に考えすぎると思います。まあ、考えないやつは、バカですけど。たくさんの人が言っていることが、いつも正しいとは限らないですよね。テレビが語りかけることを信じてはいけない。歌詞の中に真実は見えない。御芝居の絵空事に騙されてはいけない。真理が相対的なものである限り、私にとっての真実は、私を理解している人の中にある。その人を信じます。私は、ほんの少しの愛する人々を、信じます。きっかけがあれば、出会える。メディアはいらない。(去る) |
| |
| ゴドー1とゴドー2がいる。 |
| |
二人 | あの・・・。 |
ゴ1 | えっ。 |
ゴ2 | えっ。 |
ゴ1 | どうぞ。 |
ゴ2 | どうぞ。 |
ゴ1 | そっちから。 |
ゴ2 | いえ、そちらから。 |
ゴ1 | いえ、どうぞ。 |
ゴ2 | いえ、どうぞ。 |
二人 | いえっ・・・。 |
| (間) |
ゴ1 | 元気でしたか。 |
ゴ2 | はい。あなたは。 |
ゴ1 | 元気でしたよ。 |
ゴ2 | そりゃ、よかった。 |
ゴ1 | あなたは。 |
ゴ2 | もちろん、元気でしたよ。 |
ゴ1 | そりゃ、よかった。 |
| (間) |
ゴ1 | 最近は。 |
ゴ2 | えっ。 |
ゴ1 | いえ、最近は・・・。 |
ゴ2 | やりにくいですな。 |
ゴ1 | やっぱり。 |
ゴ2 | 何考えてるのか。 |
ゴ1 | 何感じてるのか。 |
ゴ2 | さっぱり分らない。 |
ゴ1 | だって。 |
ゴ2 | だって? |
ゴ1 | 自分の事さえ分らない。 |
ゴ2 | そんな・・・。 |
ゴ1 | そうでしょ。 |
ゴ2 | ・・・そうですね。 |
| (間) |
ゴ1 | 何か話していいんですよ。 |
ゴ2 | 何か話していいんですね。 |
ゴ1 | 何から話しましょうか。 |
ゴ2 | 何から話しましょうね。 |
ゴ1 | 楽しい話はどうでしょうか。 |
ゴ2 | 楽しい話はどうでしょうね。 |
ゴ1 | 疲れない話がいいですね。 |
ゴ2 | 疲れない話はいいですね。 |
ゴ1 | 重たい話は嫌ですね。 |
ゴ2 | 重たい話は嫌ですか。 |
ゴ1 | つきあいだけの話は嫌ですか。 |
ゴ2 | つきあいだけの話は嫌ですね。 |
| (間) |
ゴ2 | どこへ行くんでしょう。 |
ゴ1 | どこまで行くんでしょう。 |
ゴ2 | 見えますか。 |
ゴ1 | 見たいと思いますか。 |
ゴ2 | もう、ないのかもしれませんねえ。 |
ゴ1 | もう、満足しないのかもしれませんねえ。 |
ゴ2 | このままずっと。 |
ゴ1 | このままずっと、 |
ゴ2 | 見えないまま、 |
ゴ1 | 疲れたまま、 |
ゴ2 | 追いかけたまま、 |
ゴ1 | 緊張したまま、 |
ゴ2 | 流れていくんでしょうか。 |
ゴ1 | 悲しい笑顔をつれて? |
ゴ2 | いやいや、どうして。 |
ゴ1 | いいや、どうして。 |
ゴ2 | まだまだ、あては、あるんです。 |
ゴ1 | ええ、そうですとも。 |
ゴ2 | 最近は。 |
ゴ1 | とてもやりやすいんですよ。 |
ゴ2 | かたくなな姿勢の転び方と言ったら。 |
ゴ1 | その変わり方の見事さと言ったら。 |
ゴ2 | 本当は淋しいんでしょうねえ。 |
ゴ1 | 本当は待ってるんでしょうねえ。 |
ゴ2 | そうですとも。 |
ゴ1 | そうでなくちゃあ。 |
ゴ2 | みんな隠してますけどね。 |
ゴ1 | みんな恥ずかしいと思ってますけどね。 |
ゴ2 | 何がおかしいと言って、 |
ゴ1 | 底の見えてる強がりほど、 |
ゴ2 | おかしいものは、ないですよ。 |
ゴ1 | ほんとうは待ってる。 |
ゴ2 | ほんとうは淋しい。 |
ゴ1 | ほんとうは求めている。 |
ゴ2 | そうですとも。 |
ゴ1 | そうでなくちゃあ。 |
ゴ2 | (心が高ぶり)どう調子は。 |
ゴ1 | おチョウシね。 |
ゴ2 | 熱カンで。 |
ゴ1 | 一本。 |
ゴ2 | 日本。 |
ゴ1 | どうなるんだろうね。 |
ゴ2 | 冷えたままで。 |
ゴ1 | 時間かかるでしょう。 |
ゴ2 | あっためるにはね。 |
ゴ1 | あつすぎる?。 |
ゴ2 | とんでもない。 |
ゴ1 | 飛べないの? |
ゴ2 | 飛ぶためには。 |
ゴ1 | あと五分。 |
ゴ2 | 五分五分か。 |
ゴ1 | うまくいくかね。 |
ゴ2 | うまいものね。 |
ゴ1 | パッションある? |
ゴ2 | ファッションならね。 |
ゴ1 | 風邪ひいたの? |
ゴ2 | 冷えてきたからね。 |
ゴ1 | 燃えそうもないし。 |
ゴ2 | 明日ね。 |
ゴ1 | 燃えないゴミの日。 |
ゴ2 | ちゃんとしばった?。 |
ゴ1 | 相手はしぼったはずだよ。 |
ゴ2 | しぼり間違い? |
ゴ1 | まさか。 |
ゴ2 | 見ようみまねで、 |
ゴ1 | 身寄りもなく、 |
ゴ2 | 見ようともせず、 |
ゴ1 | 身よかれと、 |
ゴ2 | 身よきときに、 |
ゴ1 | 身よくして、 |
ゴ2 | 身よければ、 |
ゴ1 | みよ子と共に。 |
ゴ2 | えっ! |
| (間) |
ゴ2 | 誰を待ってるんだい。 |
ゴ1 | お前は。 |
ゴ2 | 決まってるだろう。 |
ゴ1 | それじゃあ、 |
ゴ2 | 奴らがいる限り、何度でも来るさ。 |
ゴ1 | 奴ら? |
ゴ2 | いや、その・・・。 |
ゴ1 | あの子? |
ゴ2 | 誰だい。 |
ゴ1 | いや、その・・・。 |
ゴ2 | 何度でも、 |
ゴ1 | 何度でも、 |
ゴ2 | やって来るさ。 |
ゴ1 | そして明日、首をつろう。 |
二人 | ゴドーが来ない限り。 |
| |
| 暗転 |
| 社長・部長・研究員・モニターがいる。 |
| |
社長 | まだ見つからんのか。 |
部長 | はい。全く連絡がありません。 |
社長 | ゆう子は知ってるんだろ。 |
部長 | どうでしょう。 |
社長 | まったく、どいつもこいつも。 |
部長 | まあまあ。いまのとこ、立花テレビは順調のようですので。なあ、そうだよな。 |
研究 | それが・・・。 |
部長 | どうした。 |
モニ | 少々、トラブルが。 |
社長 | なんだよ。なにがあったんだ。 |
研究 | マスコミが偏向報道を。 |
社長 | またか。しかし、肩とか腰とか、健康を害するってわけでもないだろ。 |
モニ | 頭の悪くなる電波も、出してません。 |
部長 | なら、いったい・・・。 |
研究 | エッチ系の、スケベメディアとの報道があり・・・ |
社長 | なんだそりゃ。 |
部長 | ひどいな。 |
研究 | ゲームがコンセプトですから、大人の遊びメディアだと。 |
社長 | おいおい、かんべんしろよ。立花トーイは健全娯楽提供企業だぞ。 |
部長 | それで、キャンセルが相次いだというのか。資金繰りは大丈夫か。 |
研究 | いえ。その反対です。入会者が爆発してます。 |
社長 | どういう意味だ。 |
研究 | ですから、スケベゲームとの報道のせいで、あっと言うまに会員が10万を越えまして、営業開始6カ月で黒字化が決定的です。 |
社長 | なら・・・いいんじゃないの。 |
研究 | いえ、とんでもありません。その・・・。 |
モニ | 会員が男性ばかりになりました。女性もいることはいるのですが、かなり質が・・・。 |
研究 | それで、男性会員の不満が激しくなってまして・・・でも、退会者は出てないんですけど。 |
社長 | どうなるんだ。 |
研究 | 一応、メディア関係を押さえました。 |
モニ | 遅いんですけど。 |
部長 | なんとか、イメージを変えることは、できないのか。 |
研究 | 無理でしょうねえ。もともと、紙一重ですから、コミュニケーションとエッチは。 |
社長 | そうなのか。 |
研究 | みたいです。 |
社長 | で、実際、どうなんだ。 |
研究 | はい? |
社長 | だから、実際には、入会すると、やれるのか。 |
研究 | なにを。 |
社長 | いや、いい。 |
研究 | とにかく、現在はまだ、それほど表面化してませんが |
社長 | だから、私は反対だったんだ。 |
研究 | はい? |
社長 | 立花トーイ、創立45周年に、泥を塗ることになる。 |
研究 | しかし |
社長 | 破綻するのは時間の問題だろ。 |
研究 | なんとかします。 |
モニ | なんとか、なると。 |
社長 | どうするんだ。 |
研究 | 現在、考えてます。 |
社長 | 君らで、何かいいアイディアが浮かぶのか。(部長に)どう思う。 |
部長 | 難しいでしょうねえ。 |
社長 | 無理なんだよ。 |
研究 | しかし、なんとかしないと。 |
モニ | こんな手はどうでしょう。 |
社長 | 却下。 |
モニ | やっぱり。 |
社長 | 惜しいけどな。 |
モニ | まだ何も言ってないのに。 |
研究 | じゃあ、私がですね、 |
部長 | お前に何ができる。 |
研究 | 六本木のアマンド前で逆立ちしたりしません。例えば、髪の毛を |
社長 | ボツ。 |
研究 | 残念です。 |
社長 | 部長、君は何かないのかね。 |
部長 | 私におまかせ下さい。すごいこと考えました。「ハンコ倶楽部」を改良しまして。 |
社長 | ぶーーー。お前ら、親子だな。 |
部長 | 最後まで、言わせて下さい。「はんこっち」をですね、 |
社長 | ぶーーーー。ぶっぶっぶーーー。 |
部長 | じゃあいいですよ。社長はなんかあるんですか。 |
社長 | うん、それが、先月からずっと考えてた新商品なんだが、聞いてくれるかね。 |
部長 | なんですか。 |
社長 | うん、キミら、たまごっちって知ってるだろ。それでだ、きっと物足りなくなるんだよな、ああゆうバーチャルペットは。結局、本物に行き着くんだ。そこで考えたのが、フェレットをバイオテクノロジーで品種改良して、超小型化してだな。フェレットってのは、最近大人気のペットで、イタチの小さいやつなんだが、それをさらに小さくしてマッチ箱ぐらいの小屋に入れて、持ち運びできるようにしてだな、リアルだぞ。なんせ、生きてっから。 |
部長 | しかし、死ぬでしょ。 |
社長 | 死んだら、交換需要が生まれるだろうが。バイオテクノロジーで大量生産すりゃいいんだから。どうせ、たまごっちで、ガキどもはリアルとバーチャルの境界線を越えてんだから、リアルな生き物をバーチャル気分で飼うことだってできる。たまごっちは、バーチャルなペットをリアルにめんどう見てるんだから。逆もまた真なり。要するに、シーモンキーのたまごっち版だ。名づけて、「いたちっち」。 |
部長 | 長い間、お世話になりました。辞めさせていただきます。 |
社長 | なんでよ竜ちゃん。実の弟じゃないか。意見を聞かせてよ。竜ちゃんと、それから二人の息子さん、その冷たい視線は、なに? |
研究 | 立花テレビは、どうしますか。 |
社長 | そっちは、まかすよ。みよ子を捜してくるのが先だろ。 |
モニ | しかし、見つからないんです。 |
社長 | 見つけろよ。私は、いたちっちの企画をまとめるから。(去る) |
部長 | しゃちょー。 |
研究 | とうさん。 |
部長 | なんだよ。 |
研究 | もう引退しな。 |
部長 | ばかを言うな。 |
モニ | 無理なんだよ。ネットワークのこととか、全然知らないんだから。 |
部長 | お前らだって知らないだろが。 |
モニ | でもとうさん達は、手をつなごうとしない。 |
部長 | ばか。そんな恥ずかしいこと、できるか。俺らはな、独立してやってきたんだ。 |
モニ | だからダメなんだよ。 |
部長 | なんで。 |
モニ | 何も理解できないんだよ。 |
| |
| 沈黙 |
| |
部長 | うるさい。いたちっち、作るぞ。今度こそ成功する。そりゃあだめかもしれない。でも、そしたらまた新しいのを考える。そしていつか成功する。必ずその日はやってくる。いまはいたちっちだ。お前らも、ちゃんと考えておけよ。 |
| |
| 去る。残される二人。沈黙。 |
| |
モニ | いたちっちか。 |
研究 | 猿なら・・・もん |
モニ | ぼーくーは |
研究 | ないちっち |
モニ | やめてー。 |
研究 | 恥ずかしい。 |
モニ | どこに行ったのかなあ。 |
研究 | 行方不明です。 |
モニ | 連絡乞う、チチ。 |
研究 | ハハ、危篤、すぐ帰れ。 |
モニ | 立花トーイで大事故。操業停止か。 |
研究 | 立花テレビ、出資金疑獄、社長逮捕。 |
モニ | 立花テレビ、会員サギ発覚。社長逮捕。 |
研究 | 立花テレビ、会社更生法適用、社長行方不明。 |
モニ | 立花テレビ、新製品で道義的責任追及。 |
研究 | 立花テレビ、バブル崩壊。夢は夢だった。 |
モニ | 立花テレビ、奇跡の復活、行方不明の社長に代わり、娘が社長就任。 |
研究 | みよ子は、いずこ。 |
モニ | みよ子は、まだか。 |
研究 | ちくしょー、待たせやがって。 |
モニ | どこいってんだよお。 |
研究 | 帰ってこいよー。 |
モニ | 前に、ゆう子が言ってたっけ。 |
研究 | なにっ? |
モニ | もう帰ってこないかもしれない。 |
研究 | 何をしてるんだよ。 |
モニ | 何もしてないよ。 |
研究 | 何かできるだろ。 |
モニ | 何もできないよ。 |
研究 | そんな。 |
モニ | ただ、待っているんだ。 |
研究 | いや、待ってるだけじゃない。 |
| |
| 暗転 |
| みよ子、登場する(下手、二重舞台) |
| |
みよ | そんな感じって、時々するんだよね。 |
| |
| 桜沢、登場(上手、前、なんかやってる) |
| |
桜沢 | それって、めずらしくない? |
| |
| 少年、登場(上手中ほど、寝る) |
| |
少年 | って言うか、絶対変だよ。 |
| |
| ゆう子、登場(下手、前、座っている) |
| |
ゆう | でも、あたしも、時々、感じるかな。 |
| |
| 高田、登場(上手二重舞台の上) |
| |
高田 | わかんねーなあ。 |
みよ | 子供にはわかんないの。 |
少年 | 言うねえ。 |
桜沢 | 変ってことないでしょ。 |
ゆう | なかなか、わかんないものよ。 |
みよ | こないだもさ、男の子に突然、声かけられたのよ。 |
桜沢 | どんなこ? |
ゆう | 多いね。 |
少年 | どーせ、ナンパ野郎だろ。 |
高田 | なんて、応えたの |
桜沢 | かっこいい子だった? |
みよ | 背が小さくて、変な子よ |
少年 | だろう。ナンパ野郎だ。 |
桜沢 | かっこ悪いの。 |
みよ | いきなりホテル、誘われた。 |
ゆう | げっ、マジ? |
高田 | おおお |
少年 | やるなあ。 |
桜沢 | それで。 |
みよ | 断ったよ。 |
桜沢 | そうなの。 |
高田 | ほんとかなあ。 |
少年 | 当然だよね。 |
ゆう | だよねえ。 |
みよ | でも、ちょっと惜しいとか思った。 |
少年 | えっ、そうなの。 |
桜沢 | それは、あるよね。好みだけど。 |
ゆう | そうなんだ。 |
みよ | ちょっとね。 |
高田 | でも、いきなりでしょ。すげえな。 |
みよ | まあ、その場のノリもあるしね。 |
桜沢 | ノリは大切よ。 |
ゆう | かっこいいな。 |
少年 | そんで、どうなったの。 |
みよ | 別に。 |
桜沢 | なに。どういうこと。 |
高田 | 断ったから、おしまいか。 |
みよ | じゃなくて、 |
ゆう | 終わってないの? |
みよ | お話しとかして、別れたの。 |
少年 | ふーん、そういうのありか。 |
桜沢 | まあ、劇的とは行かないものよね。 |
みよ | そんなもんよ。 |
ゆう | そんなもんよね。 |
高田 | 結局、そんだけなのか。 |
みよ | まあね。 |
少年 | ちぇっ。 |
桜沢 | なに、期待してんのよ。 |
みよ | そうよ、なんなのよ。 |
少年 | だってさ、せっかくの出会いと別れだから |
ゆう | 出会いったって、ナンパでしょ。 |
高田 | ナンパったって、出会いでしょうが。 |
みよ | まあね。 |
桜沢 | まあ、きっかけはいろいろだから。 |
少年 | そっから、どう発展するかは、わかんないよ。 |
ゆう | でも、怖いよ、ナンパは。 |
みよ | そうよ。なんか、わかんないもの。 |
高田 | そんな、別に、だいじょうぶだって。 |
桜沢 | あれ、知ってる?、ほら、立花テレビ。 |
少年 | なにそれ。 |
ゆう | 知ってるけど。 |
高田 | 聞いたことあるよ。 |
みよ | 知ってるよ。 |
桜沢 | ああゆうのって、どうなんだろ。 |
少年 | どういうのよ、それ。 |
高田 | けっこう、危なそうじゃん。 |
ゆう | でも、もともとは普通の番組だったんでしょ。 |
少年 | ああ、番組ね。 |
高田 | デジタル衛星の。 |
桜沢 | けっこう好きだったのよ、いくつか面白くて。 |
ゆう | あたしはね、ペットの番組にはまった。 |
高田 | ペット好きに悪い奴はいないってね。 |
少年 | いるだろ。 |
ゆう | いるけど。 |
桜沢 | そんで、どうしたの。 |
ゆう | だから、いろんな人がいて、面白かったよ。 |
高田 | へんなやつも、いたろ。 |
ゆう | いたけど、そういうのって、わかるから。 |
少年 | なになに、面白そうじゃん。 |
桜沢 | そんで、それからどうしたの。 |
ゆう | だから、パーティとかあったけど、やっぱパーソナリティの人が面白くて。 |
桜沢 | ああ、やっぱりねえ。 |
高田 | ほとんどタレントなんでしょ。 |
ゆう | でも、確か広告代理店勤務とか、いってたよ。 |
桜沢 | けっこう、危ないかもね。 |
ゆう | 面白いから、いいの。 |
桜沢 | そっか。 |
ゆう | 今も、けっこう、面白いし。 |
桜沢 | あたしも、ちょっと出てみようかな。 |
高田 | あれって、まだやってんの。 |
ゆう | やってるよ。 |
高田 | 女性って、少ないんでしょ。 |
桜沢 | みたいね。 |
ゆう | でもないけど、まあ、フォーラムによると思う。 |
少年 | どこらあたりが穴場なの。 |
ゆう | いろいろよ。だいたい、もの知らないと、ヒサンな目にあうよ。 |
桜沢 | そりゃあそうよ。趣味なんだから。 |
少年 | 趣味が必要なのか。 |
ゆう | なんか趣味、あるの。 |
桜沢 | あたしは、けっこう、翻訳に興味あるし |
少年 | それって、趣味なの。 |
高田 | 翻訳かあ。 |
少年 | パソコンの知識なら、ちょっとあるけど。 |
ゆう | それは喜ばれるよ。でも、女性は・・・。 |
少年 | そうだよなあ。 |
高田 | やっぱあれだよ、スポーツとか、映画とか。 |
少年 | そうか。映画か。寅さんは毎年見てたよ。 |
桜沢 | それって、さいてー。 |
ゆう | だっさーい。 |
少年 | そんなことないだろ。 |
高田 | 恥ずかしい。 |
少年 | あつみきよしはだな、泣けるんだから。 |
高田 | 死んだろ。 |
少年 | 俺の心の中では生きてるんだ。なあ、キヨシ。 |
ゆう | あんたはおやじか。 |
桜沢 | おやじぃぃぃ。 |
みよ | おやじぃぃぃ。 |
高田 | やっぱ、ばいしょうちえことかが理想の女性とかなの。 |
少年 | 悪いか。 |
高田 | ひえーーー。 |
みよ | がーん。 |
桜沢 | いるんだねえ。 |
ゆう | でも、立花テレビでも、ユニークなキャラクターってことで、受けるかも。 |
みよ | 映画のフォーラムじゃなくて、盆栽フォーラムとかがいいかもね。 |
少年 | なんだよ。俺はじじいか。 |
高田 | ばばあじゃないだろ。 |
少年 | ほっとけ。 |
みよ | ほっとく。 |
高田 | ほっとく。 |
桜沢 | ほっとく。 |
ゆう | ほっとく。 |
少年 | ほっとかないでー。 |
5人 | あはははは。 |
| |
| 沈黙。ゆっくり音楽がF.I. |
| |
みよ | この前ね、ひどいめにあったの。 |
桜沢 | どうしたの。 |
みよ | 堀の中で |
高田 | 堀?、どこだい、それ。 |
みよ | あっちの方 |
少年 | それで、ぶたれなかったかい。 |
みよ | ぶたれた。でも、それほどでもない。 |
ゆう | やっぱり同じ奴らだな。 |
みよ | 同じ奴?、どうかな。 |
高田 | 考えてみりゃ、前っからもう、わたしはそう思ってるんだ。わたしがいなかったら、お前はどうなっていたか。今ごろはまさに、一握りの骨くずってとこだ。間違いない。 |
| |
| 音楽、高まって、暗転 |
| 研究員とモニターがいる。 |
| |
研究 | やったー。立花トーイ、大ピンチです。 |
モニ | 素晴らしい。立花テレビで、クレーム続出。 |
研究 | 21世紀型デジタルコンテンツで大失敗。 |
モニ | 瀕死の重傷。ほとんど死んだも同然。 |
研究 | すごいぞゴーゴー、ラブリータチバナ |
モニ | エルオーブイイー、レッツゴー三匹 |
研究 | えー、このたび、わが立花トーイがプロデュースする双方向型デジタル衛星放送「立花テレビ」は、急激な解約増に伴い、チャンネル数を一つに縮小します。 |
モニ | でも、1チャンネルあれば、30分番組が1週間に336個放送できます。 |
研究 | どっちみち、参加フォーラムが減ってるんで、問題ありませーん。 |
モニ | よりディープに、よりタイトにコンタクトができると、それなりに評価は高まってます。 |
研究 | 問題は、膨らむ一方の大赤字だ。 |
モニ | 社長は雲隠れ。銀行はかんかんだ。 |
研究 | 怒られたって、ないものはないもんねーだ。 |
モニ | 勝手に騒いだマスコミが悪いんだからねーだ。 |
研究 | パソコン通信ニフティサーブが提携解消。 |
モニ | サイバースペースで新しいののしりあいを。 |
研究 | 多発するトラブル、頻発する大喧嘩。まさにリアルワールド。 |
モニ | バーチャルワールドには、すべてが揃っています。 |
研究 | インタラクティブなコミニュケーションの中で発生する陰湿ないやがらせ。 |
モニ | これこそが、バーチャルリアリティだ。 |
研究 | いざとなったら、スイッチを切る。 |
モニ | スイッチを切れば、問題回避。ノーーープロブレム。 |
研究 | 結局、ディスコミュニケーションな奴は、どこにでも出没する。 |
モニ | サイバースペースでコミュニケーションのおけいこから。 |
研究 | そして出会おう、変なやつら。 |
モニ | 変わり者とデブが多い。 |
研究 | だからこそ面白い。 |
モニ | だからこそ素敵。 |
研究 | 立花テレビは、細々と続きます。 |
モニ | 社長と部長が人身御供。 |
研究 | いけにえですので、やっちゃって下さい。 |
モニ | 本人達も、充分反省してまーす。 |
研究 | さあ、みなさんと、新しいコミュニティを。 |
モニ | さあ、私たちと、新しいネットワークを。 |
研究 | たくさんの人と手をつなぐことは |
モニ | とても悲しいことだけど、 |
二人 | みんな仲よく、手をつなごう。みんな仲よく、共に歌おう。 |
二人 | (歌う)わたし、待つわ、いつまでも待つわ。たとえあなたが振り向いてくれなくても。 |
モニ | (突然、さえぎって)もう待てねーよ。 |
研究 | なんだよ。歌おうよ。続けようよ。 |
モニ | もう、だめ。 |
研究 | そんなこと言うなよ。頑張ろうよ。 |
モニ | 我慢の限界。 |
研究 | 何言ってんだよ。 |
モニ | 嫌になった。やめる。あとのことはまかせる。 |
研究 | どういう意味だよ。 |
モニ | 次から次へと、問題が起きて、それへの対応で、めちゃくちゃじゃないか。 |
研究 | だって、それが生きるってことだろ。 |
モニ | そうかな。 |
研究 | そうだよ。仕事っつうのは、そういうことだろうが。 |
モニ | まあ、俺も忙しいのは嫌いじゃないし、仕事は楽しかった。 |
研究 | だろ。自分で選んだんだろが。 |
モニ | だからさ。 |
研究 | えっ?。 |
モニ | もっと、面白いことを見つけるよ。(去ろうとする) |
研究 | 逃げるのか。 |
モニ | なに言ってんだよ。(去る) |
| |
| 取り残される研究員、ひとり。 |
| |
研究 | 結局さ、どういうことなんだよ。 |
| |
| みよ子、舞台奥に現れて、 |
| |
みよ | 別に。 |
研究 | だって、家族だろうが。 |
みよ | 家族よ、今でも。 |
研究 | おじさんやおばさんのことは、心配じゃないのか。 |
みよ | 心配は心配だけど、でも、それほどじゃない。 |
研究 | なんだよ、冷たいなあ。 |
みよ | だって、それどころじゃないもの。 |
研究 | 好き勝手にやってるくせに。 |
みよ | けっこう大変なのよ、一人っきりだから。 |
研究 | 一人が大変なら、みんなと暮らせばいいだろ。帰ってこいよ。 |
みよ | 一人の方が、いいの。 |
研究 | 一人ってのは、大変なんだぞ。これから苦労するぞ。 |
みよ | だいじょうぶ。なんとかなるから。 |
研究 | お前にゃ無理だって。ロクに稼ぎもないくせに。世の中をなめるなよ。 |
みよ | だって。 |
研究 | 生きてくってのは、ちゃんと働いて、結婚もしてだな。 |
みよ | 別に。 |
研究 | 別にじゃないだろ。一人じゃなにもできないくせに。だれがお前なんかのめんどうを見てくれるってんだよ。友達もいない、カレシもいない、そんなガキの世話してくれるやつが、いるのか。いるのか。いねーだろ。家族しかいねーだろうが。お前は昔っから、ごちゃごちゃ難しいことを考えすぎるんだよ。行動がついてかないくせに、頭でっかちなんだよ。それはそれでいいよ。そういうとこは嫌いじゃない。お前の動きが鈍いぶん、俺が動くから。いや、その、周りの家族が動けばいいんだから。そうやって、助け合うのが家族だろ。 |
みよ | でも、順次にいちゃんは、おじさんと・・・。 |
研究 | なんだよ。そりゃ、家族だから、いろいろ問題はあるよ。それを克服していくのが家族なんだから。普通なの。俺だって、おやじとは会社でしか口きかないし、とうとう義明とも・・・。 |
みよ | 聞いたよ。大変みたいね。 |
研究 | 大変なんだよ。も、大変なんだよ。うちはもう、崩壊寸前よ。でも、俺は頑張ってるよ。俺はあきらめないもの。一人で、頑張ってるもの。 |
みよ | 無理しなくて、いいのに。 |
研究 | 無理って言うなよ。俺は仕事が好きなの。お前だって、立花テレビのこと、期待してたろ。俺は、なんとかして復活させるよ。 |
みよ | うん。 |
研究 | だけどさ、俺一人じゃ限界があるかもしれないだろ。家族なんだから、お前も手伝えよって、言ってんだよ。もう、大変なことになってんだから。 |
みよ | 会社はなんとかなると思うよ。 |
研究 | なんとかするよ。俺がやってんだから、なんとかするよ。だけど、お前が心配なんだよ。何を待っているんだか知らないけど、来ないんだから。あきらめろって。 |
みよ | 来たよ。 |
研究 | えっ。 |
みよ | もう、待ってない。 |
研究 | うそだろ。 |
みよ | 見つけたんだもの。 |
研究 | そうなのか。 |
みよ | うん。 |
研究 | どんなやつなんだ。 |
みよ | 人ってわけじゃなくて。 |
研究 | 牛か。 |
みよ | なんで牛なのよ。 |
研究 | 理由はないんだが。じゃあ、 |
みよ | みどりがめでもないよ。 |
研究 | 何言ってんだよ。そんな。 |
みよ | うまく言えないんだけど。 |
研究 | まあいい。そうか、来たのか。 |
みよ | うん。 |
研究 | じゃあ、もう待ってなくていいんだな。だったら。 |
みよ | でもね、一人でいたいの。 |
研究 | だから、無理だって。 |
みよ | 一人じゃないと、だめなの。 |
研究 | わかんないやつだなあ。お前、一人でなんか生きていけないだろが。 |
みよ | なんとかなると |
研究 | ならねえよ。甘いんだよ。ただの現実逃避なんだよ。逃げてんじゃねーよ。 |
みよ | 逃げてるわけじゃないの。逆なの。 |
研究 | 俺がさ、めんどうみてやるって。 |
みよ | 別にいいの。 |
研究 | いて欲しいんだよ。 |
みよ | ごめん。 |
研究 | ほんとに大丈夫なのか。 |
みよ | ピンチになったら助けてね。 |
研究 | そりゃ、助けてやるけど。 |
みよ | ごめんね。でも、たぶんこれしか道はないの。 |
研究 | そうなのか。 |
みよ | うん。 |
研究 | それで、未来が開けるのか。 |
みよ | これでしか、未来はないと思うの。 |
研究 | しかし、一人ぼっちなんだろ。 |
みよ | もともと、人間は一人だし。 |
研究 | 家族とかって、だめなのか。 |
みよ | うん。 |
研究 | 会社とかって、だめなのか。 |
みよ | 関係ないの。 |
研究 | だけど、会社も家族もなくなったら、俺なんか、何? |
みよ | 名前。 |
研究 | でも、こんな名前、誰も知らない。 |
みよ | 知ってるよ。 |
研究 | 誰が。 |
みよ | みんな。 |
研究 | みんなって、誰?。 |
みよ | 名前だけ、知ってる人よ。 |
研究 | そんなの、役に立つのか。 |
みよ | 役って、なに。 |
研究 | お前、タフだなあ。 |
みよ | タフじゃないとね。 |
研究 | いつ変わったんだ。 |
みよ | いろいろあったから。 |
研究 | そうなのか。 |
みよ | それが、こっち側のルールだから。 |
研究 | 大変なんだ。 |
みよ | けっこうね。 |
研究 | 無理してんのか。 |
みよ | そうでもないよ。気楽よ。 |
研究 | 気楽なのか。 |
みよ | うん。こっち側は、けっこう楽しいって。 |
研究 | こっちって、どっちだよ。 |
みよ | こっちよ。 |
研究 | あれか。家族とか会社とかじゃない方か。 |
みよ | そう。 |
研究 | 宗教か。 |
みよ | 何言ってんだか。 |
研究 | だって。 |
みよ | 集団じゃないから。 |
研究 | ああ、そうか。 |
みよ | 組織に所属もできないの。 |
研究 | それって、つらいよなあ。 |
みよ | そっちの方が、楽なの。 |
研究 | そうなのかなあ。 |
みよ | うん。 |
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| 音楽高まる。二人、動かない。が、突然、 |
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研究 | やっぱり無理だよ。な、帰ってこいよ。お前にゃ無理だって。一人でなんて生きていけないって。何が来たんだか知らないけど、そんなのまやかしだ。騙されてんだよ。世の中、甘くないぞ。大変なんだぞ。トラブルとか起きるんだからな。お前、すぐ泣くだろが。いじめられるだろが。昔っからいじめられてたろ。俺が守ってやったろ。俺が守ってやるよ。な、帰ってこいよ。(言い続ける) |
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| 徐々に音楽高まり、照明フェードアウト。暗転。 |
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| 光の中に浮かび上がるみよ子 |
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みよ | みよ子です。聞こえますか。見えますか。新しいネットワークを始めます。リアルワールドを抜け出し、私達の世界を築きます。面白いことは、すべてこっち側にあります。さあ、見えますか。 |
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| 光の中に、研究員とモニター |
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研究 | コミュニティを作ろう。 |
モニ | 新しい小さなコミュニティを作ろう。 |
研究 | 面白くない現実とは、ちょっとだけ別の世界。 |
モニ | 現実に寄り添う、小さなコミュニケーションネットワーク。 |
研究 | 希望はない。けど、真実がある。やさしくはない。けど、ぬくもりはある。 |
モニ | いいんだよ、無理しなくて。さあ、見えますか。 |
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| 人々が集まってくる。ゆっくりと、歩調を合わせ、やがて。 |
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全員 | 朝日のような夕日をつれて |
| 僕は立ち続ける |
| つなぎあうこともなく |
| 流れあうこともなく |
| きらめく恒星のように |
| 立ち続けることは苦しいから |
| 立ち続けることは楽しいから |
| 朝日のような夕日をつれて |
| ぼくはひとり |
| ひとりでは耐えられないから |
| ひとりでは何もできないから |
| ひとりであることを認めあうことは |
| たくさんの人と手をつなぐことだから |
| たくさんの人と手をつなぐことは |
| とても悲しいことだから |
| 朝日のような夕日をつれて |
| 冬空の流星のように |
| ぼくは、ひとり |
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| 全員がゆっくりと腕をひろげ、止まって、幕。 |