アニメーション市場


〜劇場からテレビ・ビデオへの展開可能、拡大期待〜


現在動向
 〜アニメ市場は1,700億円市場、年々拡大している


劇場用アニメ、テレビアニメ、ビデオアニメを合わせた総アニメ市場は現在1700億円規模と推計される。全体映画興行収入が1500億円規模に落ち込んでいるのと対照的に拡大してきている。1997年はアニメ映画「もののけ姫」のヒットや、テレビ用に製作された「エヴァンゲリオン」が劇場公開されるなど、話題も多かった。特に「もののけ姫」は映画市場の項でも述べたように、映画産業自体を変化させる可能性を示すほどのインパクトがあった。いままで、劇場用アニメの市場規模は100億円程度と見られていたが、1997年については「もののけ姫」1本で100億円を超える興行収入を上げている。1997年の合計興行収入は180億円。「もののけ姫」以外では「ドラえもん」が20億円、「エヴァ」が15億円である。

ビデオアニメの市場規模は700億円程度。表のように、年率10%を超える伸びを示している。残りの900億円程がテレビアニメ市場である。テレビ用アニメが最も大きな市場となっている。現在もテレビ番組におけるアニメ番組の数は、近年で最も多いという状況にある。「エヴァ」や「ポケモン」のヒットと同時に、キティちゃんなどのキャラクターブームが続いており、大きな展開が望めるため、数多く作られる結果を生んでいる。

映像作品は、複数のメディアに転用が可能な点が特徴である。特にアメリカではほぼ完成したルートが構築されている。まず、劇場で公開し、数ヶ月後に航空機内やホテルのペイパービューで上映、半年後にはビデオ販売が行われる。その後、CATVや衛星放送でのペイパービューチャンネルで一般公開。さらに1〜2年を経てペイテレビで契約者に対して公開。その後、一般の大規模地上波テレビに売り、さらには2〜3年もたつとCATVや衛星放送のベーシックチャンネルなどに降りてくる。その後も、ローカル放送などでの再放送向け二次利用を狙ったシンジケーション市場というものへと流れていくのである。

我国では、こういった完全なルートはできていないが、CATVやCSの発展により、道が開ける可能性はある。

さらに大きなマーケットとして、キャラクター商品というジャンルがある。すべての映像作品、すべてのアニメキャラクターがビッグビジネスを生むわけではないが、最初の企画段階からキャラクター商品化を前提として製作されることは多い。 キャラクタービジネスは、非常に大きな物であるが、ここでは算入していない。あくまで派生ビジネスである。映像そのものが、今回のコンテンツビジネスの対象である。 最近では、テレビアニメはマンガが原作となっている例が多い。まずマンガで読者の反応を見、それによって、テレビ化やテレビゲーム化が図られることが多い。テレビゲーム化のルートも、アニメ作品の展開として大きなものとなってきている。ただし、根本的にテレビアニメとゲームとでは遊び方も楽しむ要素も違うので、それぞれのヒットは別の要因となっている場合が多い。アニメの人気とゲームの完成度は別ものである。

2010年予測
 〜海外展開も可能となり、日本を代表する産業となることが期待されている


アニメ市場の未来を予測してみよう。
まず間違いなく拡大発展を遂げると言える。劇場作品として、押井守、大友克洋、宮崎駿らは世界マーケットを対象とし始めている。海外のファンも多い。
日本のアニメはクオリティが高いことも有名。ディズニーアニメにはないスピード感や映画的なカメラワークなど、世界のクリエイターに影響を与えている。
我が国のアニメがこれほど発展した理由として、「日本には手塚治虫がいたから」と言われる。マンガにおいて映画的な構図を最初に取り入れたと言われている。日本アニメも、手塚治虫が道を作ったと言われている。ローコストで作るための工夫が、様々な技術を生み、たくさんの作品を生み出す事を可能とした。
未来のアニメ市場の隆盛がもたらす影響は大きい。世界に誇れるテレビゲームソフトが我が国に数多いのも、アニメの文化=インフラがあったことが大きい。マルチメディア=ビジュアル化の時代にあって、我が国のアニメ資産は、アメリカのハリウッド資産に対抗できる唯一のものと言える。

大の大人が電車の中でマンガを読んでいる姿が非難されて久しいが、マンガが文化であり、アニメ市場もゲーム市場も作ってきたことを考えれば無視できるものではない。2010年のある日曜の午後、家族そろってCSのアニメを見る、という風景は当たり前のことになるかもしれない。
と同時に、アニメ産業の拡大はアニメクリエーターの拡大をも意味し、このことが及ぼす影響は大きい。これからのアニメはCGである。最初はローコストとは言えないが、様々な表現が可能であるCGの存在は拡大する一方。システム化すれば、人海戦術が当たり前であったアニメ下絵業界に革命を起こす。コストダウンと言えばアジアへの技術移転が一般的であったアニメ製作現場が変わることとなる。アニメ産業においてのCGクリエーターへの需要は大きく、さらには映画やテレビといった映像産業だけではなく、様々な場面でCGが求められることとなる。

アニメーション市場とデジタルネットワーク
 〜CGアニメは情報化社会の産業のコメたりえるか?


2010年になると多くの情報機器が映像を映し出すのであるから、映像作品に対するニーズも大きな物となる。俳優を使って作るのはコストがあわないことも多いだろう。そこでCGクリエーターの出番が増えることとなる。
現在、パソコン通信や企業の電子会議室で、文字によるコミュニケーションでの問題が取り上げられている。文字で意見を伝えることが難しく、争いが絶えないのである。その意味でのコミュニケーションリテラシーが求められているのであるが、2010年ともなるとビジュアルでのコミュニケーションが一般的になるとも考えられる。そこでのビジュアルコミュニケーションリテラシーは、どのようなものとなるのだろう。CGなどを使ったビジュアル化の技術は、人間のコミュニケーションの必要最低限のテクニックとなっているかもしれない。手書きイラストも、おそらくは2010年ともなれば簡単にネットワークに乗せることが可能であろうが、簡単なCG動画が予め用意されており、これを添付することで手書き文字や音声情報の意味を広げられるようになる。現在でも、キャラクター文字を使った表現がパソコン通信や電子メールで利用されているが、もっともっと複雑な表現が可能となるとも予想される。

さらに、2010年にはネットワーク型の3Dゲームが普及していると予想される。まさに3次元のバーチャルCGワールドでのコミュニケーションである。ここに存在するものはすべてCGであり、その向こうには生身の人間が存在するという世界。CGでの表現に対するニーズはますます高まっていくだろう。