■ネタバレしないストーリーその日、下北沢の居酒屋「ジャンプ亭」で、劇団木村座の制作・深田幸恵(30)は、木村座の座長・森和義(36)と、次回公演に向けた打ち合わせを行っていた。もう一人、木村座の旗揚げメンバーである斉藤容子も来るはずだったが欠席していた。容子は今回、脚本を担当している。「白熊とペンギンの話」であるらしい。
森と幸恵は、ストーリーを予想しながらキャスティングについて話し合っていた。と同時に、舞台装置のアイディアを出し、予算を検討していた。
幸恵が木村座の制作になったのは、ほんの偶然の出会いからです。郵便局に勤めていた幸恵が、下北沢にショッピングに来ていて、偶然目にした木村座のチラシに惹かれ、ふらりと当日券で見てしまったのが始まりです。その後、あちこちの小劇団の芝居を見、いつのまにか受付のこちら側に立つようになっていました。
◆ 劇団は公演に向けて準備に入っていきます。役者たちはアルバイトの合間をぬって稽古場に集まります。劇団の若手・山田郁生もまた、ドラマのオーディションを受けたりしながら、アルバイトの日々を送っていました。木村座期待の若手でした。
山田郁生は連続ドラマのオーディションに受かりました。なんとレギュラーです。その結果、次回公演には出演できなくなりました。しかし、そのことをどう座長に伝えればいいか、悩んでしまいました。とりあえず、結果を斉藤容子に伝えました。容子は座長の妻でもありますが、山田の最愛の女性でもあります。そしてまた、劇団のライバル・鶴橋とも争う女性でもありました。
◆ 劇団の制作・幸恵の同棲相手・大西浩ニもまた元・木村座劇団員でした。しかし、今は木村座から離れ、なにかあやしげな商売を行っています。そのことについて、幸恵は多くは尋ねません。ただ、常にお金に困っています。その様子に、幸恵は木村座の制作資金の一部を貸してあげようかと考えました。ほんの一部ですし、公演前に返してもらえるのなら、なんの問題もない、と考えました。
◆ いよいよ稽古が始まります。斉藤容子のホンは上がっています。座長の森は、期待の若手・山田郁生や、現役女子高生で援助交際しているというウワサの楠木照子のキャスティングを大抜擢しようと考えていました。しかし、照子は本当に援助交際しているし、山田郁生はドラマ出演のため、公演がNGだと伝えられました。悩みはつきません。今回も客演してもらう女優・高橋三月のアパートへと通う日々が始まりました。
◆ 稽古も佳境に入ったある日、幸恵はふと、劇団の預金通帳とカードがなくなっていることに気づきました。と同時に、同棲相手の浩二の行方が知れなくなりました・・・。
◆ 公演を前にして、高橋三月の体調が・・・。
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